ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

ボードゲーム・3Dプリント作品・3DCG制作を行う「ペンとサイコロ」のブログです。公式サイトはこちら→http://penanddice.webcrow.jp/

創作における日本らしさのススメ

「日本のゲームらしさ」とは、「狂ったところに金を掛けること」という記事がありました。

実際に物量で勝てなければマーケティング的にも一点突破にならざるを得ない部分があって、昔からそうした「色モノ」を作ることにも消費することにも慣れている日本の文化は、それを生かすべきと言うのは正しい意見だと思います。

 

今回フランスのコルマール(Colmar)を観光してきましたが、ここは「ハウルの動く城」のモデルのため、ファンの聖地巡礼地としても有名だそうです。

ハウルの動く城 [DVD]

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町並みを見れば確かに「見た事ある!」と言いたくなる景色が並びますし、

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ハウルの居城のモデルとなった建物もあります。

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f:id:roy:20160416114610j:plain※同じ建物の両面ですが全く違う外観

ハウルの動く城はフランスでも人気だそうですし、イタリアで「ルパン」といえば「ルパン三世のことに決まってるだろ」と現地の人に言われるぐらい人気だそう。

(この辺は実際に現地の人に確認していないので伝聞ですが)

 

あと、スイスの本屋で「ハイジ」のゾーンがありましたが、絵は思い切りアニメのハイジでした。

アルプスの少女ハイジ リマスターDVD-BOX

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とはいえ、現地の人が納得するレベルのモノを作れるのはそれだけ現地を十分に研究をした、しかも天才でなければ難しいと思うわけです。

少し歩けばこんな建物の並ぶ地域に住んでいる人たちを納得させられるモノが作れるか、と考えると、やはり多少の知識で書いても「なんちゃって」になるだろうなと。

f:id:roy:20160416104416j:plainコルマール駅舎

 

逆パターンで説明するとわかりやすいかもしれません。

現地の日本レストランがこちら。

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「NAGOYA(名古屋)」ですよ。

提灯を掲げて「名古屋!」って叫ばれても。

このほか見かけた店名は「Oishii(美味しい)」「Sushi go(寿司Go)」など。

少なくともこのまま日本に持ってきても受けませんよね?

この微妙にズレた感じが、自分が欧風デザインを作っても出るだろうと思うわけです。

 

もちろんガチガチに正しいことがいい訳ではありませんから、ゲームなりアニメなり漫画なりのエンタテインメントとして成立させるにはデフォルメ・誇張は必須です。

でも、そのベースに知識や経験があるか無いかは大きいと思うわけです。

例えば世界的にヒットしたNARUTOは明らかに「間違ったニンジャ感」を輸出しましたが、じゃあ あれを他国で作れたかというと、やはり日本人にしか作れなかったと思うわけです。

 

ボードゲームなら例えば「TOKAIDO(東海道)」は「日本好きのゲーム作家の作った和風作品」として有名です。

これなんかかなりよく調べて作っていると思いますが、それでも多少のおかしい部分は残っています。(「TAKENOKO」に比べりゃだいぶん「日本」らしくなりましたが)

もちろんそれがゲームのおもしろさを阻害しているわけではありません。作品としては文句なしの名作です。

というか私ごときがアントニア・ボウザ御大を語るなんぞおこがましい。

東海道 (Tokaido)

東海道 (Tokaido)

 

 

ぶっちゃけ日本だけを市場として考えるなら、どんなファンタジーでも欧風作品でも問題ないと思います。

また、ボードゲームに限って言うなら、後からフレーバーを載せ替える手もあります。

しかし、遠く離れた国から見れば、日本の日常こそが不思議で珍しい、ということは知っておいて良いかと思います。

例えば中国人が日本のアニメを見て、「なんで赤信号で車が来ていないのに、みんな信号待ちしているんだ」と驚愕するとか。(以前に住んでいた香港では、信号待ちするのは日本人観光客ぐらいでした。今は違うみたいですが)

「Senpai(先輩)」はアメリカのアニメ好きの間では「自分のことに全然気づいてくれない人」という意味でなぜか使われているそうです。そもそも「告白」や「部活」が存在しないため理解できない、みたいな話も聞きます。

 

私はボードゲームを作る際に、「和風」にこだわっていますが、それはやはり日本人なら、日本のことは他の国の方より詳しいだろうと思うからです。

要は勝てる市場で勝負している、ということ。

そして、それをよりマニアックに突き詰めた方がウケはいいです。

私の作品で言うと、見た目の反応が良いのは「三千世界の烏を殺し、主と朝寝がしてみたい」や「かいちん」

ゲームらしさのない、文字を全面に出すタイトルが受けているようです。

(どちらも箱絵では、わざとパッとゲームと分からないデザインにしていますが、むしろそれが受けています)

ゲーム性と箱絵のバランスが取れたのは「陰陽賽(おんみょうさい)」でしょうか。

こちらは中華圏での反応が良く、デザイン面での理由として「読めるから」というのがあります。(タイトルが全て漢字)

陰陽道は日本で成立したのですが、陰陽思想は中国で今でも大切にされます。この「なんとなく分かる」気がするのも良い模様で、その何となく分かる中での陰陽道と陰陽思想の「ズレ」が新鮮なようです。(二つは名前が似ていても全く別物)

またゲーム性ではドイツ含め欧米で好反応。(BGGでも8点を頂いています)

それぞれ受けるポイントが違うのは色々と勉強になります。

もちろんこうした「何が受けているか」を知るには調査も必要です。BGG、直接のコンタクト、委託店舗からのヒアリング、等々。

逆に反応が今ひとつなのがコロポックル 見~つけた!」

子供向けからスタートしているので ぐるっぐ さんに箱絵を描いて頂きましたが、イラストの箱絵は目新しさがないのか、反応をほとんど頂きません。

やっぱり競争の激しいところに飛び込むのは難しいなぁという印象。ゲームとしては大人も遊べるように作りましたし、実際に子供のウケは非常に良いのですが、それを訴えるデザインに出来ていないのはマーケティングと自分のデザインの力不足としか言いようがありません。


ということで「ニンジャ」「サムライ」以外にもまだまだ日本の魅力はあります。私のゲームではそれぞれ「志士・遊郭(≒ゲイシャ)」「陰陽師」「コロポックル」「和菓子」がテーマ。ゲイシャ以外はまだ海外ではメジャーじゃないですよね、たぶん。

「剣と魔法のファンタジー」もいいのですが、新しい「和風デザイン」を切り開けばもっと可能性は広がるハズです。

もちろんフレーバー(雰囲気・テーマ)でなくゲームシステムで独自性が出せれば一番ですが、「日本と言えばニンジャ・サムライ」な作品が日本発でも多いのはもったいないと思う昨今。もっとマニアックなネタをぶっ込んで行ってほしいなと思います。

「艦隊」や「日本刀」の成功を見て、「やられた!」と思うことが、創作する人間にとっては大切なんだと思います。

 

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こういう発想!

さすがだなぁ。やられたなぁ。

ほら、日本在住の、日本人も、負けてられないって!