ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

ボードゲーム・3Dプリント作品・3DCG制作を行う「ペンとサイコロ」のブログです。公式サイトはこちら→http://penanddice.webcrow.jp/

みんなでものづくり、という時代。

個人でモノを作れる時代って、どんなのだろう。
個人でモノを作れる時代になったら、何が変わるだろう。


昨日書いたことの話を進めて、
そんなことを考えると楽しくなったので、もう少し考えを進めてみた。
昨日の記事はこちら。
・リンク → まとめが編集者を殺した。ものづくりはどうする?−わかりやすさを、コーディネート

設計さえすれば、設計が出来なくても!

既に企業の設計では、設計さえすればそれを専門の業者に頼んで試作して貰うことは普通に出来る。
その中でも、試作専用の「RP(Rapid Prototyping)」という技術は楽しい。
昨日紹介したiModelaもRPの一種だが、ああいう切削するRPは製造の現場ではレアで、普通は「光造型」という手段を使う。

Rapid Prototyping at RCA / saschapohflepp

まぁ、そんな話はいいです。


とにかく、設計さえ出来れば物を作れる時代、というのは全然想像の先の話じゃ無くて、今でも出来る。
でも、実際に個人が設計図を引いて作れるか、というとなかなか厳しいし、
技術的な面だけでなく、RPにデータを渡せるような3D-CAD(コンピュータ設計ソフト)を持っていて、使えるかという技術面および金銭的な問題もある。

Synchronous Technology with Steering Wheel / Siemens PLM Software

しかしこれが絵空事かというと、個人的にはそんなにハードルにならないと思っている。

初音ミクを聞いた人と、作った人

参考になるのは初音ミクをはじめとするボーカロイド

とらのあな 秋葉原店B 中央通り沿いショーウィンドウ Vocaloexus feat. 初音ミク / fukapon

(以後、初音ミクと総称する。「ボーカロイド」と書くより理解が良いらしいので)
コンピュータで音楽を作るDTM(desktop music)」というジャンルは初音ミク以前からあるが、
実際にそれを誰でも触れるかとなると、やっぱり難しい。


ではなぜ、初音ミクが成功したのか?
初音ミクに関わる人、というと音楽を作る人だけで無く、画を描く人、歌う人など様々なジャンルの人が関わっている。
PVだって3Dポリゴンのソフトウェアを作る人からボディを作る人、それを動かしてPVに仕上げる人は別。

45 Miku Models / 4everMiku

そうして、それぞれの得意分野を生かして一つの作品を作り上げることで、
あれだけの生態系を作り上げたといえる。


もの作りだって同じこと。
たとえば、「ルンバと同じサイズで、吸引力の高い掃除ユニット考えた!」みたいな人が出てくる。
でまたそれをいじる人が出てくる。
「階段を転げ落ちながら掃除できるようにしたったwww」
そうしてフリーの「かいだんそうじろぼっと」が作られ、欲しい人はそれをダウンロードして家で作る。
設計が出来なくても画が好きな人はイラストを付けて、音楽が好きな人は主題歌を作る。
キャラクターが作られたり、喋るように進化していく。
「iModelaじゃ電気設計もモータも作れないよ」という冷静な突っ込みはさておき、
ものづくりでも、「誰でも作れる技術」が進んでいけば、得意な人同士が技術をオープンソース化して新しい物を作れないか。

ものづくりは、初音ミクたり得るか

なんのことはない。
ニコニコ動画と、初音ミクをはじめとするボーカロイドがたどった道を、ものづくりでも辿れないだろうか。
そんなことを考えるに、いくつかのハードルがある。

技術的ハードル

iModelaのみならず、RPで作れるのは形状のみ。(実際には形状にも制限が色々ある)
小物部品やフィギュアならこれでも良いかもしれないが、電化製品のように実際に物を動かすには、電気制御が必須になる。
電気基板を気軽に一から作る手段は現状無く、多くは昔ながらの電気設計じゃ無いだろうか。
その手間を省くべく、気軽な電子機器ユニットは昔から提案されている。
例えばchumby
・リンク →chumby

電子玩具という位置づけになっているが、オープンソースで作られていて、むしろハッキングを推奨している。
会社が倒産したという噂もあるが・・・どうなったんだろ。


どちらにせよ、電気制御・モータ駆動関係は素人にはまだまだハードルが高い。
「この部分は勉強しないと」というご意見はもっともだが、
作るぐらいは自分で出来る環境を作ってあげなければいけないと思う。


