説明する力の基礎体力
最近別マガ(別冊少年マガジン)の編集長である通称「班長」のツイートが話題。
先日は「新人賞に応募しても箸にも棒にもかからない人は『画力』が足りない」
という発言が色々なところからの反響を呼び起こしていた。
・リンク → 別冊少年マガジン編集者さんの漫画家志望の人への画力の話1/2−Togetter
・リンク → 別冊少年マガジン編集者さんの漫画家志望の人への画力の話1/2−Togetter
いや、確かにそうだろうな。
「絵の上手さ」ではなく「画力」。
最低限のデッサン力と、
別冊少年マガジン @betsumaga
「表情の描き分け」。大事です。45ページの読み切り漫画なら、230コマくらいは全部であります。
1コマとて同じ表情を描かないように気をつけることです。
表情のパターンが5パターンくらいしかない新人さんが多いですよ。
(何度も言いますが、読者の皆さんが、未知の世界のお話ですよ)
まぁ、大手の編集者なんて、それこそ始めて持ち込みをする高校生とか、キッツいレベルの持ち込み作品も
たくさん相手にするんだろうからな。
その上での発言ということで。
マンガの「画力」って、僕らの何だろう
別マガの班長が提示した「画力」という考え方は、それぞれの職業であると思う。
営業なら相手のことを理解しようとする能力かもしれないし、
弁護士や医師ならまずは最低限の業務知識かもしれない。
高いレベルでやっていくなら様々な能力が必要だが、その道の一年生にまず必要な能力、
これをはっきりさせるのは大事。
仕事の中で人前でのセミナーや、研修、営業に同行しての説明・フォローを数多くやっている。
セミナーは三〜四人から数百人までの会場でやったことがあるし、
通訳を付けての勉強会もやったことがある。
この説明する仕事の中で、共通して大切だと感じるのは「言い換え能力」。
説明する職業の人、先生だけで無く街頭での実演販売、インストラクター、セールス、なんでもいい。
その「説明する能力」の基礎体力となるのは「どれだけの言い換えが出来るか」だ。
「ビデオのようによどみなく話す」ではダメ
セミナーであれ、プレゼンであれ、人に説明するには事前の練習が大切。
スティーブ・ジョブスは「プレゼンの達人」として有名だが、
あれだけ毎回プレゼンを行っていても、発表の前には100回以上練習を繰り返していたという。
Steve Jobs Speaks At WWDC07 / acaben
ただ、練習は大事だが、練習した内容をそのままやっても相手には伝わらない。
よく練習した上で、その人にあわせて言葉を選ぶ、表現を変える必要がある。
練習していれば、話す内容に余裕が出来る。
話している間に「この言い回しはどう言えば分かりやすいかな?」と考えることが出来る。
そのための練習だと思わなければいけない。
新人に入念に練習をさせると、実際の訪問でお客様が聞いてもいないのに、憶えた内容を全部話してしまうことが多い。
まぁ、結構お客様も苦笑いしながら聞いて頂けるんだが・・・
説明する能力を高める方法
では説明の能力を上げるにはどうしたら良いか。
ちなみにマンガにおける練習法は、別マガの班長によると こんな感じらしい。
別冊少年マガジン @betsumaga
オススメの表情の練習をお伝えします。原稿用紙を用意します。
(練習用は裏も表も使うんですよ。もったいなから)原稿用紙を8分割、もしく16分割しましょう。
そして右上にキャラクターの「素の表情」を描きます。そして左下に「号泣の表情」を描きます。
別冊少年マガジン @betsumaga
そして、その間の14個(6個)のマスを埋めていく。
だんだん左下の号泣の表情に近づいていくように。
すると泣いている表情だけで15パターンできました。
それを笑っている。怒っている。もやります。
慣れてくれば左下に描くのは「すごくバカにしている表情」や「泣き笑いしている表情」もできます。
なるほどなぁ。
確かに話術の練習も似たところがある。
人に説明する技術を練習したければ、「言い換え」の練習をしたら良い。
「ボキャブラリーを増やす」ということなんだが、ただ単語を増やすということじゃない。
説明する相手は誰なのか。
例えば新人研修で、電気回路の説明をする時。
工学を専攻した大学院出身者に説明するときと、文系の大学出身者に説明をするときでは、
同じ説明ではダメ。
例えば工学系の人間なら「LEDの光強度は距離の二乗に反比例して減少する」と言えば通じるところが、
文学部の人間に説明するなら
「LEDからの光の強さは、距離が離れると急激に弱くなります。
距離が倍になれば半分、ではなく、距離が倍離れれば、半分の半分、つまり4分の一になります。」
ぐらいの説明は必要になる。
LED LDR DAC PWM / wstryder
言い換えを行うには、それぞれの単語や原理の理解をより深める必要があるし、
対象の知識、理解度を知らなければいけない。
言い換えの練習は、この総合的な練習に役立つ。
これは「どんな喩えをしたら分かってもらえるか」という練習にもなる。
例えば文系の新卒を対象に研修をするなら、一次方程式(y=ax+b)なら大丈夫だが、
二次方程式(y=ax^2+bx+c)はスッと入らない。
では放物線や双曲線をどう説明するか?
こういう予備知識や練習の積み上げが、どんな対象者、お客様でも臨機応変に説明できる自信を作る。
「誰にでも分かる説明」の最終形
この「みんなに分かりやすい表現」は最終的には商品のメニュー項目へと繋がる。
menu bar icon / egackr
メニューを見て、「この設定をいじったらこうなるんだな」「このボタンを触るとこう動くんだな」と
思わせて、間違いが無い名前になっているか。
これはわかりやすさの最大公約数を探す作業、と言っても良い。
この誰にでも直感的に分かる最たる物は「ピクトグラム」だろう。
機能が絵で表現され、老若男女はおろか、国籍を問わず理解できる。
人のマークならトイレ、「i」ならインフォメーション、飛行機なら飛行場。
これならだれでも分かる。
素晴らしい発明だ。
自分はまだまだこのレベルには達していない。
初めて見た人がマニュアルを見なくても分かる、そんなメニューが作れる人間になりたいなぁ。
priority seat / tinisanto