ボードゲームのコンポーネント(部品)は必要か?
ボードゲームの部品・パーツを、「コンポーネンツ(部品)」と呼ぶ。英語で呼ぶのは、それだけ日本ではマイナーということなのかな。
安くても変わらないんじゃないの?
ぺらっぺらの紙でも本物のカジノチップでも、「1」と書けばゲーム中では「1G」(ボードゲームやる人は「1金(いちきん)」と単位「金(きん)」で数えることが多い)。だったら安い方がいいじゃん!高価なコンポ(コンポーネント)なんて価格をつり上げるためのメーカーの都合じゃないか!
そう思っていた時期が私にもありました。
実際ボードゲームを始めた頃は「これ、もっと安く、小さく作れるんじゃねぇの?」と思ってた。実際に小さく作り直す自作派も世の中には居ることだし。
「小さく作り直す」のは違法コピー目的じゃない。海外のゲームは部品が大きいので、持ち運び用に持っているものを縮小コピーして作り直すというもの。勝手にコピーして自作は当然ダメ。
でも、コンポーネントの違いはアナログゲームにおいてはやはり面白さの一つ、最近はそう思えるようになってきた。例えば人生ゲームも、「あの」ルーレットはゲームの魅力だと思う。ゲームとしては十面ダイスでも成立するだろうけど、あの音と動きがゲームの雰囲気を作っている。
逆に「桃鉄」はテレビゲームなのに、ゲーム中では「サイコロ」で駒を進める。他のゲーム、たとえば「カルドセプト」の様に数字が無機質に選択されてもいいのに、あくまで「ボードゲーム」の雰囲気に拘った結果と言える。
そう、ボードゲームで世界観、雰囲気を作れるか。コンポーネントはその主要な部分を占める。実際にどんなコンポーネントがあって、どんな風に世界観を作っているかを挙げてみたい。
コンポーネントの例
例えば「キングダム」。チップと「城」を置いて獲得金額を競う。対象年齢が「14歳以上」と高いのは、おそらくゲームシステムに「かけ算」が含まれているから。実際は10歳以上ならできると思う。
ゲームの雰囲気はこんな感じ。
撮影用なので駒の配置は適当です
で、コインと「城」を拡大するとこんな感じ。
「城」は左からレベル1/2/3/4と、レベルが上がるにつれて大きく、背が高く、豪華になっていく。色はプレイヤーを表していて、赤・青・緑・黄色の4色。
そして手前が「お金」。紙製でぺらぺら。
キングダムではチップと城を配置するのがゲームの中心で、それを3回繰り返す。お金が出てくるのは各ゲームの精算時のみ。
小さな紙のチップは使いにくいけど、精算に使うだけなら問題ない。逆にゲームの「キモ」となる「城」は、プレイヤーが置くか、置くまいか常時悩んでこねくり回すので、これがペラペラではどうも安っぽい。
城はプラスチック製で、ゴツゴツして、悩んでる間ずっとこねくり回しているのに気持ちいい。重要な城は大きい分、無くなると喪失感も大きい。この「ゴツゴツさ加減」がキングダムの魅力に一役買っているのは間違いない。
ゲームシステムだけ純粋に考えれば、この駒は「1~4」と数字の書いた紙チップでもいい。その方が原価も安いし、実際に城以外のチップは全て厚紙製。ゲームの中でも、城だけがあらゆる意味で例外になっている。
でも、やっぱりここはゴツゴツした立体であるべきだし、これが薄っぺらい紙の駒ならゲームの雰囲気も変わる。「平面のゲーム盤で、唯一立ち上がる城」というコンポーネントがこのゲームの世界観を良く表している。そうした立体感、触った感触こそ、わざわざアナログな木と紙のゲームを遊ぶ良さだと思う。
ゲームごとの違い
一つのゲームだけでなく、ゲームごとの違いはどうか。
たくさんのゲームで使われるパーツと言えば「プレイヤー駒」と「お金」あたりだろうか。その違いを比較してみる。
プレイヤー駒
プレイヤーを表す駒も、ゲームが違えばこれだけ違う。
