アイデアの出しかた
ブログを書いていると「良くそんなネタが出ますね」と言われるが、ネタは出し続けると出せるようになる。
これは経験則。ブログでも仕事でも同じ。
仕事では企画もやれば販促案を考えることもあるが、「考える」という作業は基本は同じだと思う。
そのポイントは、日々の作業では「質より量」が大事だということ。
アイデアの出し方
アイデアを出すには、古くは「馬上・厠上・枕上」と言われる。
「逍遥(散歩)」も良いと言われる。
京都には、哲学者が思索を深めたことが由来の「哲学の道」もある。
哲学の道 京都の紅葉 / norio.nakayama
では実際に、アイデアを出すにはどうしたらいいか?
哲学の道を散歩したら自分もアイデアが浮かぶようになるのか?
個人的な意見だが、「考える」だけではアイデアは出ない。
自分が考える際に行っているステップは4つ。
心理学とか生理学的にどうかは知らないが、科学やビジネスの成功事例を見ていると、
結果的にこのステップを踏んでいることが多いのと、
他にこの手順でまとめた資料を見たことがないので、「オレ流」アイデアの出し方をまとめてみる。
(あくまで個人の感想です)
なお、ここでまとめた手順は、アイデア出しや戦略立案など単純な答えのない問題の場合とする。
日々の仕事や簡単な問題なら、ここまでのステップは必要ないので
「考え中なので一日時間を下さい」とか言い訳に使わないように。
STEP1:情報収集
アイデアを出すために「とにかく考えても、出てきません」という人がいるが、これは当たり前。
日本だけでも一億人もの人がいて、たくさんの人が、世界を少しづつ良くするために頑張っている。
そんな中で、自分が考えるだけで新しいことが出てくるわけがない。
アイデアを出すなら、まず現状の把握と、他のジャンルからのアイデアを貰ってくれば良い。
良いアイデアを貰ってくることは、別に何も悪くはない。
例えばサイクロン掃除機でダイソン社は有名になったが、
サイクロンによるゴミの収集自体は、業務用では昔からあった方式で、何も新しくない。
Dyson カーボンファイバータービンヘッド DC36THCOM
- 出版社/メーカー: Dyson (ダイソン)
- メディア: ホーム&キッチン
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アイデアの源泉には、まず「家庭用掃除機の大きさと要求性能」と「サイクロン式集塵機」という知識が必要。
あとはこの組み合わせになる。
考える前に、とにかく手を動かしてありとあらゆる所から情報収集をしなければいけない。
昔と違い、ネットで世界中からの知識は簡単に手に入るようになった。
まずは表面的な知識を手に入れ、その業界や技術に詳しい人の声を聞く。
ネット全盛の時代にあっても、文字で読むことより人に聞く方が何十倍も効率よく知識は得られる。
STEP2:考える
必要と思われる情報が集まったら、ここで始めて考える作業に入る。
考える際には、本当に考えるのでも良いし、紙と鉛筆、Excelで筋が通るまで集まった情報を整理しても良い。
ここで考えて答えが出るならそれまでの問題だったと言える。
この段階でどこまで深く掘り下げて考えられるかがポイント。
情報を集める訓練もちろん必要だが、
「自分の集中できる限界まで考える」というのは結構難しい。
「下手の考え休むに似たり」
というが、高度な思考を休み無しで行うというのはものすごく難しい。
人間の集中力は90分しか持たないとか、二時間しか保たないと言われるが、
自分の場合は本気で集中したら60〜90分の間だと思う。
(作業を一切含まず、考えただけの場合)
Thinking / wadem
ただ、この時間を集中して本気で考え抜く、というのも訓練しなければ難しい。
STEP3:休む
本当に限界まで考えて答えが出ない、と言う場合は、休む。
このフェーズ(段階)こそ、自分は一番大事だと考えている。
ビジネス書などではこれを一つのフェーズとして捉えている本にほとんど出会ったことがない。
本気で考えるなら、計算して、意識的に休むフェーズというのはとても重要だと思う。
ニュートンのリンゴや、アルキメデスが風呂で浮力の原理を見つけたときなど、
日常生活の中で新発見をしたという逸話は多い。
Newton & Apple / Cea.
