ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

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カプセルホテル的エンターテインメント施設in大阪

フェスティバルゲート、というと関西の結構な数の人達には
何とも言えない哀愁を誘う言葉じゃないだろうか。


フェスティバルゲート略称:フェスバ)は大阪の浪速区にあった娯楽施設。
JR関西本線南海鉄道南海本線 新今宮駅、地下鉄御堂筋線 動物園前駅至近という好立地
(元は鉄道会社の車庫)に、総工費約400億円(資料がきちんと見つからないので間違っているかも)で建てられた屋内型遊園地。
1997年に開業するも、初年度以外は全て赤字
2004年には遊園地としては倒産し、2007年には全てのテナントは撤退。
現在は建物は既に壊され、来年ぐらいにはどこぞのパチンコ会社がボーリング場にするとかなんとか。
・リンク → フェスティバルゲート−Wikipedia

※現在のフェスティバルゲート跡地。唯一残るフェスティバルゲートの雰囲気を臭わせるギリシャ風彫像


大阪観光の場合は、ココをスタートにず〜っと北上していくと、
フェスティバルゲート跡地 → 通天閣 → 日本橋(電気屋街:かなり長い)
→ 道具屋筋 → 吉本新喜劇前 → (商店街) → 戎橋(ひっかけ橋)
とコテコテの大阪観光が一発で出来るというオススメスポット。
(ただしかなり歩く)

フェスティバルゲートから見た通天閣。座っているオッサンはこの町の風景の一部。

新世界、という一大エンターテインメントエリア

フェスティバルゲートについて、恐らく大多数の関西の人達が思ったのが
「なんでまたあんなところに」じゃないだろうか。
駅の名前で言うと分かりにくいが、フェスティバルゲートのあるあたりは「新世界」と言われ
近くには「日雇い労働者の町」として有名になってしまっている「あいりん地区」がある。
フェスティバルゲートの赤字の原因も、ホームレスが施設内に居座ることを排除するため
警備に大きなコストがかかったからと言う指摘もあるぐらい。


でも、新世界という場所を歩いてみると、ここが一大エンターテインメントエリアであることが分かる。
文字通り子供から大人まで楽しめるエリアと聞いて、「ここなら行けるんじゃないか?」
と勘違いしてしまった関西以外の人がいたのかもしれない。
でも、それなら地元の感覚が分かる人がなぜ止められなかったのか、と思うが・・・


繰り返すが新世界は一大エンターテインメントエリア、だと思う。
フェスティバルゲート跡地には温泉・プール施設「スパワールド」が隣接し、好調に運営しているが、
ここから通天閣までは直線距離約300m。
その間には 串カツ屋串カツ屋たこ焼き屋串カツ屋串カツ屋串カツ屋ラーメン屋串カツ屋など
多彩なお店が軒を並べ、子供が楽しめる動物園が隣接し、

大人が遊べる パチンコ屋スマートボールパチンコ屋将棋センターラブホテルラブホテルパチンコ屋
とこれまた多彩なお店が軒を並べている。


娘(5歳児)と歩くと、珍しい物ばかりなので興味津々。文字が読めるようになったので、知らない単語をどんどん質問してくる。
「なんであのお店は入っちゃダメなの?(AKB48のノボリが乱立するパチンコ屋の前で)」
いざかやってなぁに?子供は食べるものないの?」
『アダルトショップ』ってなぁに?」
という文章で分かっていただけると思うが、なんというか、そういう街なんである。
で、家があるんだかないんだが微妙な方々も中途半端な店?を出していて、「ニガオエカキマス」と書いた紙の横で
鉛筆一本で画用紙に顔を描いていたりする。

それを横目に、スパワールドは大盛況

こんな土地で遊園地を作ったところで、街の雰囲気と合わないことはみんなが分かっていた。
良くも悪くもベッタベタで、コテコテの商売をしなければ、街と合わないし、
街の雰囲気と合わない商売をゴリ押しすると警備やら何やらで多大なコスト負担になる。
で、そう考えたときに面白いのは隣接するスパワールド
「世界の大温泉」のテーマ通り、男女別フロアで巨大な温泉施設となっており、一番上の8階はプール。
こちらは大盛況も大盛況。
夏休みの最後に行ったときには、文字通りの芋洗い状態だった。
ではなぜスパワールドは大盛況なのか?
細かく見るといろいろな工夫もあるが、一番は「コンセプト」の部分じゃないだろうか。

スパワールドとはどんなところ?

