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ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

ボードゲーム制作を行う「ペンとサイコロ」のブログです。公式サイトはこちら→http://penanddice.webcrow.jp/

ごっこ遊びが、企業を伸ばす

ディスコでは、偽物のお金が飛び交っている。


こう書くと思いっきり誤解を招くが、
ディスコと言ってもダンスするほうではなく、半導体製造装置の株式会社ディスコ(DISCO)

先日、テレビ番組カンブリア宮殿で取り上げられていた仕組みが面白かった。


ちなみに前職の会社もこの番組で取り上げられたことがあるが、
テレビは会社側とテレビ局側の見せたい内容と、短い放送時間に押し込めた内容になるので、
それが真実の姿を現しているかと言われれば「ん〜?」という感じ。
まぁ、要は出された情報を自分で取捨選択して受け取ろうねって事です。

ディスコの「仮想通貨」

番組の中で面白かったのは、社内での「仮想通貨」という考え方。

Coin City IV / thegrid.ch

社内の「コスト」「報酬」をこの仮想通貨でやりとりする。
各自が自分の仮想通貨を最大化するように動くと、結果として会社の利益も最大化する(はず)。


例えば調査依頼は個別に成果が金額で示され、「入札」する。
(入札で綺麗にタスクが調整できない場合もあるだろうから、実際には社内調整が色々あるだろうけど)
仮想通貨の報酬は成果給の上、施設の利用料もこの仮想通貨から支払われるため、
この仮想通貨が最短時間で効率よく作業するためのモチベーションになる。


この仮想通貨で面白いのは、「迷惑料」や「感謝料」を支払う制度があること。
(それぞれ社内用語で「痛み課金」「Will報酬」
感謝料の例としてあげられていたのは営業の「長納期案件」
長納期(番組では3ヶ月以上)の案件受注で、工場から10%を仮想通貨でキャッシュバック。
なるほど。

「ルールの破り方」が難しい

案件(売り上げ)、迷惑料、社内費用など異なる指標の基準として、
社内で「統一通貨」を使用するという考え方はとても良いと思う。


「社内でこれを推奨しましょう」
「こういうルールにしましょう」
の良くある問題点は、「じゃあ、守らなかったらどうするの?」という罰則。
罰則がなければ、守る・守らないは完全にモラルの問題になる。
一般社会では罰則を規定するのは「刑法」だが、社内で「ルールを破ったときのルール」
一々決めるのが面倒だし、破られないことが前提になるのではっきり規定されないことが多い。
ディスコの仮想通貨の仕組みで面白いのは、「迷惑料を払うことも選択肢の一つ」としている事。
実際にそういう例もあるらしい。
つまり「ペナルティを払うから、このルールは無視します」を最初から認めていること。

Yellow Card / NathanF

この意味では、法律と言うよりゲームのペナルティの考え方に近い気もする。


実際にはもっと細かいルールや、社内的な調整やモラルもあるだろうが、
「最終的に仮想通貨を最大化しよう」というスタンスで
多少のロスに目を瞑りながら進んでもOK、というのは凄く良い。


有名な話だが、旧日本軍は「捕虜になったときのルール」規定していなかったため、
捕虜になるとみんな機密をベラベラしゃべって、むしろアメリカ側が困惑したらしい。

Iwo Jima - last group mtg b4 deactivating1 / bunnygoth

これも「捕虜になる前にみんな自決するはず」として捕虜になった時のルールを考えなかったからとのこと。
これだけ聞くと笑い話だが、会社でも「日報は毎日あげる事」というルールがあるとして、
出張者がその日にあげられないとどうなるのか。
そのまま面倒になってあげなくなったらどうなるのか。
こういったイレギュラー処理を最初から組み込める仕組みというのは、組織運営上非常に優れていると思う。

単一基準の強さ、わかりやすさ

ディスコという会社は「働きやすさ」を大分重視している、ということなので
この仕組みによる成果がどれだけ給与に反映されているかは分からないが、
これだけ広範にわたる制度なら、社内の「良い・悪い」の基準にこの仮想通貨が効いているのは間違いないだろう。


この「単一基準」を仕組みとして成立させられると、強い。

二酸化炭素排出量」は二酸化炭素の絶対量ではない

例えば温暖化の指標には二酸化炭素排出量」が当たり前のように使われるようになった。
これだって、見事な単一指標だ。

S〓 meget. / @boetter


温暖化の指標はなにが一番優れているか分からないし、未だに温暖化の進行度合いには異論がたくさんある。
ただ化石燃料(石油など)を燃やすことで二酸化酸素が出ているのは事実なので、これを基準にしましょうと。


二酸化炭素排出量という基準には、実際は色々問題がある。
例えば「製造から廃棄まで含んだ二酸化炭素排出量の計算」と言った場合、製造とはその製品のことか、
工場立地からを考えるのかで数字は大きく変わる。
また既存工場で作った製品と、新規工場を建てた製品では数値が変わるが、その数字だけを単純比較すると、
企業努力や実際の環境負荷と違う評価基準になるし、新規参入企業は圧倒的に不利になる。
(だから既存工場のある大企業が積極的にこの数字を測定・公表した)
また「排出権ビジネス」が一時話題になったが、排出権は「それを行うことで排出量の変化がある場合」を取り上げているので、
昔からある森は排出権に含まれず、森を切り倒して太陽光発電を行うと排出権が認められるとか
感覚的には納得できないようなルールもたくさんある。(この辺、今は基準が違うかもしれない)


個人的には「排出権ビジネス」は結果として環境改善に役立たないと思うので反対派だが、
二酸化炭素排出量」という単一基準を持ってきて、曲がりなりにもみんな「これは環境負荷が大きい・少ない」という
基準を持てるようになったという仕組み自体は上手いし、啓蒙という面では大いに役立ったのは間違いない。

世界最強の統一基準はお金

もっと言ってしまえば、お金自体が単一基準だ。
ディスコでは仮想通貨をわざわざ儲けているが、考え方としてはそこで本当のお金を動かしても良い。

Day 4 - Paying off debt / quaziefoto


ただ、わざわざ仮想通貨を使用しているのは、最終的に何らかの調整が必要ということだろう。
例えば「一生懸命働いても、生活保護とほとんど変わらないお金しか儲からない」とか
配偶者控除に収まる範囲で仕事をしないと」とか、単一基準では、どうしてもルールの抜け道が生じてしまう。
仮想通貨を本当の売り上げと分けて考えないと、本当の売り上げと違うところで
仮想のやりとりだけで数字を稼ぐ人が出てくるとも限らない。


統一の基準を作るのは優れた制度だが、優れた制度であるだけ設計は難しく、抜け穴も作ってしまいやすい。
ディスコがテレビを前にこの仕組みを公開したというのは
それだけ優れた制度だと自負しているということと、それだけ真似が難しいという認識があるのだろう。


なかなかに面白い制度だが、これだけ聞いて始めようとしてもかなり難しいのは目に見えている。
これ、企業で仮想通貨を導入するコンサルタントとかあれば結構面白いんじゃないか?
と思ったんだけど、そういうコンサルをやっている企業ももしかしたらあるのかな?
そういうコンサルがあって、それがある程度普及すると自動車会社の「車両紹介制度」みたいに、
取引先の会社から値引きの代わりに仮想通貨を融通したり・・・
とかなるとなかなか面白いかもね。