ドイツ・フランス・スイスおもちゃ屋巡り
始めて出張で土日をまたいでの滞在になったので、それを利用して観光してきました。
行ったのはフランス・コルマール(Colmar)と、
「ハウルの動く城」のモデルとしても有名
スイス・バーゼル(Basel)。
司教座のある旧市街、展示会、博物館等色々な顔を持つ街
それぞれ「旧市街」と呼ばれる古い町並みの残る区画を見に行くのがメインではありましたが、もう一つは「国によるおもちゃ屋の違い」について。
滞在しているドイツ・フライブルグ(Freiburg)は、川を挟めばフランスで、歴史的にはどちらの国に属していたこともあるので文化的にもかなりフランス寄りです。
海で文化圏がはっきり区切られている日本人にはなかなか難しいところですが、陸続きの欧州では文化は緩やかに変化していることがあります。
例えばドイツ南西の端のフライブルグの食生活は、ドイツ北西のベルリンよりはフランスの近隣地域の方が近いでしょう。
ということでドイツのおもちゃ屋の特徴と、フランスでのそれの違いを比べてみました。
ドイツのおもちゃ屋
ドイツのおもちゃ屋は店舗にもよりますが、やはりボードゲームをかなり大きく扱っています。
(そもそもボードゲームを扱う店舗が一地方都市でおもちゃ屋大小5店舗、本屋を含めると10店舗もある)
デパートのおもちゃ売り場(一部)
エスカレーターを降りた直後にボードゲーム。
大きさは売り場面積の1/3程度。
ただ今回は他の特徴を挙げてみます。
男の子向け
ドイツ人は車が大好き。その特徴は男児向けのおもちゃにもはっきり現れます。
ただ、その「車」が日本のおもちゃのそれとはちょっと違う。
まず、でかい。
これは住宅事情の違いという部分も大きいでしょう。
60~80cmぐらいのが並んでいます。
そして、種類が違う。
日本だと乗用車~スポーツカーが多いと思いますが、ドイツで多いのは「働く車」。しかもかなりガチ。
感覚が狂いますが全部80cm級
建機からトラックまで種類も豊富
日本で牽引車なんかあまり見ないでしょうし、「牽引ユニット:木材」とか、少なくとも私は見た事ありません。しかも80cmサイズで。
木材ユニット。牽引車は別。他の種類もあります。
実際、元々「物を作る」ことが好きなのがドイツ人の特性なので、スーパーでもレゴに並びジオラマ部材が豊富に並んでいます。
この辺、子供向けじゃなくて大人がメインなのでしょうか。
注:普通の百貨店のおもちゃ売り場です。
女の子向け
女の子向けの方がかなり顕著な違いがあります。
お絵かき、ビーズなど基本的なところは各国変わりません。
メインに並ぶのはやはり「ごっこ遊び」「キャラクター」です。
ここまでは同じ。
世界中どこでも強い「アナと雪の女王」(左)
違う部分として一番大きいのはおそらく、「熊と馬が好き」ということ。
熊のぬいぐるみはシュタイフを挙げればわかりやすいですが、こういうのがお店でもたくさんあります。でも、これはまぁ、分かる。
そして何より馬!ドイツ人の女の子は馬が大好き、と訊いていましたが、その好きっぷりが凄い。
いくつか証拠写真を並べてみます。
たとえば日本でも人気のリアル動物フィギュアの「Schleich」。
ドイツだとこうなります。一面全部馬。
よくもこんなに種類があったもんだ(空きは売り切れ)
上写真の側面。騎手との組み合わせも自由自在
馬のグッズを専門に扱う「Horse Dream」なんてブランドもありました。
そして極めつけは一面を占める「馬関連の文房具」
拡大してみましょう。
ノートはこんな感じ。デフォルメも人物も一切ありません。
リアル、馬。
そして明らかに女児向けであることを表すかわいい装飾。
馬好きにはたまらない一冊
「マイリトルポニー」が人気だそうですが、馬で子供向けと来ればドイツではそりゃ受けるだろうなと言う気もします。
フランスのおもちゃ屋
大きなスーパーやデパートに行くことが出来なかったので、回れたおもちゃ屋は一軒だけでした。
それでもドイツとの違いははっきりと見て取れました。
ドイツからほど近いということでボードゲームの扱いもそれなりに大きいものの、占める面積は店舗の1/8程度で、場所も店舗の一番奥。
黄色のHABA棚の奥がボドゲゾーン
置いてあるゲームもドイツとちょっと品揃えが違います。
戦略重視、重めのいわゆる「ドイツゲーム」な物は少なく、奥の棚に。
右の棚一面が重ためのゲーム
「クアルト」「コリドール」に代表されるようなロジカル、アブストラクト(抽象的)、シンプルなルールの物が多い印象でした。
この辺、言葉で伝わりにくいので、写真のラインナップから感じられればと思いますがいかがでしょうか。
一言で言えば「大人も楽しめるアブストラクト」が多い印象
上写真の特徴的な部分を拡大(真ん中下段)
そして女児向けでは比較としてフィギュアの棚を撮ってきました。
メーカが違うので全く同じ比較は出来ませんが、正面に来るのは「お姫様」で種類が多い。「まさにフランス」という感じがします。
