ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

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寺社仏閣の建築

日本の建築史を勉強しようとすると、寺社仏閣の建築構造の話が最初に出てきます。
石造りの建築は長ければ1000年以上持ちますが、古い日本の住宅のような掘っ建て・木造で建て替えを行わなければ木が腐るので寿命は50年がせいぜい、だそうです。
このため江戸以前の古い住居建築はほぼ残っておらず、建築史としてはもっぱら寺社仏閣を中心としたものになるそう。

 

ちなみに「掘っ建て」とは土を掘って柱を埋める建築様式のこと。
「掘っ立て小屋」と言いますが、それ自体が小さかったり、貧相なことを示していない、
なんなら多くの神社は掘っ建て形式だ、と建築史を勉強して今更ながら初めて知りました。
ちなみに神社が掘っ建て形式でも大丈夫なのは「式年遷宮」「式年造替」により建築の寿命が決まっているからだそう。
要は腐る前に建て替えてしまう。
さらにちなみに、掘っ建てでない構造とは「基礎」「基台」のある構造です。

(旧吉川家住宅:奈良)

地面に石を埋め、その上に柱を立てることで柱が腐らないようにします。
なお、現代の方向はもう一歩進んで「ベタ基礎」と言って柱の下全体に一度コンクリートを敷いてしまいます。
家の前に、地面の時点で工法が違うわけです。

 

寿命の長い木造の建造物は日本にもたくさんありますが、これらは定期的な分解修理が行われることで長く寿命を保っています。
(基本的に釘を使っていないので、そのまま分解して再組付けができる)
ところでこの修理、バラした際に柱を新しいものに交換するのかと思いきや、ひび割れ部分だけを削って同じサイズの木を嵌める、
腐った部分で柱を切って新しい柱を継ぐなど、できるだけ古い材を活かすような工夫がされているそうです。

 

世界で一番古い建造物は法隆寺で、世界遺産にも指定されていますが、一番古い材は入ったところの門柱などで、なんと直接見て、触れます。
文字通り、見て・触れる国宝。
おいでませ、奈良。
でもってその柱、よく見るとあちこちに六角形の補修が行われていることが分かります。


法隆寺には見どころがたくさんありますが、この柱一本をじっくり見るだけでも価値があります。
(実際この柱をずっと見ていて娘に呆れられた)
この形が六角形なのは木が膨張してうまく噛みあうとか理由があるらしいんですが、西本願寺では葉の形に継ぎを入れるとか、職人さんの遊び心が見られる補修もありました。
こちらも立ち寄る機会があれば探してみるのをお勧めします。
西本願寺は境内の歩く部分だったので、おそらく大規模補修があれば交換される部材だと思われ、期間限定だからこその遊びということでしょう。

 

そうして得た知識を基に、自分で寺社建築を3DCGで作ってみたのがこれ。
■重文・醍醐寺如意輪堂

pen-and-dice.booth.pm


「懸造(かけづくり)」という、崖に張り出した建築様式で、清水寺などが有名です。
張り出した軒を支えるための、崖の構造物が特徴。
寺社建築のポイントは軒先の「組物(くみもの)」で、見てもらえば「ああ、あれか」となると思います。
これは和様二手先という方式。

元々は装飾ではなく、釘を使わない古い工法の中で、雨を避けるため軒をできるだけ張り出そうと工夫することで発達した工法。
後年になるほど装飾の度合いも強くなります。

 

CGは「CGを作りたい」ではなく、「建築を分析・研究する」がメインの目的なので、CGでは外壁ではなく最初に柱を立てて軸組を作っています。

(内部のワイヤーフレーム表示)

結果として中も当然作りこまれていて、実際の写真とCGデータがどれだけ同じかを比較してもらえれば幸いです。
元データはこちらから確認可能。(要会員登録:ログイン)

dl.ndl.go.jp


自分で言うのもなんですが、扉の桟の一本まで同じ数で作っているので、かなり同じ感じで作れていると思います。
著作権の関係が良くわからないので、元サイトで確認できます。

 

ちなみにこのCG、お気に入り数を見てもらえば分かるのですが、残念ながら人気はありません。
崖の上にあるし、モデルとしては小さいし、使いにくいのかなぁとは思いますが。
まぁ、仕事としてやってたら、割に合わんモデリングですね。
趣味だから楽しんでやってますが。