ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

ボードゲーム・3Dプリント作品・3DCG制作を行う「ペンとサイコロ」のブログです。公式サイトはこちら→http://penanddice.webcrow.jp/

ボードゲームデザインの練習方法

先日、上杉カレーさん(https://twitter.com/dbs_curry)が紹介されていたこの本を買ったんですが、これが良くできてる。

Building Blocks of Tabletop Game Design

Building Blocks of Tabletop Game Design

 

ボードゲームを構造に分解し、それぞれのパーツについてどのようなものがあるか列挙しています。

例えば構造としては「ゲームの構造(ジャンル)」「ターン」「行動」「解決手段(勝利判定)」等、「ターン」には17の項目があり、「固定ターン」「リアルタイム」「タイムトラック」「割り込み」等が並んでいます。

このそれぞれの項目について、1~4ページほどでその解説、特徴、歴史などが説明されています。

洋書ですが内容が細かく章立てされており、またボードゲームに特化した内容で用語も難しくないので難易度は高くありません。

 

ゲームを考えるときにかなり参考になりそうな一冊です。

どうもAmazonでの値段が一定しないのが不安ですし、安くない書籍なので積極的にお勧めするのが難しいところではありますが、機会があれば読んでみて下さい。

 

ボードゲーム学術書

上の本は副題が「An Encyclopedia of Mechanism(メカニズム百科事典)」とありますが、こういう体系立てた分類と、各項目を網羅する「ボードゲーム学術書」というものを作るあたりの発想は、欧米は強いなと感じます。

日本も江戸時代から「本草学」をはじめ博物学は決して世界に負けないレベルの蓄積があると思いますが、集めるのは得意で分析して系統立てるのはどうも苦手です。

これは多分、「物事を集めて分類・体系立てる練習」というのを教育課程の中でやっていないからじゃないでしょうか。逆に欧米でこれが強いということは、そうした授業や体験があるということか・・・その手法には非常に興味があります。

 それはさておき。

 

ボードゲームのメカニズムではこうした資料がリリースされましたが、「ボードゲームの作り方」は未だに体系がありません。

私も含め、ゲームの作り方はみんなそれぞれで、手探りで探るしか無いわけです。

私もこうした体系を作るのは苦手なので、ぜひ誰か作り上げて欲しいですが、その取っ掛かりになるべく、とりあえず私の知っているやり方を発信しておきます。

 

私のやり方(ペンとサイコロ)

私がトレーニングとしてやるのは、「既存のゲームシステムを自分で作ってみる」です。

要はリバースエンジニアリングです。

ja.wikipedia.org

物の動作を解析してその設計方法などを考えるのがリバースエンジニアリングですが、例えばあるアイテムの出現率を知ることはパソコンのゲームでは困難ですが、ボードゲームでは完全に把握できます。

こうしてあるゲームの挙動を調べて、自分で同じように設計してみる、というのが私のゲームデザインの「練習」です。

※そのままコピーして販売するわけではありません。あくまで自分用の練習です。

 

例えば1~10のカードがあるゲームで、「4」「6」にだけ特別なポイントが付与されている場合、なぜそういった配点なのか、それがゲームの挙動にどう影響するかを調べるという感じです。

コピーするのではなく、「設計意図を考える」のがキモです。

結果として、やはり有名なゲームは改善の余地がない仕組みやバランスで作られていることが多いのですが、それをきちんと分析できれば、そのバランス配分の方法などは他のゲームでも役立ちます。

 

例えば宝石のきらめきで言ったら、各色の割合、レベルI→II→IIIとどう増やしていくように設計されているかとか。

宝石の煌き 日本語版

宝石の煌き 日本語版

 

宝石チップの枚数は7枚ですが、それを6枚や8枚にすると「なぜ」ゲームとして面白さが下がる(あるいは破綻する)のか。

同じようなシステムのゲームを考えたとして、「宝石のきらめきが7枚だから、このゲームでも7枚にしよう」とするのと、「あのシステムでは7枚だったから、このシステムではこの部分が変わる分、6枚にしよう」となるのでは、全く結果が変わってきます。

実際には、「枚数のバランスから言えば6枚になるが、そうすると『2枚同時取り』のアクションのバランスが悪くなるから、無くす。そうするとアクションの選択肢が減るから新規のアクションを追加」と一つのパラメータを変えると連鎖的にシステムが変わっていき、結果として全く別ゲームになるハズです。

 

一つのゲームを分析し、アクションの意図を調べ、アレンジを考えることでそのゲームだけでなく、システムに対しても理解が深まります。

これでできたものは基本的に既存ゲームのアレンジなので、そのままでは新s買うにはなりません。あくまで、この検討段階におけるゲームバランスの調整や、工夫の際のパーツが自分の武器になる、というものです。

こういう引き出しが多いと、小さいゲームなら言われてパッとまとめる力が付きます。ゲームシステムを作って欲しいという依頼を先日頂いたのですが、システムを考えてモックを作り、テストしてルールを提出するまで1日でした。(おかげで書いたルールにはモレがあったようで、そこは申し訳ないです・・・)

 

ちなみに同じような方法は他の方もやるようです。

私は自分の作ったゲームに対して、「あのカードの枚数はなんでああしたんだ?自分が作ったらあの枚数にはしないのに」と質問されたことがあります。自分の作ったゲームが分析されるのは、嬉しくもありますが、怖くもあります。

 

他の方の方法(スパ帝国)

他の方がどうルール作りのトレーニング、スパーリングをされているかはなかなか知る機会がありませんが、スパ帝国(https://twitter.com/verdamil)さんの「ルールデザインノート」(2918年4月発行)という小冊子は非常に勉強になります。

JANコードついてますけど、これ今でも買えるのかな)

 

この冊子ではゲーム作りのトレーニング例として、競りゲームを例として要素をA/Bに分け、その組み合わせで番号を振っていきます。例えば「公開入札(A)か、封印入札(B)か」といった風に。

この要素を6個ピックアップすると、その組み合わせて2^6=64個のルールが生まれます。この64個を本書では「周期表」と称し、それぞれに当てはまるゲームをピックアップ。「穴」となる部分が「既存のゲームが無いシステム」として、それに当てはまるゲームを考える、というもの。

 

この方法、言っていることは簡単に感じますが、まず既存のゲームを適切に分類できる「分析能力」、それを組み合わせたのち、既存のゲームを当てはまるだけの「知識」が大前提となります。それをクリアしたのち、示された制限に沿ってゲームを作る能力が必要になるわけです。

これは鍛えられる!

ちなみにこの周期表で上げられたNo.51が「実地練習」としてゲーム案になっており、その仮名称が「翡翠の商人」です。

 

え?

翡翠の商人

翡翠の商人

 

 

練習、どころがガチの作成方法じゃないですか!

マジのゲームデザインの裏側を詳細にまとめた冊子としてリリースしておられるわけで、これは参考になります・・・が、なかなか真似できる方法でもないです。

 

他の方はどうされているんですかね。

ぜひ伺ってみたいですし、そういう方法論をまとめた体系図をだれか作って欲しいです(他力本願)