ゲーム制作で無駄に考える、ということ
「ラタキアの魔女」という短編集が好きです。
初版帯は「ピューと吹く!ジャガー」等でおなじみの うすた京介 先生で「シュールレアリズムほのぼの漫画界の雄」とあります。「シュールレアリズムほのぼの漫画」とはすなわち うすた京介 先生のことと考えれば、先生に匹敵する作者という意味かな、と勝手に考えています。
作品もさることながら、今日はあとがき漫画のセリフを紹介します。
あとがき漫画では、「マンガ砂漠」で さ迷う瀕死のマンガ家が、神様に「欲しいものは?」と問われて「ケシカスの出ない消しゴム」を望みます。
ネームを書いては消し・・・
下書きを書いては消し・・・
セリフを書いては消す・・・
作品には消して残らないがマンガは書く作業より消す作業の方が多い!
この果てしない試行錯誤こそマンガ制作の核心でありひらめきの源泉なのだ!
この作品が出て二年半。
自分でゲームを作るようになって、この言葉の意味がようやく実感できるようになってきました。
5月5日(木)には東京でゲームマーケットが開かれますが、残念ながら今回は参加できません。(行かれる方はぜひ楽しんで来て下さい)
そこで、ここ数週間はゲームのアイデアを練っていました。
私なりのゲームの作り方
私のゲームの作り方は決めたテーマ(システム)の徹底的な解剖から始まります。
例えば「陰陽賽」のテーマは「ダイスゲーム」でした。
サイコロを使うのは好きですが、運に頼るゲームは嫌いです。
そこで「サイコロを使うが運の要素を減らし、戦略性の高いゲームを作ろう」と考えました。
そのテーマに最も近いゲームが「ブループリント」でした。
このゲームではサイコロを積み上げて、設計図(ブループリント)通りに積み上げます。(積み上げなくてもOK)
ではこのゲームの問題点は何か?
改善できる点は何か?
そうして何日も頭の中でダイスを振り続けました。
そこで気がついたのが、「既存のゲームは、ダイスの上面しか使っていない」ということです。
製作後「ダイスゲーム百科」ほかで調べましたが、今のところ「ダイスの側面を主に使うゲーム」は唯一ではないかと自負しています。
気づくには時間が必要。その時間は無駄ではない
今回は「マップとリプレイ性」というテーマで考えていますが、結果として「『ROOM25』はとんでもなく素晴らしいシステム」という結論から抜け出せていません。
この数週間で、考えたアイデアが何度もこのゲームに帰着して消えていきました。
その間にはゲームですらない、様々なアイデアの断片がこうして出ています。
現在この方向性では出口が見えないので、全く別の切り口からのアイデアを組み上げようと奮闘中です。
今回もいくつものゲームを解析し、色々なゲーム解説、レビューサイトを参考に改善点を探っています。
それでも結果は出ないときが多く、その何十時間は「無駄」な時間です。
しかし、その「無駄な時間」こそが、新しいアイデアに「気づく」ためには必要なのだと思います。
このブログの筆者は美大生になった方のもので、その最初の授業について、この記事では書かれています。
この最初の授業については、「かくかくしかじか」でも全く同じ事が書かれていたなぁと思うけど、その結論や印象は大分違います。
良い文章なので、ぜひ内容は記事を読んで確認ください。筆者自身が要約されているので、その部分を引用させて頂きます。
大事なのは、気づくこと。
大事なのは、ただただ、見ること。
★ がっつり対象物と向き合って、時には距離を置いてじーっと見つめてみるだけで、正しいと思っていたことが、ぜんぜん違っていることに気づく。★ 違っているなと思った時は、一カ所がおかしいのではなくて、全体が少しづつ違っているから、全体に手をつける必要がある。
★ 教えてもらうだけでは力はつかず、長い時間をかけて自分で「気づいた」時はじめてそれは自分の力になる。
私の場合は、まさにこの最後の「長い時間をかけて自分で『気づく』」ことをやっているわけです。
そのゲームは世界一か?
医療用機器(手術針など)製造の「マニー」という会社が栃木にありますが、この会社の方針が好きです。
■トレードオフ(やらないこと)
以下のトレードオフを明確にして、戦略立案の基準にしております。
(1)医療機器以外扱わない
(2)世界一の品質以外は目指さない
(3)製品寿命の短い製品は扱わない
(4)ニッチ市場(年間世界市場 5,000億円程度以下)以外に参入しない
「世界一でなければ、お客様は世界一の商品を買えばいい。うちの会社が作る必要はない」
というのがマニー社のスタンスです。
自作ゲームとはいえ、市場に出すからには商品です。
私は、同じシステムでもっと優れたゲームがあるなら、そちらを買った方が良い、と考えています。
だからこそ、自分のリリースするゲームはそれだけの独自性があるもの、新しい面白さを提供できるものにしなければいけない、というのが私の考えです。
私の日常生活はゲーム製作には向いていません。
ゲームを日常的に遊んでいない(遊べない)し、仕事はゲーム・印刷・デザイン等とも全く関わらない。そもそもボードゲーム歴だって大して長くないし、所有数も少ない。
その「向いていない」人間が、他人に喜んで頂くゲーム作りをするには、無駄と思われるほど時間を掛けて考えるしかない、のではないでしょうか。
最後におしらせ。
「ペンとサイコロ」はゲームマーケットに出展しませんが、通販は常時行っています。
ご興味をお持ち頂いた方はこちらからご購入下さい。