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悪の組織の目標はなぜ「世界征服」なのか

前回記事が好評で、「続編を」という声まで頂いたので
調子に乗って「ビジネス面から考える悪の組織論」第二弾。


今回は「悪の組織はなぜ『世界征服』を目指すのか」について。
参考までに前回記事はこちらです。
・リンク → 悪の組織は失敗した幹部をどう処置すべきか−わかりやすさを、コーディネート

そもそも「世界征服」って何?

いろいろな作品にいろいろな悪の組織があり、それぞれで目標とするものも違う。
ただ、王道のパターンとして「世界征服」をあげることに異存がある人は少ないと思う。
では「世界征服」ってなんだろう?

20世紀少年―本格科学冒険漫画 (20) (ビッグコミックス)

20世紀少年―本格科学冒険漫画 (20) (ビッグコミックス)

※表紙絵で「世界征服」なイメージというこれか・・・


悪の組織は武力制覇による圧政を目指していると思われるので、
全世界に対して武力制覇を行い、自分たちの理想の世界を作ろうとしているのだろう。

キングダム 25 (ヤングジャンプコミックス)

キングダム 25 (ヤングジャンプコミックス)

※こちらは現実に世界制覇しようとした方(秦の始皇帝)。マンガはかなりおもしろい。

そのメリットは?

世界征服の後の世界はどういうものか、というイメージが具体的な組織は少ないが、
「すべての人間は我々に跪く」
といった台詞が多いことから、理念と言うよりも支配欲や金銭面での利益が多いと思われる。

超像可動 「ジョジョの奇妙な冒険」第二部 35.カーズ (荒木飛呂彦指定カラー)

超像可動 「ジョジョの奇妙な冒険」第二部 35.カーズ (荒木飛呂彦指定カラー)

他には単純に世界を不幸にしたいという自己破滅的組織、
恐怖によって危機感を引き起こしたいというテロリズムもあるが、これはビジネスではなく
カルトに近いのでここでは取り上げない。

そんな侵略行為で大丈夫か?

ところで実際に悪の組織がやっていることは何だろう。
多くの作品では、結局近隣の町をテロリズムで破壊していることがほとんど。
これはほぼ共通している。
誘拐や破壊工作で人々に恐怖を与え、従わざるを得ない状況を作るという「恐怖による支配」だろう。
ところが「世界」という視点で見ると、その破壊工作の規模はえらく小さい。
「○×町で怪人が出たって!」
「隣町の公民館が襲われているって!」

平成仮面ライダー怪人伝

平成仮面ライダー怪人伝

という報告の仕方からみても、攻撃範囲は近隣数都市に集中していることがわかる。
これで、世界を目指しているのか?

目標は大きく

しかし組織経営という面から見ると、トップが「世界征服を目指す!」という意味は大きい。
構成員は世界征服を目標に、今の虐げられた状態も我慢できるし、
近隣都市を征服しても「世界に比べたらまだまだだ!」と気を引き締められる。


わかりやすい例で言えばGoogleだ。

Google / warrantedarrest

Google設立時からの目標は「世界のあらゆる情報を検索する」だ。

正確には「世界のあらゆる情報を整理して世界中の人がアクセスできるよう にすること」
嫁に言わせりゃ「それって『世界征服じゃない?』」とのこと。確かに!
実際に、Googleのミッションには併せて「悪いことをしない(Don't be evil)」があった。
(現在は言い回しが変わっている)
世界征服に一番近い会社は、Googleなのかもしれない。

Googleの設立時はロボット検索は性能が低く、まだまだYahoo!のようなカテゴリ検索が強かった。
その業界に殴り込みをかけるに当たり、
「目標は世界一!」
と明確に打ち出すことで、世界一になるべく戦略を組み立てるし、
ある程度成功しても、その利益を分散せず、検索技術とシェアの向上に集中してきた面はあるだろう。

まずは三丁目から

世界征服のためにはアジア征服、そのために日本征服、そのために神奈川県征服・・・そのために三丁目征服」
元ネタが思い出せないが、ギャグマンガであった台詞。
要は世界を征服するための第一歩としての町内の征服であると。
そう考えると、悪の組織トップの「世界征服を実現するのだ!」という台詞と、
やたらと頻発する地方都市周辺の怪人侵攻は矛盾しない。


大目標を掲げ、そのために地道な努力を行う。
むしろ見上げた起業家精神だといえる。

※征服対象である地域を大切にする殊勝な悪の組織の例

組織の本当の目標と、中期目標について

ところで悪の組織では、たとえば「世界征服のために、まず××大魔王を復活させよう」という
「中期戦略」を提示する場合がある。

ドラゴンボール―完全版 (11) (ジャンプ・コミックス)

ドラゴンボール―完全版 (11) (ジャンプ・コミックス)

こういったマイルストーン(プロジェクトの重要な節目)を明確にすることは、
構成員の士気を高め、維持するのに非常に効果的。
企業においても、「市場シェアNo.1を目指すために、まずは××社の○○に勝とう」という
わかりやすい目標は大事なので、企業ごとに経営指標やターゲット商品を設けている。
ビール会社ではキリン・アサヒがお互いを敵としてシェアを奪い合っているし、
日清は社内の各カテゴリ同士をライバルとすることで競い合わせている。
正義の味方に毎回やられていて、なかなか「何丁目制覇」を指標に出せない組織において、
「××復活」といった別の目標を目の前に出すことは、モチベーションの維持の面でも有効だろう。

目標は、嘘でも良い

ちなみにこの中期目標、達成したとたんにコロッとトップの言っていることが変わることもよくある。
「敵を騙すにはまず味方から」と言うが、組織において、トップが考えを素直に出さない場合がある。
一般の企業でも商品戦略や経営戦略、人事戦略は社内でも極秘で、突然方針転換が出されることもある。
悪の組織においても、戦っている戦闘員たちに各作戦の意義や目的が必ずしも徹底しなくて良い。
中期目標を達成すると、戦闘員や幹部の一部は不要になるかもしれない。
でも、彼らはそれを知らずに作戦を遂行する。
それは組織にはよくあることで、トップは目標達成のために、心を痛めながらその決断をしなければならない。


悪の組織でも、トップの本心は幹部でも一握りの腹心だけが知っていることは多い。
また頼みとしていた最終兵器や復活させた大魔王も、たいていの場合はうまく動かなかったり、
言うことを聞いてくれなかったりする。

※復活させた大魔王にトップの座を奪われた不幸な例
そして日々の征服作業では正義の味方に対しての連敗報告しか上がってこない。
悪の組織のトップとは、いかなる組織でも、トップがいかに過酷で孤独かを教えてくれる
良い教材、なのかもしれない。

そのほかの「悪の組織論」シリーズはこちら。
・リンク → 悪の組織が、滅びる瞬間まで自信満々な訳−わかりやすさを、コーディネート
・リンク → 悪の組織は、なぜ懲りずに正義の味方に負け続けるのか−わかりやすさを、コーディネート
・リンク → 悪の組織を傾けているのは科学者じゃないか?−わかりやすさを、コーディネート
・リンク → 僕が『イーッ!』以外の発言権を得た日のこと−わかりやすさを、コーディネート
・リンク → 悪の組織は失敗した幹部をどう処置すべきか−わかりやすさを、コーディネート