先生方、ゲームを作りたいならご相談ください
朝日新聞でニュースになってたんですが、大学教授が自分の研究を知ってもらうため、ゲームを作ったそうです。
「ばい菌カード 知識ゲット」-朝日新聞7月30日(夕刊)
そうしてみんなに知ってもらう努力をするのは大賛成ですが、良く考えると「XXすごろく」とか「XXトランプ」、「XXかるた」って多いですね。
確かにゲームを作る知見が無くても簡単に作れる上に、マスやカードの数だけ知見やネタを放り込めるので、知識を増やしてもらいたいときには便利な手段です。
でも、正直なところ、これってみんな遊ぶのかな?という疑問はあります。
もちろん「ベルサイユのばら 名言カルタ」とかは大賛成ですよ。
好きな人はお金を出してでも買うし、見ているだけでも楽しいし、一度は遊ぶ人も多いだろうし。
なんだったら読み上げて欲しいですよね。音声CDとかついてたら喜ばれそう。
え?「アイカツ格言かるた」はアイカツ全話のアイカツ格言がカルタになっているうえ撮りおろし音声CDがあるんですって!?(唐突な宣伝)
で、よくよく調べると都道府県で「県の名産( or 歴史など)に即したゲームを作る事業」なんてのがあったりします。(下記、google検索結果上から適当にピックアップ)
島根県:しまねの農業農村整備すごろく(トップ / 子育て・教育 / 教育・学習 / 小・中学校教育 / 水・土・里とのふれあい / しまねの農業農村整備すごろく)
遊んで 学んで みんなで支える「認知症456(すごろく)」 | 水戸市ホームページ
宮崎)県内の名所や地理、歴史を学べる「宮崎すごろく」:朝日新聞デジタル
事業に採用されると公共のお金で何千部と製造できて、小学校などに配られたり、特産品として販売されたりするものが多いよう。
娯楽に表立ってお金を使いにくい学校には娯楽を、地域の製造業者にはお金を落とすWin-Winの事業です。
私も子供を学童に通わせて、保護者代表もやっていたことがあるのでわかりますが、ただでさえ無いお金を最低限必要な部分に回すため、娯楽はどうしても後ろに回されがちです。
自作ゲームも含めてボードゲームの寄付は行いましたが、おそらくはそうした数少ないおもちゃを何年も使い倒すことになるのでしょう。
そうした施設に対して、施設側がお金を使うことなく娯楽を用意し、配ってあげること自体は良いと思います。
ただ、その内容が「すごろく」や「かるた」で本当にいいのか?という疑問は大いにあります。
官公庁の方がゲーム制作のプロではないので良い悪いの判断が難しいとは思いますし、そもそも「面白いゲーム」を基準に官公庁でコンペができないであろうことも分かります。
理解はしますが、結果として遊ばれないおもちゃを作って配ることは、果たして意味があるのか?
そもそもこうした補助金目当てでゲームを作った場合、単年度予算なので一気に数千部を作り、そのあとは作れないという形になるでしょうから、作る側としても「良いゲームを作ろう」というモチベーションにもなりにくいだろうという懸念もあります。
なぜゲームを作りたいのか?
どの記事や事業概要でも、「子供にも触れてもらいたいため」というお題目が並びます。
ぶっちゃけた疑問ですが、今どきの子供って、すごろくが置かれていて、そんな遊びますかね?
うちの娘なんてシビアですよ。
小さい時からボードゲームに触れあっているという事情はあるでしょうが、面白いものは何度でも遊ぶし、面白くないと判断すれば絶対に遊ばない。
昔より娯楽が増えている以上、子供の見る目だって厳しくなっていると思います。
「おもちゃがあれば遊ぶだろう」という言い方は子供に失礼ですし、子供もそこまでバカじゃありません。
江戸時代ならでんでん太鼓があれば子供は喜んだかもしれませんが、「よし、地域の特産品の絵柄で、でんでん太鼓を作るぞ!」って話は聞きませんよね?
今どき子供がでんでん太鼓ではそこまで遊んでくれないであろうことは分かるのに、何で令和の時代に「すごろく や かるたは子供も喜ぶ」と思えるんでしょうか?
