ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

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常識と非常識のあいだ

自分の知らなかった文化に触れて思うのは、「常識」なんて限定的なもの、ということ。

この記事には多数の反響を頂きましたが、「生活を優先し、帰宅時間は早い」「日曜には家でゆっくり遊ぶ」という生活スタイルに驚きがあったようです。

ドイツの常識・非常識

「日曜日に働かないのは宗教的な理由か?」なんて分析もありましたが、もっとシンプルに、「みんな休むから働く人がいない」という印象です。

もちろんその代償としての不便さもあります。

それを受け入れることも含んで、ドイツの「常識」であり、「日常」ということです。

彼らと話をするキーワードは「Resonsibility」だと思います。(ドイツ人に限った話ではありませんが)

いろんな訳がありますが、「責任範囲」という訳が個人的にはしっくり来ます。

 

ドイツ人は働くのが嫌い。

あくまで「自分のスキルや時間を会社に売る契約」を会社と結んでおり、その領域が「Responsibility」だと個人的には理解しています。

だから、仕事で話をするときには「君のResponsibilityは何?」と訊くことも多いです。その範疇のこと以外には本当に興味がない人が多いので。

つまり「仕事かプライベートか」という発想がそもそも無く、残業は「契約外の仕事を、なんでせにゃいかんのだ?」という話になります。

だから平気で・・・というと語弊がありますが、自らの権利・契約の改善のためにはストも辞さないし、仕事を遂行するためにはお客様の快適さなんて知ったことかという態度に出る場合もあるわけです。

(この4月ごろまで大規模なストがあり、列車が半分程度運休して大変でした)

 

南アフリカの常識・非常識

今回は世界の担当者が集まる会議にお邪魔したので、夕食などで色々な国の人と話す機会がありました。

そうして知る世界の「常識」は、自分の「常識」を見直すいいきっかけになります。

 

例えば南アフリカ共和国

南アフリカで車を運転するときは、信号待ちで前の車と車間を空けろよ」
-なんで?
「停車中に銃で脅されても、車間があれば車を動かして脱出できる。車間を詰めると逃げる隙間が無いからな」
-マジか・・・
「当たり前だ。外に出るときにはいつでも神経を張りつめなきゃいかん。車に乗っていても気を抜くな」

-やだよ~、そんな国。

「なに言ってんだ。南アフリカはいいぞ。なにせ土地も家も安い。お前らも南アフリカで家を買えば大豪邸だ」

-そうかもしれないけどさぁ。

周囲はドン引きしていましたが、本人は至って陽気。

そういえばメキシコの販売店は、事務所の車が防弾ガラスだそう。

Isbi Armor

さすがに防弾が役立ったことはない、という話でしたが、

「二度ほど銃で脅された」そうです。

「やっぱり日本は平和なんだなぁ」と実感します。

そして話の中で感じるのは、「金持ち・広い家が幸せ」という感覚。

この即物的な幸せを求める感覚はいくつかの治安の悪い新興国に共通していて、彼らのスマホは全部金のiPhoneでした。腕時計も金。

Apple iPhone 6 / Janitors

この「金ピカ指向」の共通性も面白く感じました。


ブラジルの常識・非常識

南アフリカ人の話でドン引きする中、一人頷いていたのがブラジル人。

彼女によるとブラジルの治安も似たようなものだそうです。

「うちでも安く豪邸が建てられるけど、周りは掘っ立て小屋なのよね」

(ここでさっきの南アフリカ人も頷く)
-なんで?
「だってメイドとか、雇う人は近くに住むでしょ」
-そうなんだ
「そういうもんよ。通うと大変だし」

(暗に治安の事を指している模様)

裕福な人は固まってシェルター化すると思っていましたが、彼女の周辺では違うそうです。

フィリピンでは日本人が固まって、入り口に門と守衛を設けてたけどなぁ。

「お金を持ってるんだから、家事なんか全部やらせりゃいいのよ」

と、子持ちでも料理も育児もぜんぜんしないそうです。

新興国では貧富の差が激しい国も多く、稼ぎがあれば家事はこうしてアウトソースするのがむしろ「常識」なんですね。

私も幼少の頃フィリピンに住んでいましたが、メイド2名と運転手を雇っていました

当時の妹は四カ国語を聞き取れたそうです。(日英+メイドの話す現地語2つ)

当時言われたのは「お金があるのに雇わないと、ケチだと反感を抱かれる。儲けに応じた数だけ人を雇わないといけない」ということ。

お陰でうちの母は「フィリピンは不便だったけど、子育ては楽だったわ~」と今でも言っています。

「母親が子育てをしないと!」なんて考え方は全くありません。常識が違いますね。 

 

中国の常識・非常識

中国人からは、逆に彼らが常識に縛られている話を聞きました。

Shanghái - 上海 / J_Llanos

上海から来た彼らによると、一人っ子政策は終わったが、現実的に二人目は無理」とのこと。
中国では結婚するには「家を買う」必要があり、結婚する若者はお金がないので、親が買い与えるそう。

中国では不動産の価格が急上昇しており、家を二軒も三軒も買えず、「こどもが結婚することを考えると、二人目は無理」という「先読みでの少子化になっているそう。

-別に賃貸でも生活はできるんじゃないの?

