ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

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悪の組織は、なぜ懲りずに正義の味方に負け続けるのか

悪の組織の計画は、正義の味方によってことごとく粉砕される。

Explosion (Movie Park Germany) / gnislew

でも、悪の組織は諦めない。
彼らは飽くなき開発努力と、作戦の立案で、夢の世界征服に向けての計画を練り続ける。


でも、その負け続ける戦い方に合理性はあるのか?
悪の組織論、第五回では、悪の組織がなぜ負け続けても諦めないのか。
その努力の合理性を考える。

今までの悪の組織論シリーズはこちら。
・リンク → 悪の組織を傾けているのは科学者じゃないか?−わかりやすさを、コーディネート
・リンク → 悪の組織は失敗した幹部をどう処置すべきか−わかりやすさを、コーディネート
・リンク → 悪の組織の目標はなぜ「世界征服」なのか−わかりやすさを、コーディネート
・リンク → 僕が『イーッ!』以外の発言権を得た日のこと−わかりやすさを、コーディネート

町内征服の非合理性

悪の組織の目標は世界征服、でもその前段階の日本制服の前段階の町内制服にも手こずっている。
彼らのいう「世界征服」が何なのかは置いておいて、
そもそも、彼らが最初に侵略しようとしている町内に、
日本有数と思われる「正義の味方」が居ることが悪の組織の最大の不幸と言える。

San Diego Comic-Con 2011 - Power Rangers pose with kids (Nickelodeon booth) / PopCultureGeek.com


常識的に考えれば、悪の組織が拠点を移動することは合理的に見える。
東京で正義の味方に邪魔されるなら、まずは東京から交通の便の悪い地域から征服を開始すれば良い。
正義の味方はそれを職業にしているパターンは少なく、通常は別に仕事や生活を持っている。
(「地球防衛軍」などの組織に所属している場合は別)
仕事なら気軽に拠点は移せないだろうし、学生なら長距離移動を続けさせて金銭的に疲労させることも出来る。
それなのに、なぜ同じような地域でテロを起こし、あっさり正義の味方にやられてしまうのか。

理由1:大義名分の前に、撤退は許されない

理由はいくつか考えられる。
例えば「負けを認められない」という組織内の事情。


「世界征服」を旗印にしている以上、その課程の敵はすべて排除しなければ、組織内に示しが付かない。
「侵略しやすい地域から攻める」
というスマートな方法をとると、体育会系な悪の組織では、上層部の信頼が揺らぐことになりかねない。
悪の組織は上下関係のしっかりした社会とはいえ、それはトップのカリスマがあってこそだと言える。
上下関係がしっかりした組織を保つからこそ、トップは強い姿勢を示し続けなければいけない。

逃げて何かが生まれるのか?

また、実際には「正義の味方を生んでいるのは悪の組織」という事情もある。
悪の組織がある地域に、自警団的に正義の味方が生まれるとすると、
別の地域を攻めると、その地域で新たな正義の味方を生む可能性がある。


地球防衛軍的な組織なら、組織ごと移転できるだろうし、
民間の単独〜複数人の正義の味方の場合、どの地域で自然発生するか予測できない。
大きな組織を預かるトップとしては、戦略的に侵攻する地域を予測できないという問題がある。

継続が大事

また、悪の組織の目的は営利ではない。
同じ地域で連続して犯罪を起こすことで、悪の組織の恐ろしさを植え付ける必要がある。
この意味でも、同じ地域に懲りずに侵攻することが重要だと言える。

Scream-03 (Small) / University of Salford


正義の味方が警戒する地域に敢えて攻撃を仕掛けてこそ、
地域住民の不安を煽り、地域支配への道が開けるというものだ。
実際に、悪の組織は正義の味方の実効支配地域へと、分かって進出している。
その証拠に「来たな、××」と正義の味方がやってくることを想定しているし、
あらかじめ戦えるだけの戦力を持って、地域に侵攻している。
使うかどうか分からない武器を持って精神を疲弊させるより、
正義の味方を誘い出して、さっさとケリを付ける方が戦略的には効果的と言える。
(だから負けても良いとはならないが)

理由2:現実的に、拠点を動かせない

もう一つ現実的に考えると、悪の組織の巨大な組織を簡単に移動できないという現実もある。


悪の組織につきものの「秘密基地」「開発部隊」

LOMO 8M【無敵鐵金剛製造所】 / We Make Noise!