家に帰ればスマホもNintendo switchもあるだろうに。
もちろん学童などで他に遊ぶものが無いから、寄付されたおもちゃを「仕方なく遊ぶ」ことはあるでしょうが、それで良いとは思いません。
実際、学童に置かれていたゲームやおもちゃはどれもボロボロになるまで遊ばれていました。
さらに言えば、そもそも「おもちゃは子供が遊ぶ」という発想で良いのか?という疑問もあります。
「子供『も』遊ぶ」ゲーム・おもちゃはダメなのでしょうか。
面白ければ大人だって遊びます。
むしろ大人も遊んで、より知識が広がるならより良いでしょう。
そんな好例が、「Wingspan」ではないでしょうか。
ドイツではボードゲームが盛んで、毎年「年間ボードゲーム大賞(The Spiel des Jahres)」が選出されるのですが、3部門ある賞のうち、2019年の「エキスパート部門」 に選出されたのが「Wingspan」でした。
このゲームは鳥の「観察(調査)」がテーマで、鳥を呼び込んで集めることを競うそうです。
(私は未プレイなので伝聞です)
鳥のカードは170種類にも及び、鳥の名前と画像だけでなく、特徴まで書かれたカード類はそれ自体がさながら図鑑です。
これを通じて野鳥のことを知る人も多いでしょうし、そうした意味でも知識を広める成功事例ではないでしょうか。
- ゲームが面白いから、遊ばれる
- 遊ばれて、知識が広がる
- 遊ばれるから、お金をかけて良いコンポーネント(部品)が使われる
という好循環になれれば、と思います。
ちなみに「エキスパート部門」という名前からも分かるように、この「Wingspan」、決して子供向けではありません。「プレイ人数:1~5人、プレイ時間:40~70分、対象年齢:10歳以上」だそうなので、小学校高学年以上、どちらかと言えば大人がターゲットの作品です。
私は曲がりなりにも8作のボードゲームをリリースし、海外ライセンスを結び、一般店舗に自作を置いて頂いています。
※ヨドバシカメラに自作が売られていて、嬉しくて撮った一枚
そうした実績で、それなりにご評価を頂いているとして言わせて頂くなら、
「どうせなら面白いゲーム作りましょうよ!」
もちろん大学の先生方や官公庁で働いている方はゲームの専門家ではありません。
だから、「頑張って面白くしろ」という気はありませんし、それは皆様の仕事ではないと思います。
だからこそ、ゲーム作りをぶん投げてください。
子供向けのシンプルなゲームが得意な方、何時間もかかる「重量級」が作れる方。ゲーム制作者でもいろいろなタイプの人が居ます。
また、ルールだけの提供から、自分のところで制作から流通までできる会社形態の方も。場合によってはデジタルゲームにしても良いかと思いますが、こっちは知見が無いので別の方に。
(例えば化学合成をゲームにするなら、カードゲームやボードゲームより、デジタルの方が良いと思います)
「ゲームにして色々な人に知らしめたい」と思われる方がいらっしゃいましたら、自分でゲームのルールを考えなくて結構です。
ぜひ、お近くのゲーム制作者に一声かけてあげてください。
「そんな人知らない」という場合は、私のサイトのお問い合わせからご連絡いただければ、誰かご紹介できるかもしれません。
問い合わせ - ペンとサイコロ -Pen and Dice-
実際にゲームを作るかはともかく、コストや作る手間や流通について、情報提供ぐらいはできるかと思います。
ちなみに私の住まいは奈良ですので、NAIST(奈良先端科学技術大学院大学)や奈良の大学ならお伺いしてお話も可能です。(ターゲットが狭すぎる・・・)
アメリカでは科学技術などの解説を一般向けにする専門職があると伺ったことがあります。:要出展
仮にも工学部出身として、大学での研究を、ゲームを通じて一般に伝えることができれば個人的には非常に興味があるので、ご興味をお持ちの方はぜひご連絡ください。
結構本気のご提案とお願いです。
※「すごろく」「かるた」がダメ、という訳ではないのですが、すごろくだって面白く作るにはそれなりにスキルが必要ですし、新しいものほどきちんとバージョンアップされています(例えば「人生ゲーム」の最新版では「あがり」という概念自体が無くなったそうです)。
上記では一概に「すごろくはダメ」と言いたいわけではなく、そうしたゲーム作りの経験、言ってみれば「ゲームとして面白くなる工夫を、きちんとスキルや経験のある人が作っているのか?」という点を気にしています。
ちょっと上の書き方では誤解を招きかねないと思いましたので、ここに補足します。