ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

ボードゲーム・3Dプリント作品・3DCG制作を行う「ペンとサイコロ」のブログです。公式サイトはこちら→http://penanddice.webcrow.jp/

PHSが失敗したわけ【問題提起】

PHSといえば学生がまず買っていた時代があった。
しかし紆余曲折があって今では使っているのは一部学生と企業、さらに少数の社会人、提供している会社はWillcomのみ、
そのWillcomも会社更生手続きの上、Softbankの傘下に入るという、なんともやってられない状況にある。
・リンク → WILLCOM|ウィルコム


そこで今更ではあるが、PHSってそんなにどうしようもない技術だったのか?を考える。

PHSとは何だったのか

PHS(Personal Handy-phone System)は当初簡易型携帯電話と言われていた。
NTTのページには今でもその記載がある。
・リンク → NTT情報通信用語集


PHSは設計思想としては「電波を強くしたコードレス電話の子機」
Panasonic パーソナル普通紙ファックス 子機1台タイプ (A4送信/A4受信) ホワイト KX-PW320DL-W
携帯電話がやっとできた時代に、コードレス電話のように半径100mとかの狭い範囲だけサービスを供給する。
そんなもの、携帯電話として使えないんじゃないか?
ということで簡易型携帯電話という名称を当初使ったらしい。
その時代の雰囲気が伝わる記事があったので折角なのでご紹介。

●初出:月刊『潮』1995年8月号「市民講座」
Q:一九九五年七月一日から、PHSという新しい電話がスタートしたそうですね。どういうものか教えてください。
A:(略)PHSの電話機一台一台は、最近家庭でも普及してきたコードレス電話(無線の親子電話)の子機とだいたい同じものです。
(以下略。面白いので興味のある方は是非)


・リンク → PHS(簡易型携帯電話)-現代キーワードQ&A事典


実際には数100m単位の基地局を敷き詰めることで、都市全体をカバーしている。
基地局間を高速(40km/h以上)で移動すると通話が難しいとされているが、都市ではその速度で安定走行できないのであまり関係ない。
電車とかなら電車内に基地局を作ってしまえばいいのでこれはこれで対応可能。

戦略の失敗

PHSの最大の失敗は、その簡易型携帯電話という正式名称に集約される気がする。
PHS「高機能なコードレス電話の子機」という設計で、携帯電話は「簡易的な無線機」という設計。
お互いのコンセプトが違うので、決してPHSは携帯電話の簡易版ではない。
言ってみれば、「自動車」「電車」を同じ土俵で比較するような物。
両方、人を運ぶと機能は同じだが設計思想が違う。
これを「最高速は電車の方が時速300kmまで出せる!」と言っても仕方が無い。


携帯電話は自分自身が電話だが、PHSは実は基地局が電話機

20080526_175824_DSCF4430 / くーさん

PHSは文字通り、基地局「子機」として働くレシーバーでしかない。
そう、PHSの電話代が「固定電話並」なのは、技術的には固定電話だから。
固定電話である各基地局が、コードレス電話程度の微弱電波でPHSと通話する。
このためPHS端末の主な機能は、通話機能と、「どの基地局に電話を繋ぐか決める」というGPS的な機能になる。


コードレス電話機程度の電波、ということで電波塔も小さくて済むので、
PHSは携帯電話より安い初期投資で通話を提供できる。
ただPHS各社が当時「安さ」「手軽さ」を前面に出し過ぎたために「チープさ」に繋がったことがPHS失敗の一因だと思う。

総務省の方針により、PHS会社は最大三社。
当時の各社の戦略では「手軽さ」が出ているのが分かる

  • DDIポケット : 社名からして「モバイル」ではなく「ポケット」と手軽さを重視
  • NTTパーソナル: キャッチコピー「みんなを電話にする会社」
  • アステル : キャッチコピー「おでかけ電話は、ルルルのル」「みんなのPHSアステル関西」。後のアステル関西の「都会で働く人へ」は良いキャッチ。


当時、携帯電話は高価だった。
PHSは当時通信エリアが狭く、「簡易携帯電話」と取られていた事は事実。
しかし、そのイメージを払拭せずにそのまま「安いですよ」という戦略で主に学生に拡販した。

その結果どうなるか

安価でスタートして、イメージアップをしたら良かったが、それはできなかった。
むしろ高価だった携帯電話が急激に高機能化と低価格化を進めることで「今どきPHSと見られるようになってしまった。
当初の低価格戦略を、後になるまで払拭できなかったことが第二の敗因。

どうすれば良かったのか?

携帯電話の高速通信化に対抗して、次世代通信網を進めたためにWillcomは破綻した。
しかし本当にそれしか差別化の方法はなかったのか?


PHS各社もバカではないのでH"発売時など、かなり「ビジネス向け・高機能」を打ち出したように見えるし
W-Zero3はコンセプトは今のスマートフォンを完全に先取りしている。

Willcom W-ZERO3[es] / yoppy

(本当、あれは惜しかった)
そしてPHSファンは「特に不満は無い」という人も多い。
そんな中で、PHSはどうすれば生き残れたのか。


戦略、広告も含んで、「伝え方」という視点から考える。
続きはこちら
・リンク → PHSはこう伝えたら良かったのでは?【解決案】