こういった話の中では、「日頃から考えていたからこそ、日常の風景に発見を見いだした」といわれるが
実際にはこの発見時にはその原理究明からはアタマが離れていた可能性の方が高いのでは無いかと思う。
脳は「考える」という高度な情報処理だけでなく、記憶の整理という面でも高い能力がある。
my brains - let me show you them / Liz Henry
記憶には瞬間的な記憶から短期記憶、長期記憶など色々な物があるが、
この記憶の整理も日々行われているとされる。
新発見は、この整理の瞬間にされていると思う。
たくさん考えて、限界と思うところまで追い詰める。
そして、その段階での結論(途中経過)を自分のなかで反芻する。
そこまで来たら、一旦その問題からは離れる。
もちろん勝手に答えは出ない。
でも、アタマが記憶を整理するには感覚的には一昼夜が必要。
その間は、「そのこと以外」をやる。
仕事だって何だって、日々やることはいくらでもある。
この間は別の仕事をやっつけていれば良い。
他のことでまた思考を集中させては意味が無いので、作業的なことをやれば良い。
STEP4:もう一度考える
適度に寝かしたら、もう一度考える。
そうすれば、思考をもう一歩進められる。
場合によっては、それで結論が出る。
このときのテクニックとしては、自分なりの「制限」を設けること。
例えば駅から家まで歩く10分強だけ考えるとか。
情報も集まっていて、一度考えている内容なので、これ以上論理的に考えても恐らく結論は出ない。
でも、アタマの中で新しい繋がりができているかもしれない。
この段階ではその「繋がり」に賭ける作業なので、論理的に順を追って考えるのではなく
直感を閃かせることになる。
直感は十分な情報と、整理された知識と、非論理的な思考が両立したときに出てくる。
十分な情報はSTEP1で、整理された知識はSTEP2〜3で作られる。
あとは、論理的ではなく考える状況を作れば良い。
論理的に考えられない状況はいくつかの要件がある。
まず行動を制限すること。
メモ書き出来ない散歩中は、複雑な式やフローチャートを書けないので、この要件を満たす。
次に、論理的に組み上げる余裕が無くなるよう、制限時間を設ける。
こう考えると、「決まったルートを散歩する」が思考にとっていかに良いかが分かる。
74/365 / Drongowski
また、ルートは新発見のない、「馴染みの散歩道」が良いことが分かる。
「哲学の道に来たから、自分もなにか思い浮かぶのかな」は根本的に間違っていることが分かる。
それなら毎日歩いて通勤する方が余程良い。
考える「癖」
こうしてネタを考えることは、やはりある程度訓練だと思う。
出てくるネタの指向性やレベルには、個性も能力もある。
ただ、数は訓練によって確実に増やせる。
ブログはその訓練に良いが、実際にはネタは何でも良い。
仕事ならメールマガジンのネタでも、朝礼発表でも。
「もうネタがありません」という人には、そこからが勝負だと言いたい。
結局新規事業のネタなんて百に一つ、千に一つだから、
質の前に、まず数を出せるかが大事だったりする。
これはある程度クリエイティブなデザイン職では似たような物ではないだろうか。
考える訓練というと、その「質」に目が行きがちだが、
特にそれを職業とする場合には、その「スピード」や「量」の方が重要度が高いことも結構多い。
この方法はあくまで自分流だが、各人が自分なりの考える手順とペースを作れれば、
アイデアが出ないと苦労としている人達の生産性が上がり、
それぞれの苦労も減るんじゃないだろうか。
ちなみに「質より量」という考え方を同じように薦めた本としてはこの本がある。
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この本では、アイデアを出した後にもかなり突っ込んで触れられていて、それも面白い。
「アイデアはシンプルな方がよい」
「シンプルなアイデアほど、それを完成させるのは難しい」
「シンプルなアイデアを完成させると、すばらしい物ができる」
出ている事例も、自らの体験に基づいていて、ジャンルは違えど参考になる。
「アイデアが出ない」「ネタが無い」という方は一度読まれてみては?