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ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

ボードゲーム制作を行う「ペンとサイコロ」のブログです。公式サイトはこちら→http://penanddice.webcrow.jp/

シン・ゴジラに心を抉られた【ネタバレ無し】

シン・ゴジラを見てきた。
面白いとは聞いていた。
「あれこそゴジラだ」
「あれはエヴァだ」
「あれこそ庵野秀明作品の最高峰」
なんて声を細切れに聞いて見に行きたくなったし、
「ネタバレ禁止」
という声も「ゴジラで今更ネタバレもなかろう」と思っていたからむしろ気になった。

 

結論からいうとそれは全て当たっていたし、
見ていて興奮が止まらなかったが、むしろ見て一日経って、あの興奮が収まらない。

 

正直、見た後は「面白かった」とは思ったが、
「これは十年に一度の傑作」かと言われると「そこまでの物か?」と思った。
だってまぁ、棒読みの台詞とかちょいちょい混じってるじゃないですか。
特撮もアラがあったり。
(今考えるとあのチープな場面はワザとな気がしてきた。恐ろしい)
いや、それも含めて楽しいんだけど。
でも、一日たって、あの凄さがだんだんと分かってきた。
それは自分の理解力不足もあるんだろうけど、とにかく今はあの作品は凄いと思える。

 

「マッドマックス 怒りのデスロード」も凄かった。

(ここはやはり、タイトルは日本語版で)

あれは文句なく、一回見て「これは歴史に残る映画だ!」と思った。
でも、翌日になると普通にスッと消えていた。
シン・ゴジラ」はそういう映画じゃない。
見た後で、ガッツリ心に傷を残してくれた。
それがじわじわと、噛みしめるように凄いと納得していく。

 

これは、あれだ。
エヴァを見て、みんなが「オレなりの考証」をしまくった、あの感じだ。 

 クソ、オレは、また庵野秀明にやられたのか。

 

あそこも、あそこも、あそこも凄かったし、結果として面白かった。
あそこは、もしかしたらああいうネタだったのかもしれない。
そういう細かなネタを、何の説明もなくとにかくバラ撒いて投げっぱなしにしていく。
我々下々は、それを一つ一つ拾い集めてああだこうだ言い合う時間なのだ。
それはイクニ作品やガルパン劇場版がそうだったんだろうけど、
イクニ作品はどうも合わず、ガルパン劇場版はついに見に行けなかった。
だから自分にとってこれはそういうのすっ飛ばして、久しぶりに「エヴァ庵野秀明がまたやってくれた」だった。

 

映画に限った話ではないけど、良い作品の一つの形は「世界の見方を変える」ことだと思う。
(もちろんそれが唯一ではない)
その意味では、ポケモンGoシン・ゴジラも名作だ。
ポケモンGoは自分の住む町に「ポケモンがいる場所」「アイテムをもらえる場所」という新たな価値を作って、家族で散歩するきっかけを作った。
シン・ゴジラは、都会を移動するだけで、その圧倒的なインフラの完成度に感謝を溢れさせてくれた。

 

シン・ゴジラの登場人物は極端な話、個人名が無くたっていい。
それぐらい皆は「役割」でしか動いていない。
それぞれにキャラクターはあるし、それぞれに本当にいい演技をしてくれているんだが、何が凄いって徹頭徹尾、誰も「役割を超えたこと」をしていない。
シン・ゴジラの主人公は誰か?」と聞かれれば自分はよく分からない。
そこが「シン・ゴジラ」と「エヴァ」を分ける一番の違いだと思う。

 

作中で、自分が一番印象的だった台詞は「仕事ですから」
エヴァで印象的だったのが「逃げちゃダメだ 逃げちゃダメだ」だったのに比べると、作品自体が人間的に成長した、大人向けの作品なんだと思う。

 

作中は台詞が多いし、早口だし、小難しい。
さて、果たしてこれは子供が見て面白いだろうか。
それは自分には分からない。
でも、ぜひ見て欲しい。
「大人は何をやっているかよく分からない」
そうかもしれない。
「大人って言っても、一人じゃ何もできない」
そうかもしれない。
「なんか難しいことばっかり言って」
そうかもしれない。
でも、
大人もくるまも、でんしゃも、じえいたいも、みんな働いてる、それは少なくとも、この作品を見て、分かってくれると思う。
 「よくやってくれた」
 「いえ、仕事ですから」
あの映画を見て、消防隊や、森ビルや、化学工場や、JRや、自衛隊に入りたいと思う子供たちは絶対にいるだろう。
それはナウシカを見て工学の道を志した私のように。
子供向けは、子供のために作る物だけじゃない。
大人のために作った恐ろしいものを、柱の陰からのぞき見ることこそ、ある意味で真に子供の将来のためになる作品だったりする。
シン・ゴジラは、そういう意味では本当の子供向け作品なのかもしれない。
いや、エヴァはあの主人公、碇シンジの年齢に近い中高生の心を鷲掴みにした。
シン・ゴジラも、実はそうした親世代に反感を抱きがちな、中高生に向けた作品なのかもしれない。
その意味では変わったのは庵野秀明監督ではなく、受け取る自分の年齢が変わったということか。

 

それは、あれだけゴジラが暴れまくっても、死者を直接描いていないことにも現れているだろう。
直接の表現があれば、誰でも分かる。
でも、明らかに人が居るであろう建物をゴジラが破壊した時、その恐ろしさは想像力で補う事になる。
だから、子供も見られる。
会議室で淡々と語られる数字の恐ろしさを実感するにはそれなりの人生経験が必要で、だからこそ恐ろしい。

 

良い作品は自分を映す鏡でもある。
あれだけ情報を濃密に詰め込んだ作品だ。

どこが目に入るかはそれぞれに違うだろうし、それぞれが違う感想を持つ事だと思う。

自分が大人になって、仕事を持って、家族を持ったから、この感想なんだろう。
あなたにとって、この作品が面白いか、それは分からない。
でも、あなたの中にある物を映して、抉り出してくれる作品である、と思う。
個人的には、是非、観に行って貰いたい。