どちらも巨大な施設が必要で、作ったからにはおいそれと動かせない。
またあれだけの開発部隊があるのなら、
地域の町工場や研究機関とも少なからず交流があると思われるので、
組織の移動はそのまま開発力の低下(少なくとも遅れ)に繋がる。
これも明確なメリットがなければ移転が難しい理由になる。

トップ(社長)は本業に忙しい

悪の組織はどこもお金に関してはかなり余裕がありそうだが、
世界征服事業は失敗続きで赤字とみて間違いない。
とすると、開発物の外部販売か、別事業での利益の横流しが資金源と思われる。
「秘密結社」「悪の組織」と言っている以上、別部門があり、そちらが利益を出しているのだろう。
つまり、悪の組織は大企業の「社長の道楽事業」、あるいは「将来を見据えた新規事業」と考えられる。

営利企業で何年、何十年も赤字の新規事業が成り立つのか?
と思うが、上場企業でなければ全然可能。
一番有名で巨大な例はサントリーのビール事業」だろう。

SUNTORY MALTS BEER / psd

なんと開始以来45年間連続赤字
2009年にようやく黒字化したことでニュースになったが、累積赤字を考えると
個人的にはどうなのか・・・と思うが・・・


悪の組織にあれだけお金を流せるからには、本体の組織はそれより大きいのだろう。
となると社長もヒマじゃない。
悪の組織のトップ(おそらく本業の社長)は本業に忙しいのだろう。
悪の組織においては幹部会に顔を出し、叱咤激励と方針説明ぐらいしか出来ないのも、納得といえる。

※悪の組織(?)のトップが巨大組織の課長、という例。社内の横流しで資金調達。

一発逆転を信じて

結局、世界征服を信じて組織を運営するなら、
同じ地域にしつこく侵攻する悪の組織の戦略は、あながち間違っていない。


事業が上手くいかずに撤退するというのは一つの結論だが、
撤退しないのなら、中途半端な方針転換は改善にならないことも多い。
戦略を変えるのなら、やはり理由が必要だ。
正義の味方という強い競合を避ける戦略が見つからない以上、
悪の組織はその排除方法を考えるしか方法はない。


ビジネスにおいては、地域戦略として競合が強い地域を避けることもある。
競合が居ない地域で強い企業となるとか、そういった地域で力を蓄えるという場合だ。
しかし、悪の組織はこの戦略が使えない。
「世界征服」をお題目にする以上地域分割はあり得ないし、地域を支配しても「力を蓄える」ことにはならない。
(企業なら資金力が増えて、巨大な投資が可能になる)

Kat JB pun Jusco.... Nagoya pun Jusco / emrank

※イノシシや狸の出るところに出店しろ、という徹底的な地方出店戦略から日本最大に成長したジャスコ(イオン)


悪の組織が「世界は諦めて、北海道の実質支配」とか大きな方向転換を行わない限り、
「負け続けてもいつか勝てる日を信じる」という現状の方針は変わらない。
組織の設立理由からして負け戦、とはなかなか因果な商売と言える。
「夢は大きい方が良い」と言うが、過去に成功した者のいない「世界征服」にこだわり、負け続ける悪の組織はどうか。
「成功した者がいないからやめるべき」「成功した者がいないからこそ面白い」
どちらも正しくて、誰かが成功してこそ認められるものだと思う。
ビジネスでも、音楽でも、芸術でも、悪の組織でも、成功するまではバカにしか見えないモンなんだなぁ。

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