ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

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価格差別と映画館

ティム・バートン好きの嫁に連れられて、「ダークシャドウ」を見に行った。

Dark Shadows / mediafury

原作知らないから何がどうコメディなのか分からないけど、
「大人向けブラックコメディ」というスタンスがはっきりしているのは良いね。

それにしてもクトゥルー神話の舞台もアメリカ東海岸(マサチューセッツ)なんだけど、
ヨーロッパではなく、むしろアメリカの東海岸でああいう神秘物が
たくさんあるのはそういう時代があったのかね?
知っている人がいたら教えてください。

で、相変わらず映画の内容について話をするつもりは一切無いです。
子供が預けられる、となって急いで見に行った映画なので前売り券もなし。
映画館横のチケット屋で前売り券を1,500円で買って見に行った。
ギリギリに飛び込んだ映画館では一番前の席でものすごく見上げなければ見られない。
首が痛ぇ・・・
う〜ん、なんとかならんのか?

価格差別とは

経済学では「価格差別」という考え方がある。
簡単に言うと「高くお金を払う人には高く、お金を出せない人には安く売る」ということ。
ただ同じ物に別の値札を付けて売るだけでは、当然安い方からしか買わなくなる。
これは「裁定」という。
この辺の説明はこの本がもの凄く上手。
クルマは家電量販店で買え!―価格と生活の経済学スタバではグランデを買え! ―価格と生活の経済学


価格差別を行うには、競合品に流れない構造が必要になる。
だから日用品よりも、映画や音楽といった、他社で同じ物が出せない物にたいして複雑な価格差別が行われる。
わかりやすい例では「初回限定特典版」
ゲームでもアニメでも音楽でも映画でも漫画でも、初回のみ限定版を出す例は多い。
もやしもん(11) (イブニングKC)(通常版)もやしもん(11)限定版 (プレミアムKC)(限定版)
しかも、初回限定版は特典が付いていて高い。
でもファンは買う。
これなんかは価格差別の典型と言える。


逆に一定期間が過ぎると、値下げバージョンが出る場合もある。
これも「高く買えない(あるいは買う気がない)人にも売る」という目的のため。
ゲームの場合は中古市場が発達しているなどの特殊事情もあるが、おおよそこの説明で間違いはないだろう。
モンスターハンターポータブル 3rd(通常版)モンスターハンターポータブル 3rd PSP the Best(廉価版)

携帯電話における価格差別

しかし、すでに価格を上げるという価格差別が通用しない業界もある。
それは業界自体が衰退していたり、汎用品になっていて価格を上げることに対して顧客の目が厳しい場合など。


例えば映画
映画一本の「標準価格」1,800円
ごく一部「デラックスシート」など高級路線を取っている例もあるが、基本的に価格を上げるのは難しい。
ではどうするか。
映画では「前売り券」を買うと安く映画を見られる。
しかも前売り券には特典を付けている場合も多い。
つまり、より映画が好きでチェックしている人には、金銭的にも物質的にもメリットを付けることで
「お得感」を演出している。


携帯電話の場合はもっと特殊な形で価格差別を行っている。
先日携帯電話を変更したことはブログでも触れたが、携帯電話の料金体系はものすごく複雑になっている。
そして、何も考えずに携帯電話を持ち続けたり、目に入った物に機種変更すると損をするようになっている。

例えば特定のサービスを無償で提供し、それに入ると月額料金にも割引サービスを付ける、という物がある。
合計で1,500円ほどのサービスを無償で提供され、さらに月額1,000円も割引があるなら、とてもお得に感じる。
でも、「ただしサービスの無料化は当初二ヶ月のみとします」という注意書きがあり、
二ヶ月で解約しなければ結局損になる、という仕組みであったりする。
これ、勧められたので実際契約したが、来月にしっかり解約手続きが出来るか、自分でも自信がない。
まぁ、良くできていると思う

「悪い」価格差別

要は価格が成熟した産業では、標準価格から「いかに下げるか」でしか価格差別を実現できない。
価格差別の元々の目的は「いかに取れるところから付加価値を付けてお金を取るか」といえる。
これは高付加価値戦略で顧客の「満足」を高い金額で売っているといえる。
それに対して、デフレ市場における価格差別は
「値引きで購入する客にいかに不便を付けてやるか」になっているのではないだろうか。
これはつまり顧客の「不便(不満足)」を値引きで相殺しているといえないか。

映画館の敵はツタヤとHulu

携帯電話については複雑すぎるので何とも言えない部分があるが、
映画館については大規模の映画館からシネコン(スネマコンプレックス)に主体が移った、
3D映画化で単価アップと映画館への回帰を狙ったというあたりが大きな構造の変化だろうか。


映画館の一番の敵は「テレビ」じゃないかと思う。
家庭のテレビが大画面化し、映画館で見る映画との差は以前より小さくなった。
もちろん家庭での迫力は映画館に及ばないが、
「わざわざ映画館に行ってまで見たい映画かどうか」という選択時の基準は以前とは変わっているだろう。
第一、家で見る映画はレンタルから配信になってますます「いつでも気楽に」見られるのに対し、
映画館はシネコンにより複数上映が進んだとはいえ、やはり一時間・二時間待ちが普通に起こりうる。
「今日は映画を見る日」とスケジュールを組まなければいけない娯楽であることは変わりないだろう。


この状態を変えない限り、価格構造を変えるのは難しい。
100席ある映画館で2時間映画を見て1,800円。
この基準や構造から考えないことには、映画業界ってまだじり貧が続くと思う。

映画館再興策

例えば小さな規模で、60分上映の映画館を作る。一回500〜1,000円。
内容は外で配信しても良いが、その場でしか見られない映像技術を使うことで
「わざわざ見に来る」環境を作る。
・・・というと一番近いのはプラネタリウムだ。

planetarium / MowT

池袋水族館や東京スカイツリーなど、プラネタリウムが増えているらしいが、
あれを「特殊な形状の映画館」と考えれば、「成功している映画館の形」とも見られる。


ただ、映画館の一番苦しいところは「定額制」だと思う。
映画館にたくさんお金を落としてくれるのは、映画ではなく食事やパンフレット。
ゲームセンターでは同じ時間遊んでも、人により落とす金額はかなり変わる。
定額制のマンガ喫茶やカラオケは、滞留時間を長くすることで客単価を上げることが出来る。
映画はどちらも出来ない。
映画がどれだけ好きでも、映画に不満でも払う金額は同じ。
これをもっと抜本的に変えなければ、上に書いたような「いかに値引くか」の発想から抜けられないだろう。


映画を気に入った人が、より長く、高いお金を払ってでも楽しめる。
そんな付加価値が出来ればいいのにと思う。
例えば今流行の「脱出ゲーム」を映画と組み合わせて、映画の鑑賞後に気に入った人は脱出ゲームに参加できる。
映画の内容とマッチすればなかなか楽しい物になるし、単価が高くても納得感が高い。
これは一例だが、とにかく構造から変えないと映画の再興って難しいんだろうな、と
人ごとながら思ってしまった。