お姫様の種類がとにかく多い
お姫様が上、騎士が下(ドイツでは逆)
あと、感覚的にはおもちゃ屋自体が少ない感じ。
ドイツに比べて多いと感じたのは服屋と本屋。実際に統計でもドイツ人は服飾にかける金が圧倒的に他国より少ないです。(その分、家と車に掛けるお金が多い)
スイス
スイスのおもちゃ屋の比較も行いたかったのですが、残念ながら日曜日で店舗・デパート・観光地全てお休み。
ただの日曜日でこれって・・・よく生活が回るなと思います。マジで。
唯一見つけたのは駅構内の本屋で、駅構内だけは店舗が開いていました。
(あとはスタバとマクドナルドぐらい)
店舗外観はこんな感じ。
中は狭いながらもゲームをしっかりと置いていて、少なくともこの街ではボードゲームが結構大きな市場であることを感じさせました。
やはり強いHABA
「街コロ」もありました
閉まった店舗ばかりながら、街を歩いた印象は服屋が圧倒的に多い印象。
これもドイツの服屋が相対的に少ないから、でしょうかね。
逆に本屋はほとんど見かけませんでした。
おもちゃ屋は歩いた限りゼロ。
ただショッピングセンターも閉まっていたので、そこに入れれば印象も変わっていたかもしれません。
文化を繋ぐもの、分けるもの
国境をまたいで感じたのは、国をまたげるもの、またげないものの違いでした。
例えば行政圏は国境をまたぐと明確に変わるため、道路や交通などは必ず変わります。
フランスでは信号が自動車用・歩行者用に加えて自転車用らしきものがありました。(中段の小さい信号)あと、信号が小ぶり。
おもちゃみたいに信号が小さい
また言葉も違います。
ドイツでボードゲームを買うと、英語表記すらなく、ドイツ語のみで記載されていることがほとんどです。
そしてスイスのバーゼルは街の表記もほとんどドイツ語。(独仏英の併記も多い)
ここならドイツのゲームをそのまま持ってきても遊べます。
それに対してコルマールは当然フランス語。
この違いは店舗でのボードゲームの扱いに差を付けている気がします。
子供向けゲームを専門にするHABA社はどこでも強いのですが、これはゲームのルールがシンプルな上、各国語ルールを必ず同梱しているというのも強いでしょう。
一つ・二つだけでなく、あるカテゴリの商品が大量に言語対応すると、店舗でも安心して扱えます。
HABA社はそれを目指して、自社でそのカテゴリを構築していると言って良いかと思います。
ドイツがボードゲームの本場というのは紛れもない事実ですが、
「なぜボードゲームはドイツで成功しているのか」
「近隣諸国ではどうか」
「その違い(ドイツと近隣諸国の違い)はどこから来るのか」
はこれからの日本のボードゲーム市場を考える上でも重要だと思っています。
今回はじめてドイツで日曜日を過ごして感じたのは、「日曜日にやることが本当にない」ということ。
「日曜日は店が閉まるよ」と訊いてはいましたが、路面店からデパート、個人経営の店まで軒並み閉まって本当にやることがありません。
「日曜日に締めなきゃダメ」という法律は無くなったって訊いたんだけどなぁ・・・
デパートも閉まってるとは予想外。甘かった。
確かにこうなると趣味に走るしかないので、この国でボードゲームが遊ばれるのは分かります。話では分かっていても、世界的観光地がガラガラになる、というのを経験しないとなかなか実感がわきませんね、こういうのは。
世界的な観光地です。これでも。
日曜は買い物に行けないので、私の取引先のドイツ企業で話を聞くと、みんな平日に買い物をするそうです。
ドイツ人は普通会社の近くに住んでいるため、会社帰りに買い物に行って、そのまま帰れるわけです。(平日も6時、遅くても8時にはレストラン・バー以外の店が閉まる)
こうして休日には何もせず家でゆっくりゲームをすると。
とはいえドイツ人の多くはボードゲームを遊びますが、それほど熱心でもありません。遊ぶのは伝統的なゲームが多く、新しいボードゲームを次々遊ぶのはドイツでもごく一部のマニアだそう。
それでも遊ぶ層が厚いので市場が成り立っていると思われます。
(私の知り合いでガチのボドゲ好きは一名だけ。彼も娘が生まれてそちらにかかりきり)
※これは以前にドイツ人からプレゼントされた「ドイツ人ならみんな知ってる伝統的なボードゲーム」
してみると日本に必要なのはまずはその「日常の仕事の効率化」「過剰サービスの廃止」ですかね。
そもそも大都市が無く、会社の近くに住めるという住宅事情も大きいので、この辺の前提条件が違うことはあらかじめ抑えておく必要があります。
ちなみにドイツ人に言わせれば、土日に店が閉まるのはドイツ人からしてもやっぱり不便だそう。
ドイツでの展示会や賞、企業との折衝など大きな方向からの手を進めていらっしゃる方はいらっしゃいますし、それはもちろん素晴らしいことです。
私は私で、小さいながらも調べられることは自分なりにまとめて、今後も発信したいと考えています。