ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

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蜂蜜とハイエンド3D−CAD

蜂蜜が好きで家には常備しているけど、使っていると最後の方はベタベタするんだよね。
なんとかならんものか。

Honey / alsjhc

金に物を言わせる戦い方

技術の発展に、その業界の「金回り」は結構大事。
蜂蜜から話が飛んだように見えるけど、ちゃんと繋がります、っていうか繋げます。


飲料・食品や生活品の業界では、容器・包装、つまり「パッケージ」にはものすごい巨額が投資されている。
この業界の面白いところは、中小の企業でも大手と同じ美味しさ・便利さを提供できる可能性があること。
大手は中小が追い付けないよう、その資金力や規模でこそ作れるものを考え、提供し続ける必要がある。


たとえば日本のビール。
4大ビールメーカーの作るビールはどれもピルスナーというタイプのビール。

The Sapporo Beer Garden. / MJ/TR (´・ω・)

これは巨大な設備投資が必要で、中小企業には真似ができない。
だから地ビールはピルスナー以外の製法で作られる。
ところが大手がピルスナー「これこそがビール」といい続けることで、それ以外のビールは、
まず「これもちゃんとしたビールなんですよ」という説明から始めなければいけない。
これはなかなか時間もかかるし、面倒くさい。
ピルスナー以外のビールも、別にそれだけで味が決まるわけじゃない。
だが、まず「ビール」という市場を、大手がピルスナーこそがビール」と再定義することで
競合の参入を防いでいる部分はあると思う。

パッケージは、最先端

パッケージというとデザインや名前など、広告宣伝をイメージするかもしれないが、それだけではない。
空気に触れると腐ったり劣化する食品や生活用品にとっては、
包装は商品の質を左右する、非常に重要な機能を持っている。


簡単に言うと、パッケージの機能面には、「外の空気と触れあわない(酸化を防止する)」という目的と、
「簡単に開けられる(使いやすい)」という矛盾する二つの目的がある。
「運送中に乱暴に扱っても漏れないけど、使うときは簡単に開けられる」
これがパッケージに求められる本質と言える。
これを美しく実現したのが「マジックカット」だと思う。
従来の切れ込みから、小さな傷をたくさん付けることで強度と使いやすさを実現した。

・リンク → 旭化成パックス:フィルム製品事業/易開封加工技術−マジックカット


またパッケージは商品自身ではない。
つまり、「使い終わったら捨てられる」のがパッケージの本質だと言える。
だから、お金をかけたくないし、出来るだけ薄く・軽いのが喜ばれる。
最近のペットボトルが軽量はしているのは正にこの省資源化の流れだし、
缶ビールの搬送用の段ボールが角を切り落とした形になっているのもこれ。

・リンク → KIRIN_「持ちやすさ」と「環境」を考えて、カートンから角を取りました。キリン独自の、コーナーカットカートン。
ちなみにこのキリンビール、横浜にはその名も
「パッケージング研究所(通称「パッケ研」)」という研究所で日々容器や包装について研究している。
それぐらいパッケージは大事だということが分かる。

カネがあるとここまで手間をかけられる

ちなみに大手ビール会社は、食品業界としてはものすごくお金を持っている。
飲料はたくさんの会社があるし、食品業界ではもっとたくさんの会社がある。
それらの会社はどこも段ボールでの包装も輸送も行うが、
ここまできちんと段ボール包装について研究が出来る食品・飲料メーカーというのは少ない。
こうして、お金のある会社は中小の手が届かないところまで改良をコツコツと積み重ね、
結果として中小がとても叶わない低コスト構造を作り上げる。
本当、資本主義の教科書のような戦い方だと言える。


で、話はここで蜂蜜に戻る。
蜂蜜は「純粋蜂蜜」という商品名になっているように、プレーンな蜂蜜で商品になる。
もちろんベースとなる植物の違いや蜂蜜に加える物で差別化を行っているが、
市場は140億円、しかも数量ベースでは90%を中国からの輸入に頼っているらしい。
(数字は以下のリンクから)
・リンク → 日本蜂蜜株式会社|はちみつの話|生産量と市場
ビールの3兆円、牛乳の6,000億円という市場からすると非常に小さい。
この差がどんなところに出てくるか。
例えばうちにあった蜂蜜の注ぎ口。

ただの筒状だから、最後の方になると注ぎ口の周りはこぼれた蜂蜜でベッタベタになる。
市場が小さく、企業の規模が小さいと、こういう所までなかなか手が回らない。

注ぎ口にまでお金をかける企業

対してこちらが洗剤の注ぎ口。

洗剤の市場は国内2000億円と言われる。
参入企業には花王P&Gなど一兆円以上の売り上げ規模を誇る会社があり、
外市場を見込めば、かけられるお金も非常に大きくなる。
結果、注ぎ口一つ取ってもこれだけ複雑な形状を作る事が出来る。


ちなみにこの注ぎ口、聞いた話では「ハイエンドCAD」と言われる
最先端のCAD(コンピュータ設計システム)を使っているらしい。

NX for Mac OS - housing / Siemens PLM Software

ハイエンドCADと言うと自動車や航空機ぐらいでしか使わないものだと思っていたが、
まさか洗剤の注ぎ口をそんな最先端技術を駆使して作っているとは・・・
確かに最近は洗剤を最後まで使っても、容器がベタベタしなくなった気がする。
粘度の高い液体を簡単に計量して注ぐことが出来て、なおかつ液だれしない。
蜂蜜よりも高い要求を、液体洗剤の注ぎ口は満たしていることが分かる。

蜂蜜にも最先端の注ぎ口を!

この注ぎ口、他にも無いかと思ったら、我が家では食器洗浄機の洗剤も同じような形だった。

(ピンぼけですいません)
蜂蜜も、この形状にならないのかな。


詰め替え用洗剤もあるので、洗剤を使い終わったら良く洗って蜂蜜を入れれば・・・
とも思うんだが、さすがに洗剤の入っていた容器に食品を入れるのは抵抗がある。
蜂蜜という狭い市場では、この容器を作る技術もお金も出てこないだろう。
でも、この容器があれば「蜂蜜も食べやすい」として拡販に繋がるかもしれない。


「卵が先か、鶏が先か」みたいな話になるが、
洗剤の容器を流用されたところで痛くも痒くもないんだろうから、
どこかの洗剤メーカは蜂蜜やさんに容器のライセンスを貸してあげられないかな・・・
大手の生活用品メーカにしたら面倒ばかりでおいしくない仕事かもしれないけど。
蜂蜜好きとしては是非お願いしたいところです。