左から「傭兵隊長」「ゴブリン株式会社」「BIRTH」「仮面の使者」「Infiltration-潜入スパイ大脱出-」。
※ゲームの外装箱(実際の箱の大きさは差がある)BIRTHはAmazonで見つからず。クリックで飛べます。
駒が動いたり、ゲーム中での重要度が増すほど、駒が複雑になり、大きくなる傾向がある。もちろん駒が大きいからゲームが面白くなるわけじゃない。ゲームの世界観と、コンポーネンツの雰囲気が一致したときにこそ、ゲームの魅力に繋がる。
お金
ゲームによって「色」が出やすいのはむしろ「お金」かも。
左から「仮面の使者」「ルーンエイジ」「Make'n'Break」「キングダム」「Infiltration-潜入スパイ大脱出-」「AKINDO(商人)」、そして参考にカジノチップ。
※同じく各ゲームの箱。AKINDOはAmazonで見つからず(クリックで飛べます)
「ルーンエイジ」のようにカードゲームではお金もカード、というのは良くある。(「ドミニオン」なんかもそう)
「Make'n'Break」は子供用なので、分かりやすいようお金を大きく作っていると思われる。その分造りはぺらぺら。この辺もゲームの特性をよく考えている。
「Infiltration-潜入スパイ大脱出-」はちょっと特殊で、裏返すと「1~3」の数字が書かれている。手に入れたお金(ゲームでは正確にはお金でなく「データ量」)の価値はゲームが終了するまで分からないようになっていて、「数が多いからと言って安心できない。もう少し稼ぐべきか」と悩むように設計されている。
凄いのは「AKINDO」。写真では分からないけど、これ、金属製です。
重い。
このゲーム、いわゆる同人ゲームなんだけど、ゲームマーケットという展示即売会で見て、このお金の「重さ」だけで、勢いで買った。浪速の商人が小判をやりとりする。そんな雰囲気をコンポーネントが見事に具現している。
そして最後に「カジノチップ」。ドイツのデパートで売り上げランキングで必ず上位に「カジノセット」があるぐらい、こういったパーツもゲームに重要。
ドイツのデパートにて。7位が「ポーカーセット」
カジノチップは「粘土」製なので、重みも厚みもある。ドラマや映画、マンガでも出てくるけど、その辺、実物を見ないとなかなか雰囲気がつかめないところ。
日本の硬貨と並べるとこんな感じ。500円玉は世界的にも大きい方の硬貨なので、カジノチップがどれだけでかいか分かる。厚みも十分。手で持っているのは百円玉です。
カジノなんかじゃチップは文字通り「お金」で、カジノじゃそのやりとりこそがゲームの中心になる。だから本当のお金より、むしろ大きく、重みを付けて「雰囲気」を出すことがゲームの面白さを作り上げることになっている。
そしてドイツゲームと言えば、というぐらい有名なのが木製コンポーネント。
木製の駒はドイツの伝統で、プラスチックにはない独特の重みと感触が売り。向こうに行けばこれもオモチャ屋でパーツ売りしているぐらいメジャー。
ドイツのデパートにて。コマやサイコロがパーツ売りされている。
つうかこういう(↓)お店があるぐらいだからね。木製オモチャに対するこだわりは国民的、歴史的にも半端じゃないんでしょう。
木製オモチャ専門店
メジャーでない分、日本でボードゲームを扱っているお店では試遊台を設けて中身を見たり、遊べるようにしているところも多い。
「ボードゲームってどんなのかな?」と思った人は、試遊スペースでゲームの中身を見るだけでも面白いと思う。ルールなんかは分からなくてもOK。
まずはコンポーネントが綺麗か、楽しいか。そんな所から入っても間違いないぐらい、コンポーネントだってゲームの重要な要素で、特に「名作」と言われるようなゲームはコンポーネントの雰囲気がゲームの世界観をうまく体現している。
まずは文字通り、「触れて」みるところから始めてはどうだろうか。