ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

ボードゲーム・3Dプリント作品・3DCG制作を行う「ペンとサイコロ」のブログです。公式サイトはこちら→http://penanddice.webcrow.jp/

蒼天航路−ネオ・三国志−

今日友人と話していた内容、ほぼそのまんま。
私なりの書評。
間違っているところも多数あると思うが、その辺はご容赦。
全部検証していると勢いが無くなるので・・・

蒼天航路とは

蒼天航路はモーニングで連載されていた「ネオ三国志漫画。
原作・原案 李學仁(イ・ハギン)、漫画 王欣太(きんぐ ごんた)
李學仁(イ・ハギン)は韓国人(在日二世)、王欣太(きんぐ ごんた)は日本人だそうです。
なんだ、中国人じゃなかったのね。今の今まで勘違いしてた。

蒼天航路(1) (モーニングKC (434))

蒼天航路(1) (モーニングKC (434))


簡単に言うと曹操視点の三国志です。
今までの三国志演義→横山三国志へと繋がる劉備三国志に対するアンチテーゼ作品。

そもそも三国志とは

いわゆる三国志とは元は三国志演義という「小説」
それを吉川英治三国志として大ヒットし、横山光輝漫画もこれをベースにしている。
大衆小説である三国志演義は、劉備を善、曹操を悪という基軸で書かれている。
(この辺、細かい説明はさっくり省きます)
まぁとにかく、大衆小説にふさわしく人情話が書かれていたりがちょくちょくある訳ですよ。
あと、史実に準拠しているわけでもない。

三国志 (1) (吉川英治歴史時代文庫 33)

三国志 (1) (吉川英治歴史時代文庫 33)

蒼天航路の凄かったところ

個人的に、蒼天航路を読んで衝撃を受けた点は二つ。

軍隊の描き方

群衆を描くと、一人一人を描くか、「箱」としてざっくりまとまりを描くかのどっちかになる。
最近は細かく描く人が多いのかな?
岩明均三浦健太郎も一人一人を描く。
蒼天航路では、「一人を『点』として描いて、それをたくさん並べる」という描き方。
「軍隊は箱ではなくて人の塊だけど、それぞれの人は個性ではなく、一つ一つの駒」
という認識に立っている感じがする。
この感性に驚いた。
何というか、中国人の軍隊のとらえ方って特にそういう気がする。あくまでイメージだけど。

英雄の書き方

蒼天航路の英雄達は、文字通りみんな「一騎当千」。
それが妙にリアルに描かれている。
センゴク」では一人一人の戦力は言っても二〜三人分で、それをリアルに描いていくが、
蒼天航路の英雄達は容赦なく強い。
そしてその理由を
「大リーグの4番バッターが、槍を持って馬の上にいたら・・・」という巻末コメントで説明している。
なるほど、何億人もいて、その中で力一本でのし上がる怪力バカに、
更に槍と馬を持たせれば、雑兵なんかは本気で百人いても倒せないだろうと。
説得されちゃいましたよ、これには。
そして呂布、強ぇ!(結局全部この人の強さに集結する)

蒼天航路の解釈

蒼天航路「史実」三国志と言うより、「正史」三国志という方が正しいと思う。
作中の人物はみんな自分の意見で話して、動いているが、その人物像や行動の解釈は多分に作者の解釈が入っている。
その「ビバ曹操な偏り方は、正史に似ている。
正史は、中国においては新たに成立した王朝が作る歴史書。
それは名の通り「国が認めた正しい歴史書」だが、つまりは「今の国は前のこんな悪い国から新しい国を作った!」
とPRする目的があるため、多少ならず偏った記載がなされている。
董卓の章ではっきり書いているが、作者はこの董卓の歴史書における「残虐な王」という表現を「むしろこの残虐な表現ですら実際より穏やかに表現している」
として「悪の帝王」として描き、劉備「逃げ回る弱虫」として書き、天才諸葛亮孔明「変態」として書く。
それは、大仰な身振りも含めて作者の考える曹操像」を作者なりの三国志演義として書いたと考えると辻褄が合う。


だから、これは「正しい歴史じゃない」と目くじらを立てる作品じゃなく、
曹操から見たら歴史はこうだった」という作品だと思う。
その偏った見方自体も、中国人的な発想で凄く楽しかった。


・・・とまぁ熱く語りながら途中で止まってるんですがね。
黄巾の乱董卓呂布と文句なしの描き方なので、お勧めして問題なかろうと。
まぁ、機会があれば手に取ってみてください。

蒼天航路 全18巻 完結コミックセット (講談社漫画文庫)

蒼天航路 全18巻 完結コミックセット (講談社漫画文庫)