ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

ボードゲーム・3Dプリント作品・3DCG制作を行う「ペンとサイコロ」のブログです。公式サイトはこちら→http://penanddice.webcrow.jp/

この世界の片隅で、自分のゲームを気に入ってくれる人を探す

以前にも書きましたが、台湾のEmperorS4様からオファーをいただき、
拙作「三千世界の烏を殺し、主と朝寝がしてみたい」の台湾版が制作されました。

boardgamegeek.com

この台湾版「Crows Overkill-三千世界の鴉を殺し-」はオリジナルとは細かく違いがあります。
今回のゲームマーケットでも何度か聞かれたので、行った調整をまとめてみます。

 

「三千世界の烏を殺し、主と朝寝がしてみたい」

このゲームは私が初めてクラウドファンディングを募り、販売したゲームです。

camp-fire.jp

表題の歌は高杉晋作が歌ったとされていて、(諸説あり)
「朝になり、烏が鳴けば(遊郭から)帰らなければいけない。
 ならば世界中の烏を殺してでも、お前(遊女)と一緒にいたいものだ」
という心情をうたったとされています。
このゲームはそんな艶っぽい歌からなぜか「烏を殺す」ところだけをピックアップしたゲームで、手番になるたびにひたすら増える鳥を、とにかく鳴かないように殺したり、
人に押し付けて、なんとか遊郭に居座るという、なんとも物騒で頭の悪いゲームです。

penanddice.webcrow.jp

 

艶っぽいテーマとふざけた解釈が売りなので、ゲーム性もとにかく極端に
調整しており、初手で何もできないまま脱落(このゲームでは「帰宅」)することもママあります。

www.youtube.com

 

おかげさまでクラウドファンディングは達成、2014年に販売を始めたのでもう3年になりますが、アマヤギ堂様によるイラストの刷新もあり、未だに売れ続けているのはありがたい限りです。


プレイスタイルに見る「Crows Overkill」の違い

台湾EmperorS4様から発売された「Crows Overkill」は、タイトルの変更の他にも

  • 木製ボードがカードに変更
  • カードの効果を変更・追加
  • ルールブックが紙から冊子になり、カラー印刷で読みやすく

といくつか変更箇所があります。

 

木製ボードがカードに変更されたのは製造原価上の問題で、これにより定価が安くなり、箱のサイズも小さくなっています。
しかしカードの効果や枚数の変更は、台湾で販売するにあたっての地域性を考慮した変更です。

 

日本でも最近はプレイスペースが急増していますが、台湾はそれに輪をかけて多数のプレイスペースがあります。
ただ実際にお話を伺ったり、一緒にプレイをした感じでの一番の違いは「とにかく喋る」ということ。
ゲームにもいろいろな遊び方があると思いますが、台湾ではゲームを遊ぶことより、
遊びながらグダグダと話をするコミュニケーションの部分がより重要だと感じました。
写真は実際に台湾のあるプレイスペースでのランキングですが、
「Dixit」「Bang!」「クー」「アヴァロン」などが並びます。

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この辺のゲームは本当に定番で、どの店舗でもランキングに並んでいました。
実際、本当にみんな遊んでいてよく喋るんです。
「このお題、ということは・・・これとか怪しくない?」
「いやいや、どうかなー」みたいな感じで。
だから進行が遅い遅い。
同じゲームでも、プレイ時間は日本より明らかに長めだと思います。

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写真は「終わらないから途中で終わって帰った」状態の写真。長いゲームだと、こうして途中で区切って三日ぐらいかけて遊ぶそう。

 

そんな台湾なので、元々の「三千世界の烏を殺し、~」では問題がある、という指摘をいただきました。
それは明確に誰かを指して攻撃するゲームは嫌われる、ということ。
ワイワイと話して遊びたいのに、「俺はお前を攻撃する」という明確なアクションではギクシャクしてしまうわけです。
特にこのゲームは「ゴーアウト(一人ひとり脱落する形式)」なので、
攻撃を食らったプレイヤーはその後ゲームに参加できず、よりストレスが溜まりやすい仕組みですから。
そのため、台湾版を出すにあたっては、おなじ攻撃でも、攻撃対象を「全員を攻撃する」と改めました。

f:id:roy:20171209005910j:plain台湾版で追加・変更されたカードの一覧


これで個人攻撃をした感じが薄くなり、ワイワイと遊びやすくなるという意図です。
国によって、環境によって遊び方が異なるわけですから、「オレはこれが面白いと思う」だけではなく、プレイする人が楽しんでもらえるよう、こうして調整することも私は必要だと思っています。

