ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

ボードゲーム制作を行う「ペンとサイコロ」のブログです。公式サイトはこちら→http://penanddice.webcrow.jp/

視覚障害とゲーム

ゲーム作りワークショップの最終回に参加しました。

できたゲームは2月4日(土)~12日(日)まで奈良駅周辺で開催される、奈良県障害者芸術祭「HAPPY SPOT NARA」で展示されます。

実際に遊べる形で展示しますので、ぜひ足を運んで下さい。

nara-kokushoubun.jp

 

障害者芸術祭ということで、ゲームも障害のある方に関わるものとなっています。

  • 障害があっても楽しめる
  • 障害があるからこそ楽しめる
  • 障害のある方が作った

視覚障害とゲーム

私もアドバイザーという立場でサポートさせて頂きました。(ゲームの原案は全て主催の「タンポポの家」「ぷろぼの」の方々が作成)

特に障害のある方にも楽しんで頂けるゲームという点では、日々自立支援として障がい者と関わられている経験を生かした意見がたくさんあり、私も色々と勉強になりました。

 

例えば制作したゲームに「視覚障害者」を意識したゲームが二つあります。

視覚障害の方がゲームをどう楽しむのか、その点を含めて工夫した点を紹介します。

視覚障害と一言で言っても弱視から全盲までの違い、先天的・後天的といった障害歴、また点字を読めるかなど個々人でかなりの違いがあります。

「これが視覚障害」という決めつけではなく、一意見としてご理解頂ければ幸いです。

 

盤面の把握

こちらは実際に「視覚障害者向け」として制作されたゲーム、「宝石あつめ(仮称)」です。

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MDFボードにレーザーカッターで彫り込みを入れています。

彫り込みを入れているのは、もちろん目が見えなくても盤面を把握できるようにするため。

そしてもう一つ、盤面を把握しようと手を動かした際に、チップが動かないようにするためです。

 

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実際に「たんぽぽの家」の竹内さんが視覚障害者役でプレイされていましたが、状況を把握するために視覚障害者は盤面を触りっぱなしになります。

この際になるべく動かないようにする工夫として、チップ部分にも彫り込みを入れられていました。

 

このゲームは基本的には円の外周を周回する「すごろく」ですが、斜線部分からスタートし、盤面は12カ所に分割されています。

そして上下左右の4カ所には繋ぎ目があり、連結部品が突起になって突き出ています。

なぜ12カ所で4分割か。これは駒の現在位置を「何時の場所」と言葉で簡単に伝えられるようにするため。

普通のすごろくで気づきにくいところですが、現在の場所をシンプルに「言葉で」伝えるのは、実は結構大変です。そこで、それを簡単に伝えるために12カ所、という構造に拘られていました。また繋ぎ目の突起は「この4カ所が上下左右」と簡単に位置と方向が分かる目印になっています。

上の写真なら「今12時にいて、他の駒は8/9/10時の方向に居ます」といえば状況が伝わるわけです。

 

いつもできない、「アレ」がしたい!

竹内さんの施設には視覚障害者の方もいらっしゃるそうですが、例えばカードゲームでは自分の手札が分からないので遊べません。

他のプレイヤーに見て貰うわけにはいかないので、誰かゲームに参加していない人に教えて貰うとしても、教えて貰う声が他の人に聞かれてはいけないので、実際のところ遊ぶのは難しいそうです。

また、サイコロも確認しようと触ると転がってしまうので、使えません。

こう考えると、視覚障害の方の遊べるゲームにはかなり制限が掛かることが分かります。

 

今回どうしても取り入れたいと言われたのは「ギャンブル」。

射線部分はスタート地点ですが、ここを超えるとチップを増やす賭けが出来ます。

この「賭け」も、視覚障害者がなかなか晴眼者(視覚障害の無い人)と同列に遊べないものの一つだそうです。

今回はシンプルに、1~6の彫り込みのあるボードを1枚めくり、その目が当たっているかを当てるというものにしました。ボードがサイコロの代わりです。

タダのサイコロの数字当てですが、これを普段やろうとすると、サイコロを振って「何が出た?」と聞くしかありません。これでは自分がプレイした感覚も無いし、究極的には「言われた数字を信じるしか無い」という部分で、不満と不安が残ります。

(特に運に頼る賭けで、その判断を相手の言葉に頼る不安は、やってみると分かります)

 

ゲームは簡単に

視覚障害の方のほとんどは紙とペンが使えないため、日常の細々したことは記憶に頼らなければいけません。

そうした日常を過ごすことで記憶力の発達した方も多く、オセロや将棋を遊べる方もいらっしゃるそうです。

本格将棋

しかし今回、ゲーム性を上げるために出したアイデアについては、かなり激論となりました。

いわく「そうした能力は誰もが持っているわけでは無い」とのこと。

 

普通にゲームをしていれば、パッと盤面を見て、「この状態だったらどんな手を打とう」と考えることに苦労はありませんが、目を閉じて「この盤面で自分がここ、相手がここ」と順に状況を聞いていくならどうでしょう。

その情報を組み合わせて手を考えるのは、かなり難しいと分かるかと思います。

視覚障害があるということは、ゲームをプレイするのにそうしたハードルがあるということです。

「誰もがプレイ出来る」「ゲーム性がある」どちらを重視するかはデザイナーなら誰もが感じたことのあるジレンマだと思いますが、ターゲットを全盲の方と考えると、その多くはゲームに触れる会が少なく、その結果当然ゲームに慣れていない方となります。

そこで今回は、非常にシンプルなルールを「標準ルール」、ゲーム性を高めたものを「上級ルール」として、展示時点では「標準ルール」を採用することとしました。

 

展示が終了し、施設でその後利用頂く際には、ぜひ「上級ルール」も楽しんで頂ければと思います。

 

展示内容とゲームについて

2月の「障害者芸術祭 HAPPY SPOT NARA 2016-2017」ではこのゲームを含め、全7回に及ぶワークショップで検討・制作した数々のゲームを展示します。

 

ちなみに「視覚障害者向けゲーム」のもう一つはこちら。

「手触り将棋」。

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6つの駒を戦わせて、「全滅」あるいは「入玉」で勝利です。

駒の裏には3つの異なる材質があり、その3種類で三すくみになっています。

上から見れば全て同じ駒、裏から触れば手触りで分かる。

視覚障害があってもなくても、おそらく完全に同じレベルで遊べるゲームです。

 

盤面は5×5の25マスで、「ガイスター」よりも少なく、駒の動きは1種類なので「どうぶつしょうぎ」より単純です。

ガイスターどうぶつしょうぎ

この「とにかく単純」に拘ったのも、先に挙げた「覚える情報を少なくする」というコンセプトに従った結果です。

シンプルとは言え、初期配置が戦略になるのは「ガイスター」と同じなので、ボドゲ英才教育を受けているうちの娘がドハマリして延々遊んでいた程度には面白さがちゃんと残っていると自負しています。

 

ゲームでなく「遊び」として楽しんで頂くものもあり、ガチンコで「これはそのまま売り出しても良いのでは?」というものもあり、それぞれの展示を、会場で楽しんで頂ければ幸いです。