ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

ボードゲーム・3Dプリント作品・3DCG制作を行う「ペンとサイコロ」のブログです。公式サイトはこちら→http://penanddice.webcrow.jp/

ローカル線の思いで

竜ヶ崎線に乗ったのは、震災の日だったので良く憶えている。

仕事の出先で罹災、そのまま帰宅難民になり、
運良く親族の家に転がり込んで翌日帰ってくることが出来た。


そんな震災直前の写真を見て思うこと。
「ローカル路線って、儲かるの?」

ローカル路線って、儲かるの?

JR西日本の社長も記者会見で言ったらしい。

JR西日本佐々木隆之社長は5日の記者会見で、赤字ローカル線の一部を廃止し、
バスに転換する方向で検討に入ったことを明らかにした。
廃止の検討対象にしている路線名は明らかにしなかった。
影響のある地方自治体には、廃線とバス転換を受け入れるかどうか既に打診しているという。


JR西、赤字線をバス転換SankeiBiz(サンケイビズ)2010.4.6 05:00
・リンク → JR西日本の社長が記者会見で赤字ローカル線の廃止を言及 - とれいん工房の汽車旅12ヵ月
(サンケイビズのページがなくなっているため、参照先より転載)


やはりというか当然というか、地方のローカル線は乗降客数も少なく、赤字路線が多いらしい。
たま駅長で有名になった和歌山電鐵貴志川線貴志駅も、赤字で廃線寸前だったし、
東北のローカル線も赤字対策で「社長公募」し、話題になっていた。
・リンク → 秋田内陸縦貫鉄道"公募社長"が内定 - 「観光路線として集客できる鉄道に」 | マイナビニュース

喵喵 和歌山電鉄的招牌之二 / 海爾渥 / Hairworm

あれも今はどうなっているのか。

赤字の理由

鉄道事業は乗客数が見込めれば成り立つが、見込めないときのロスが非常に大きい。
当たり前の話だが、なぜかしっかり考えたことがなかった。
鉄道会社の友人の言を借りれば、
「鉄道は線路全体に費用がかかる」
なるほど、鉄道「事業」の本質を突いている。
バスにしろ、飛行機にしろ、発着場のコストと車両(機体)コストはかかるが、空や道路のコストは負担しない。
ところが鉄道はその経路全体にコストを負担しているのが他のシステムと決定的に違うと。

Railways / macieklew


素人目には土地の取得や建設、維持管理コストは大きいかと思ったが、
プロに言わせるとそれ以外にも大きな要因があるとのこと。
それは「税金(固定資産税)」
なるほど!

例えばJR西日本の決算資料を見ると、2011年3月期の単体収益が8286億円。
これに対して線路使用料が251億円、固定資産税が258億円、足し合わせると509億円
もちろん土地にはホテルや商業施設もあるので一概には言えないが、
維持管理コスト以外にこれだけの費用が放っておいても流出するのは企業としては大きい。

では鉄道がバスになったらどうなるのか?

では赤字のローカル鉄道がバスになったらどうなるのか?
仮に、現在の鉄道路線を全部無料で国に返上し、その部分に道路を作ったとしてみる。
まず固定資産税や線路使用料、維持管理コストががさっと解消される。
都会ではバスは「時間が読めない」ということが問題になるが、
客数が少なくて問題になるような田舎では道路の混雑を考える必要がないので、定刻運行が出来る。


また災害時にも強い。
線路しか走れない鉄道は、鉄道が被災すると動けないが、バスなら生きている道路を探して自由に迂回できる。
実際に、鉄道が運休するとバスで代替輸送を行っている。

Line #10 Bus - Cavtat and Dubrovnik 12Kr (€1.64) 40min / kawanet

困るのは誰か?

利用者にバスで鉄道同等のサービスを提供できるとして、鉄道会社はコストを大幅に削減できる。
郷愁の話は置いておいて、では鉄道がなくなって困るのは誰か?

固定資産税(こていしさんぜい)は、1月1日時点に保有している固定資産について課税される地方税である。

Tax / Images_of_Money

・リンク → 固定資産税 - Wikipedia


あ、地方自治だ。
最初の記事をもう一回読むと、「影響のある地方自治体には」とある。
影響って何の影響か。
知識がなければユニバーサルサービスがなくなったら、地方の住民の足がなくなる!」と思ってしまうが、
いやいや、バス輸送で足は十分に確保できる。
影響が出るのは線路が走っている自治体の税収
地方自治体の税収の43%は固定資産税らしい。(平成18年度)
新幹線が走ると地方が潤う、という話は昔からあったが、
駅がなくても税金のおかげで地方が潤う構図は何十年も前から変わらないらしい。

「隠れ地方交付税

専用線を使っているため、乗り心地や速度でバスは鉄道に追いつけない。
それは分かる。
分かるが、全ての赤字路線が必要だとも思えない。


ここからは完全に推測だが、
国鉄時代から赤字路線は減ったとはいえ、まだまだ田舎の赤字路線は存在し、
JR全体では恐らく1000億円規模のお金が固定資産税として地方に配分されているのではないか。
大阪市営地下鉄がドル箱の御堂筋線で儲けを出して、他のほとんどの路線で赤字というのはよく言われるが、
鉄道、特に規模が大きく地方路線の多いJRでは、
都会での収益を地方にばらまくポンプの役目を担っているのではないか。
つまり「固定資産税」という名を借りた、「地方交付税」なのではないか?


その現状を受けての上のJR西の社長発言だとすれば、個人的にはバス化に賛成だけどなぁ。
中央から地方のポンプ役を、わざわざ国鉄時代からの債務を抱えるJRがやらなくてもいいでしょうに。