スパワールドは巨大温泉施設。関東の人たちには大江戸温泉物語の関西版」を言えばわかりやすいだろうか。
(正確には大江戸温泉物語がおそらくスパワールドの関東版」。開業はスパワールドが6年ほど早い)
施設内の共有部分では施設の服に着替え、腕のタグで精算するので現金は持ち歩かない。
プールもあるが基本は温泉施設なので、寝っ転がったり、マッサージしたりという施設が多い。


「『癒し』をテーマにした総合レジャー施設」といえば聞こえはいいが、よくよく要素を分解すると、ここは
「カプセルホテルと宴会場を足して二で割った施設」といえる。
カプセルホテルは大阪で誕生した安価な宿泊施設だが、その当初のコンセプトは
「宇宙船のような宿泊施設」だったらしい。
実際にカプセルホテルは外国人の観光スポットの一つとして地味に人気という。

capsule hotel asahi plaza / clango

カプセルホテルは「カプセル」部分だけが取り上げられるが、実際には大浴場やマッサージなど、
大人の娯楽施設としての施設を備えたスポットだと言える。
多くのカプセルホテルは大人の男性専用だが、これを家族で楽しめるようにしたのがスパワールドではないだろうか。


スパワールドはカプセルホテルではないが、きちんと宿泊用ホテルもある。
しかしそもそもの入場料が「AM10:00〜翌朝AM8:45」とある時点で、ホテルを使わずに普通に入場して、
カプセルホテル代わりに利用することを見込んでいることが分かる。
実際に施設の一階(入り口は二階なので、感覚的には地下階)には、リクライニングチェアでゆっくり出来るゾーンがあり、
四六時中誰かが寝ている。

ご家族から終電逃したサラリーマンまで

上にも書いたが、スパワールドは大盛況。
1000円キャンペーン、プールで子供ゾーン開設など家族を狙ったキャンペーンが成功しているといえる。
プールは芋洗いでも、どうせ親御さん方のメインは風呂でゆっくり休むことだから問題ない。
館内の1フロアは食事・宴会ゾーンで、むしろ周辺の飲食店よりもバリエーションは多い。
昼は家族連れがしっかりと金を落としてくれる。
夜になると同じ施設だが客層は宿泊目的になる。
1000円キャンペーンは、遊戯施設ではなく宿泊施設として考えたときにも有効になる。
通常の設備利用金額が2,700円〜3,000円(曜日による)+1,300円(深夜割増料金)=約4,000円
カプセルホテルに比べれば高い金額だが、1000円キャンペーンなら一晩泊まって 2,300円
これならカプセルホテルより安くなる。
天王寺界隈で飲んだくれたら、そのまま歩いてスパワールド、という流れができるわけだ。
大阪の大動脈、御堂筋線沿いという好立地も、これに一役買っている。

RIMG3270 / honobon

御堂筋線は動いているけど、家まで帰れない」は大阪ではままあるシチュエーションだからだ。
完全に娯楽施設として郊外に建てられている大江戸温泉物語ではこうは行かない。
立地と地域特性を生かしている、好例と言える。

地域に根ざした娯楽施設

この夏にはスパワールドキン肉マンとコラボレーションしていた。

キン肉マンスパワールドには何の関連性もないが、
キャラクターとして猥雑な雰囲気に合い、メインとなるサラリーマン世代にヒットする良い選択だと思う。


ところで地域特性というと、このスパワールド、混み始めるとみんなそこら辺で座り込み始める。

写真は二階、正面ロビー前。
裸足だからというのもあるが、みんなが通る通路部分で誰彼構わず座ってOK,という雰囲気がなんともこの場所らしい。


もちろん温泉と言うことで、テルマエ・ロマエの映画公開時にはタイアップする、
テルマエ・ロマエV (ビームコミックス)テルマエ・ロマエ ?小説版? (KCG文庫)
4階と6階は月ごとに男女の利用フロアを入れ替えて新鮮さを出すなど、細かく手を打っている。
でも逆に、温水プールの入り口が壊れていてもガムテープで応急処置して済ますなど、
この街で求められるレベルを的確に満たして(要は適度に手を抜いて)いるのはなかなか見事だと思う。
フェスティバルゲートは失敗し、全く同じ立地のスパワールドは成功している。
「地元に入り込む」とはこういうことなんだなという好例だと思う。