「それはそうなんだけど、中国の常識じゃダメなんだよ」

彼らも賃貸で生活できることは分かっていても、「常識」として無理だと。

「買うといっても、中国では土地は国の物だから、実際には使用権を借りてるだけ。まだその期限が切れたことがないから、切れるとどうなるか分からない。安心して不動産を買える日本が羨ましいよ」
という共産主義ならではの悩みも。
国が違えば常識も、ルールも違います。

China Flag and Dome / jamiejohndavies

 

日本の常識・非常識の変遷

常識と思っているものも実は歴史が浅かったり、以前は逆が常識ということもあります。

そして平和な時代にはルールを作って自らを縛るのは人間の性のようです。

厳密なルールで縛って、それをきちんとできる人こそ「高貴」とすることで差別化したいんですかね。

例えば平安時代陰陽道

安倍晴明像 / iichangm

今では陰陽道の名残は「大安」などの六曜ぐらいですが、当時はことあるごとに「方位が悪い」「日が悪い」と物忌みが発生し、その責任は一族の家長や天皇に掛かったと。結果、高貴な人ほど物忌みで家に籠もらなければならなくなり、天皇に至っては一月に十回を超すこともあったそう。

(物忌みでは家屋敷の門扉を閉ざしますが、例外的に天皇は物忌み中も公務をこなしていたそう)

こういう仕組みは日常生活を圧迫し、源平合戦では「日が悪い」と挙兵の日をずらすなど、生死が関わる局面でも陰陽道の見立てを重視しています。

 

同様に江戸時代には武士の様々な「儀式」があったそうです。

武士は貴族階級なので高額な俸給を貰っていましたが、儀式や決まり事で赤字になる構造だったそうです。

今も「お食い初め」や「七五三」は残っていますが、当時はさらに「元服」などの儀式もあり、またそれぞれに費用が掛かったそうです。

しかも給料は固定。(昇進して給料が増えると出費も増え、赤字はむしろ拡大する)

結果、身内でのお金の貸し借りが常態化し、みな借金にあえいでいたと。

この本では「弁当箱も売り払う」という当時の武士の困窮ぶりが詳細に分析されています。(同名で映画化もされたそうですね。そっちは見ていませんが)

武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新 (新潮新書)

武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新 (新潮新書)

 

 

現代も父の日、母の日と贈答の日が次々追加されています。

母の日クーポン / june29

ローカルな風習だった節分の恵方巻きも、いつの間にか全国区に。ハロウィーンも段々メジャーになってきました。

次はイースターでしょうか。

こうしたお祝い事、儀礼がどんどん増えて首が回らなくなって初めて、いくつかの「常識」が捨てられるのでしょう。

 

その常識は、本当に常識?

先日の記事の感想で「ドイツ流が羨ましい」という声は多かったのですが、「自分もやってみよう」という声はほぼありませんでした。

「でもうちの会社では仕事が回らないから定時帰りはできないな」

というのは思考停止では?と思うわけです。

タテマエとしては、全部放り投げて定時で帰っても良いわけで、それで仕事が回らないのは経営陣が悪いのだから、転職する選択肢もあるわけです。

 

もちろん現実的に難しいのは重々承知しています。

私も前職では過労で精神疾患を患い、夜九時に会社でぶっ倒れて救急車で運ばれました。

(その辺の詳細は「医療」タグの記事をご覧下さい)

そうして転職した身としては

「会社にそこまで尽くしても仕方ないよなぁ」

と思うわけです。

今ではほぼ定時帰りです。給料は減りましたが、なんとかなるもんです。

 

最近、こんなブログ記事が話題になりましたし、

私が過去に伺った会社でも「かんてんぱぱ」ブランドの「伊那食品」は超ホワイト企業だと思います。

「日本に住む限り、労働環境は良くならない」ということはありません。探せばあります。

自分が「常識」と思っている不満も、ちょっと引いて見直せば解決策もあるんじゃないかと思い、自分の意見をまとめてみました。