台所の進化論
台所は不思議。
家庭なのに危険な物が充満している。
- 1700℃にもなるコンロの炎
- 鋭利な刃物
- 強力な化学薬品である洗剤
- 水が短時間で沸騰するマイクロ波発生装置(電子レンジ)
では家庭内の事故は台所が多いのか、というとそうでもない。
・リンク → くらしの安全情報サイト|家庭内における不慮の救急事故
東京都のデータだが割合は全国でもそんな変わらないだろう。
意外にも家庭内で一番事故が多いのは台所でも風呂でもなく、「部屋」。
数字は「事故」の割合なので病気などは含まない。
重傷患者では風呂の割合が高くなるが、台所は2.3%と低い。
コンロや刃物がたくさんあっても、使う側に知識と経験があれば意外にも事故は起こらないことがわかる。
調理道具、ヤベェ
突然何を言い出すかというと、
「調理器具って冷静に考えると危険だよね」ということ。
安全が叫ばれる中、もし、家庭にコンロが無い世界で
「おいしい料理のために家庭にコンロを」なんて提案しても
「炎が直接出る装置なんて家庭では危険」とかで受け入れられないんじゃなかろうか。
逆に言うと、しっかり啓蒙すれば、危険度があっても使ってもらえる可能性は高い。
台所は生活に必須な環境ではあるけど、一番趣味性・娯楽性の高い領域でもある。
「今までより簡単」、「今までよりおいしい」料理ができるなら、
今までと全く違うカテゴリ調理器具が提案できるかもしれない。
新しい調理装置・電子レンジ
今では当たり前だが、「本質は危険だが、新しく便利な調理器具」といえば電子レンジがある。
日本での民生品の発売は1963年(昭和38年)。
今では電子レンジを使用することを「チンする」というぐらい浸透している。
電子レンジは、危険
電子レンジは、原理的には「マイクロ波発生装置」になる。
(この名前じゃ売れなかっただろうなぁ)
実際に英語では「a microwave oven」、「a microwave」だけでも通じるらしい。
ちなみに「チンする」にあたる英語は「nuke」らしい。
確かに辞書にも書いてある。
nuke[nuke]
*1[名][形]
1 核兵器(の);水爆(の).
2 原子力発電所(の).
━━[動](他)
1 …に核攻撃を加える.
2 *2…をぶちのめす.
3 *3…を電子レンジで料理[加熱]する, 「チンする」.
・リンク → goo辞書:提供元「プログレッシブ英和中辞典」
マイクロ波は水を振動させる周波数で出力されている。
だから、電子レンジに入れた物は、その中の水分が主に加熱される。
例えば金属ではマイクロ波が表面で反射したり、先端部で放電して火花を出す。
金属や生物を入れたらダメ、というのは既に「一般常識」だが、そんな危険な物が家庭に普通にあるのは驚き。
その浸透には長い時間が
家電別の普及率を見ると、電子レンジの普及曲線はゆっくりしていることが分かる。
・リンク → 図録▽主要耐久消費財の世帯普及率推移
電子レンジより遅いのはエアコンと自動車ぐらい。
この二つは価格帯が高いことを考えると、一般家電では最も普及に時間がかかったと言っても良いぐらい。
やはり台所用品は啓蒙すればしっかりと使ってもらえるが、それまでには長い時間がかかることが分かる。
一家に一つ、デュワー瓶
さて、そんな台所に新しく提案したら面白いと思ったのは「液体窒素」。
日経サイエンスによると、一部のレストランでは液体窒素で急冷したバターなどを砕いて使うらしい。
Liquid Nitrogen dessert / TheGirlsNY
(写真は実際に液体窒素を利用したデザート)
液体窒素の温度は−196℃。
急冷することで組織を壊さずに砕くことができるなど、食感などに大きく影響するらしい。
また柔らかい物も、冷凍して破壊しやすくなるのは、バラを砕く実験で見たことがある人もいるはず。
Shattered flower / benjaminasmith
(写真は冷凍実験で砕かれた花)
窒素は空気の78%(体積比)。
原料は周辺の空気で良いが、冷却のために大量の電力と圧縮装置が必要。
家庭で作るのは現実的ではないので、どこかで生産して魔法瓶で持ってくることになる。
IMG_4923 / David Boyle in DC
魔法瓶はかなり保温性が高くなければ、液体窒素が無くなるだけでなく、凍傷や酸欠の危険もある。
そこで、今の家庭用の物よりもかなりしっかりした断熱容器が必要になる。
JOH_9319 / star5112
逆に言うと大型の電気装置がなくても、知識さえあれば家庭でも気軽に導入できるのが液体窒素料理。
魔法瓶メーカーは最近マイボトル需要で景気が良いらしいが、
軽量・安価だけでなく、ハイエンド機器を作る事になれば収益性が大幅に向上する。
「液体窒素で作る料理教室」
タイガー魔法瓶さん、象印さん、海外勢と死闘を繰り広げる魔法瓶市場とは別に、
ハイエンド市場として検討してみては、どうでしょうか。