一応ユニットとして組むならレゴのマインドストーム、と言う手もある。
・リンク →レゴ マインドストーム公式サイト

教育用だがレゴなので色々出来る。
言語はLabViewという研究用ソフトウェアを簡素化した物。
レゴなので配線も簡単。
これを他の方法で実現しないとな、と思う。

社会的ハードル

こんな時代が来たら、既存のメーカーはどうしたら良いか。
これは一つのハードルになると思う。
作られるものは色々な人のアイディアの集まりで、その設計にはあちこちで企業のデザインや特許を侵害しているだろう。

Samsung Galaxy SII und iPhone 4 / gillyberlin

※写真はイメージであり、内容とはたぶんあんまり関係ありません。
しかしそれを一々精査して差し止めていては企業も時間の浪費になってしまう。
また、もし人気になっている設計や機器が特許を侵害しているからと差し止めればどうなるか。
「空気を読まない会社」として猛反発を食らうのでは無いか。
いくら正義は企業の側にあると言っても関係ない。
その機能がまるまる企業のコピーならそりゃ差し止める必要があるが、
グレーな物である上に、一部機能については元の機種を上回る物が出たときにどうするか。
企業としてはそんな技術と「どう付き合っていくか」と考えなければいけない問題だろうと思う。


こうなると、企業はフリーのものづくり集団との共存の道を探していくしかない。
これもボーカロイドがたどった道と全く一緒だと思う。
セガなどは早い段階で初音ミクの文化を歓迎し、積極的に取り込み、ゲームもライブも成功している。
初音ミク -Project DIVA- f
初音ミクはもはや「キャラクター」として成功し、コンビニなどのCMでも起用されている。

Hachune Miku Nikuman / Dick Thomas Johnson

そうすることで企業側もしっかり利益を取れるようになる。

金銭的ハードル

これは今の初音ミク周辺で起こっている問題だと思う。
今まで高いお金を払っていた音楽が、無料で聞けるようになった。
そんなときに今までCDを出していた業界はどうするか、と言う問題。
そして他方、初音ミクの音楽を作る人、画を描く人、3Dモデルを作る人には収益を得る方法が(基本的には)無い。

Supercell 初音ミク CD front / hildgrim

※CDを出している人もいる。この界隈が大好きな友人に言わせると「CDを買うのは投げ銭だと思っている」とのこと。
これも大問題。
音楽を聴く人だけ一方的に得をして、業界全体がフリー化することでお金が回らなくなっている。
既存のCD文化から、音楽がネットに行くのは構わない。
色んな人が一つの曲に対して関わるのは構わない。
しかし、良い音楽を作る人には正統な見返り(リターン)が無ければ、それはその人のモチベーションにも繋がるし、
良い物を作るための時間や設備にお金をかけられないということにも繋がる。


現在この界隈では、どうやって適切な収益を得て、それを分配するかに頭を悩ませているらしいが、
それはそのまま、ものづくりの業界にも当てはまる問題で、解決策だと思う。

でも、楽しそう

まとめると、電気制御・モーター制御に難はあるが、
家で出来るものづくりって、楽しそうじゃないだろうか。
電気制御に関しては、ソフトとハード、両面で改善が必要だと思う。
ハードは簡単に接続できるモノ、ソフトは簡単に設定できるモノ。
小型で安く、と言う意味では「35ドルパソコン」こと「Raspberry Pi(ラズベリーパイ)」が今一番近いだろうか。
・リンク →Raspberry Pi(ラズベリーパイ)
こいつ用の箱と、設定ソフトと、簡単に接続できるモーターがあれば良い。


個人で出来るのなら、例えばこんなもの、作りたい。

  • 時間制御や温度制御で、家の窓を開け閉めするユニット。雨が降ったら自動で閉めてくれる
  • 階段を落ちながら掃除するお掃除ユニット

こんな時代になれば、「アイデアを出すだけ」の人だって、必要とされるかもしれない。
受けが良ければ、ちゃんとしたモノをどうぞ企業が作って下さい。
「日本はものづくり力」というのなら、全国民で一致団結して新商品アイデアを出せば良いじゃ無いですか。
どうかな?こんな未来の日本。