バブルの遺産を資産にする。ハウステンボスの成功
二泊三日で長崎ハウステンボスに行ってきました。
HISが一年で再生し、今では会社の利益の半分を稼ぐ孝行息子のハウステンボス。
再生当初は施設内に売店を作って「雰囲気を壊す」と言われたハウステンボス。
社長自らテレビで誘致活動を行っている、あのハウステンボスです。
旅行先に決めた理由はいくつかあります。
娘がパスポートを持っていないので、国内限定であること。
せっかくなので宿泊の必要なところまで出かけたかったこと。
妻の体調を考え、「歩かなくても良い」場所であること。
小学生の娘が二泊三日の間飽きないこと。
こう考えると「滞在型リゾート」を目指すハウステンボスはなかなか理想的でした。
行って良かった、ハウステンボス
結論から言えば、結果は「満足」でした。
ハウステンボスという施設自体は、はっきり言うと「バブルの遺産」です。
金を掛けた巨大なハコモノが負債となり、にっちもさっちも行かなくなった。
こんな建物が本当にゴロゴロしてるわけです
日本全国、どこでも聞く話です。
その再生事業も多く、色々なスタンスがあります。
ハウステンボスの場合、元は「オランダ村」であり、建物や風車、庭園が魅力でした。
では今のハウステンボスはどうか。
我が家が見た範囲でのイベントや施設はこんな感じでした。
- 韓流シアター
- ONE PIECEのアトラクション
- ガンシューティング
- VRお化け屋敷
- プロジェクションマッピング「太鼓の達人」
- アスレチック
- WINS(場外馬券売り場)
- 歌劇団
- プール
- 花火
等々、等々。
これもほんの一部で、本当に書ききれない程イベントが開催されていました。
特に「オランダ」という元のコンセプトにこだわらず、喜んでもらえるであろうイベントをとにかく打ち続ける。
それが今のハウステンボスのスタンスで、魅力でした。むしろ風車の「目立たなさ」がすごかった。
お金の有効活用
いろんな手を打っているのになんで儲かるのか?
それは単純に「金を掛けてないから」です。
例えばプール。
大小あわせて4つの滑り台に4つのプール。
豪華に見えますが、実際は空気で膨らませるタイプのものなので、工事費はほとんど掛かっていません。
「水掛け祭り」も水槽や水鉄砲さえあれば、あとは人手だけ。
でも楽しい
しかも夏が終われば撤去も簡単です。
ハウステンボスが話題になったきっかけの一つに、建物の壁をスクリーンとして使う「プロジェクションマッピング」があります。
これも建物の壁をそのまま使うので、高額なプロジェクターを使うとはいえ、派手さに比べてコストは掛かっていません。
(もちろん技術やアイデアは凄いです)
特設イベントが行われていた歌劇団なんて、「テント」でした。
うちの親は「あんな設備で健気に頑張ってて、応援したくなるわぁ」とむしろ喜んでいましたが。
何が喜ばれるか、分からないものです。
通りには傘。低コストで綺麗な上、日よけにも雨除けにもなる。いいアイデアです。
イベントの乱発による満足
ではそのイベントは全て満足できるか。
一つ一つのイベントや施設が100%満足できるレベルではありません。
プールは大人が泳ぐには少し浅く、長いウォータースライダーは傾斜が浅く途中で止まるほど。
長いのはいいが、斜度がほとんど0のスライダー
歌劇団のテントは暑くて大変だったそうです。
でも、それで充分です。
イベントの数自体は多く、各々のイベントや施設で「それなりの」満足が得られればいいわけです。
例えばプールは空気式の小さなスライダーの方がスピードが出て楽しめました。
日本最長より、こっちの方がド迫力。(これは子供用)
結局一番満足感が高かったのは、家族全員一致で「花火」でした。
夏の間は毎週土曜開催、毎回テーマが違うそう
音楽に合わせた花火が至近距離の大迫力で打ち上がる。
「風向きによっては火の粉が落ちてくるので振り払ってください」
という物騒なアナウンスが流れる距離での鑑賞は、音楽に合わせることで飽きさせることもなく、あっという間の30分でした。
お金はかかる
一部混み合って参加できないものも一部ありましたが、基本的には夏休みの土日でもそこまでの混雑ではなく、充分に堪能できました。
なぜか?
それは料金体系による部分が大きいと思います。
ほとんどの施設は一日パスで遊べますが、「一回目無料、二回目より有料」というものが多く、自由にその施設を何度も遊べないようになっています。
園内は広く、石畳なので移動は不便なので、バス・タクシーが走り、自転車や車椅子も借りられますが、有料です。
(バスはパスポートがあれば無料)
基本、全部こんな石畳なのでハイヒール厳禁です
これを聞くと「無料の方がいい!」と思いますが、実際はこの「有料」であることがハウステンボスの「良さ」だと思います。
タクシー(一人200円)は適度に人を乗せ、「流し」のタクシーを捕まえるのも難しくありません。
自転車の方が園内の移動は便利ですが、有料なので園内が混み合う程は走っていません。
ハウステンボスは前回の記事で書いた「有料の方がいい」を実現している施設で、有料化によって園内の混雑をコントロールしている様は見事です。
我が家は車椅子を借りましたが、無料タイプは全て貸出中で、座席のクッションの良い有料タイプを借りました。
それでも500円。しかも二泊三日で。
満足度から考えれば、ビックリするぐらい安いレンタルでした。
この他電動式の車椅子やシニアカーのレンタル、セグウェイツアーなんてのもありました。(セグウェイは1時間4,000円)
分かりにくい
ハウステンボスはバブルの遺産である立派な施設に、ツギハギのように新しいアイデアを細かく何層も重ねて進化し続けている施設です。
それぞれの整合性が必ずしも取れているわけではなく、橋を渡ったら行き止まりになっていたり、建物の入り口が片方だけに制限されていたりと妙な構造になっているところも多々あります。
それ自体は仕方無いと思うのですが、残念なのは次々と繰り出す改善やイベントに、告知が追いついていないこと。
地図の説明はシンプルで検索しにくく、イベントに至っては「どこでやっているか分からない」ということも良くあります。
また、細かくお金が発生する割には、決済は基本「現金」です。
パスも普通の紙にQRコードが印刷されているだけなので、耐久性に不満があります。
この辺はぜひ今後改善して頂きたいところ。
ハウステンボスに行って感じたのは、ここはまさに「生きた」テーマパークだということ。
一年も経てば設備も変わるでしょうし、一ヶ月後に行くだけでもイベントがごっそり切り替わり、今回行けなかったアトラクションを含めて充分楽しめるだろうと思います。
だからこそ、期待を込めて不満点を書き留めておきます。
いつか見たときには「ハウステンボスもこんな不便な時期があったんだな」と見返せるなら、それが一番良い記録記事でしょう。