幸田露伴旧居「蝸牛庵」(博物館明治村)
岸部露伴(JOJOシリーズ)じゃないです。幸田露伴。
幸田露伴は住まいをあちこち変え、カタツムリのようなものだと住まいを「蝸牛庵」と称した、とのことなので、ここは「蝸牛庵のうちの一つ」とするのが正しい気もしますが、それはさておき。
あと著名人の家は「ここに2年住んでいた」とか短期間住んでいる家がこうして残っていることが多い気がするんですが、昔の人はそんなに引っ越しが多かったんでしょうか。
(夏目漱石・森鴎外・小泉八雲・・・等々)
家が残っているということは火事などではないわけで。
とまれ、それはそれとして。
作品の中の蝸牛庵
こちらの建物も博物館明治村に移設されており、正確な図面は無く写真からモデルを起こしました。これも大変だった・・・
こちらも漫画「ゴールデンカムイ」では尾形の実家として使われています。
家の中は北海道の別の家なのですが、家に入るシーンの軒だけはこの家がモデルに使われています。
全然気づかなかったのですが、同じ構図で取っているファンがたくさんいらっしゃったので、その理由を調べていて知りました。
(ゴールデンカムイで使われた構図)
この建築に限らず、ゴールデンカムイは北海道の建築に限らず、明治村に移築された建物をたくさんモデルとして使用されています。
明治期ということでちょうど時代が合致するので都合が良いんでしょうね。
このため「聖地巡礼」されるファンの写真もたくさん確認できますし、実際に現物と作中の描写を比べてみると非常に丁寧に参考にされているのが分かります。
自分としてはこの家は「百鬼夜行抄」(今市子)の主人公、飯島律の家のモデル、という印象。
大好きな作品なので、実物を見たときにはテンションが上がりましたが、「思ったより小さいな」というのが第一印象でした。
ただ、外から眺めるのと、中から見るのでは大きく印象が違う家でもあります。
明治村では書斎と中庭を外から見る格好になっていますが、ここは玄関から入るべきだろうなと。
蝸牛庵のデザイン
続きを読むコーヒーグラインダのカスタム部品、3代目
コーヒー好きなので、豆で買って淹れる直前に挽くようにしてます。
使ってるグラインダーはこれ。
「フラットカッターディスク」とある通り、平行の臼を使っているので、豆の均一性が高いのが特徴。
- 小さな刃だと熱を持って酸化が進んでしまう
- 平行でない臼だと細かく挽きすぎて均一性が悪い
というあたりからのチョイス。
「粉で買ってるけど、そろそろグラインダを買おうかな」という人はぜひ参考にしてください。
ただ、問題は大容量モデルなので、一人分を作るとケースの掃除が面倒なこと。
一回やるだけでこんなんなる・・・
その対策として作ったのがこれ。
- 一回分の粉がちょうど入るケース(右)
- ケースに入れるための接続ユニット(中)
- 豆が跳ねないようにするための蓋(左)
の1セット。蓋は投入側で使います。
一番シビアなのが接続ユニットで、毎回抜き差しするのでだんだん摩耗してきます。
今回、また壊れたので作り直したのが下のもの。
今回で3代目。
左が今回のもの、右が2代目。
毎回色が違うのは、単にその時3Dプリンタに刺さっていた樹脂でプリントしているから。特に意味はありません。
抜き差しを繰り返すことで割れてくるので、強度を上げるために接続口の部分を少し狭くして、角Rも付けて強度を上げています。これで2年ぐらい持ってくれたらいいけど・・・
ちなみにプリントした時点での形はこんな状態。
2つの部品でできます。
使っている樹脂はABSという種類なので、水には強いのですが、アセトンには溶かされる特徴があります。これを利用して、表面を溶かして接着します。
続きを読む夏目漱石住居(博物館明治村)
愛知県の博物館明治村に移設されている、夏目漱石・森鴎外の住居です。
夏目漱石と森鴎外が一緒に住んでいた、というわけではなく、別の時期にたまたま二人の文豪が住んでいた家ということですが、それにしても凄い偶然。
ちなみに「ゴールデンカムイ」でも杉本の幼馴染、梅子の家として出てきたはず。
この角度だったかな?
明治村で訪れるのは主にこの角度。
書斎が家の一番良い所にあるので、それを見てもらうという形です。
(ただし家の構造としては「寝室」に座敷があり、ここが最も格が高い)
家の構造はこうなっていますが、便所と風呂場については資料が無いのでモデリングしていません。
資料が無い。
そう、これ含め、いくつかのモデルは「修理報告書」の存在を知る前に作ったモデルです。
間取り図など、少ない図面を元にモデリングしています。
新しいiPhoneではデジタルスキャンができたりするそうですが、これを作るのにそうした機材は一切使っていません。
使ったのは主に現地の写真。
明治村は有名な観光地なうえ、「撮影自由・SNS投稿大歓迎」をうたっています。
このため、公式の写真、SNS投稿、Googleストリートビューなど手に入れられる写真をとにかく集め、そこから立面図を作り上げたのがこのモデルです。
例えばこの部分。
障子や畳は規格化されているので寸法が分かりますが、斜めになっている部分は
障子の上面 → 梁(太さは規格あり) → 壁側の梁 と順に高さを合わせていって、それと外の瓦の高さを合わせることで高さを計算しています。
図面があれば一発なところも、一つ一つの寸法を積み重ねて作っているものだから、作るのにめちゃめちゃ時間が掛かっています。
お値段が安めに設定されているのは、単純に作った時期が昔で、CGとしての技術レベルが低いころのものだから。
とはいえ、直すのも大変なんですよね・・・ということでこれで完成。
建築的にも、「田の字」構造と言われる江戸時代の間取りから、廊下が出来始める途上の構造で、中途半端な「中廊下」が特色です。
「田の字」と言われる間取りの事例は例えばこちら。(小泉八雲住居)
部屋の畳が連続していて、廊下が無いことが分かります。
(茶色や黒の空間は押し入れや仏壇)
ちなみに和風建築では部屋の外周に縁側がありますが、これは元々通路ではないそうです。移動する際には部屋を通り抜けます。
時代劇でも襖と次々空けて進みますよね?
あのイメージ。
江戸時代の大きな民家や武家屋敷、お城ではそうした「田の字」の設計でしたが、明治以降に通路としての廊下が出てきます。
この住居では女中部屋の横に一部屋分だけ廊下があり、この以降途中の建築だと分かります。
観光地としては見た目が良く特徴的な書斎に目が行きますが、建築史としては後ろの間取りが面白いという建築です。
こういう建築物を選んで持ってきたあたり、明治村のセンスって本当に良いなぁとモデリングをしていて気が付くところです。
書斎側から見た外観としても、建築様式としても面白い。
これは玄関上がり框からの景色。
右が玄関で、左が勝手口。
台所に向かう勝手口が大きく取られているのは古い造りですが、土間は非常に小さく、調理場も板の間になっているのは結構変わっています。
また台所に窓が多く、相当採光に気を使っているのも良い設計です。
玄関と台所を繋ぐ掃き出し窓が、ここに限らず家のあちこちにあるのが特徴の家です。
夏目漱石住居では書斎を見る人はたくさんいて、もちろんそれは良いのですが、家の中の廊下や天井にも目を向けてはどうでしょうか。