 

ちなみにこの調整、最初期からずっと私のゲームを気に入っていただいている千葉のBAR ENCOUNT様では「私はやっぱり直接攻撃したいわ~」とオリジナル版がいいというご意見でした。

f:id:roy:20161212190325j:plainBAR ENCOUNT様

f:id:roy:20161212204659j:plain実際にお邪魔した際のプレイ風景


そういう好き・嫌いは当然あっていいと思うので、台湾版も私が逆輸入して販売させていただいています。
ゴリゴリ攻撃するか、ワイワイまったり遊ぶか、好きな遊び方で決めていただければ良いと思います。


「海外」という国はない

今回は台湾の会社と契約、販売となりましたが、国や地域によって文化も違えば遊び方も違います。
例えば同じコミュニケーションゲームでも、喋れないプレイヤーの出る「ミステリウム」は台湾では受けないと思います。

ミステリウム 日本語版

ミステリウム 日本語版

 

 
「海外」と一括りでまとめてしまいがちですが「海外」という国はありません。
逆に言えば日本では受けなかったゲームが、どこかの国では大絶賛される可能性はあるわけで、そうした点からも、ゲームを作る際に色々な人に触れてもらう努力をするのは大事だと思います。

 

今回のゲームマーケットでも面白そうなゲームがいろいろと出ていましたが、
買い忘れたのが今でも惜しい「∇(ナブラ)演算子ゲーム」なんかはMensaに持っていったら大ウケしそうですし、

ゴリゴリのアブストラクトゲームのいくつかは、コンポーネントをちょっといじればフランスあたりで受けそう、とか思うわけです。

 

こういうことばっかり言っていると「ゲームマーケットに出展するハードルを高くしている」なんてお叱りをいただくんですけど、日本じゃあまり受けなかったゲームが、英語の翻訳を読んだフランス人が気に入って、ルールをフランス語に翻訳してくれたうえでフランスのブログで紹介してくれた、なんて話が実際にあるわけです。

www.trictrac.net

実際には販売まで行っていないのでお金にはなっていませんが、やっぱり世界のどこかで気にってくれる人がいる、というのは制作者としては冥利に尽きますよね。
ボードゲームを作るにあたって、やっぱり楽しいのはルールを作って、調整している時で、ルールブックを書くのは面倒、きれいなパッケージはお金も手間もかかるし、宣伝は面倒で大変。

それは事実です。

でも、だからと言って「ルールさえ作ればいいじゃないか」も個人的には違うと思うし、もったいないと思うんですよね。

ショップやプレイスペース、出版のようにお仕事としてボードゲームに携わられている方がインタビューで「デベロップだけしてもいい」「ライセンス管理だけでも請け負う」といった話をされるのを聞きましたが、こうした意見も、おなじ「もったいない」という気持ちの表れだろうと思います。

もちろん、今のボードゲームの市場規模ではたくさんの人が関わったところでそれをペイできないという大人の現実があるわけですが。

 

ということでゲームを作っている、あるいは作ろうとしている皆さん。
「自分のゲームを気に入ってくれる人」を探す努力を、もうちょっとされてはどうでしょうか?
(もちろん、既に十分やっている方も多数だと思いますし、私も決して十分できているわけではありませんが)
どうしていいか分からない、ということなら相談ぐらい乗りますので。

 

そんなことを言っている私の場合、「ペンとサイコロ」の全てのゲームはこちらからご購入頂けます。

しかし使用しているBOOTHのシステムの問題(多言語対応していない)や、輸送費の問題で、現状日本国内からしかご購入頂けません。

eBayとかにも出店したらいいんですかねぇ?

本当なら、JANコード(バーコード)も取ってAmazonで購入できるようにした方がいいでしょうし、やれることはいくらでもありますね。

pen-and-dice.booth.pm