ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

ボードゲーム・3Dプリント作品・3DCG制作を行う「ペンとサイコロ」のブログです。公式サイトはこちら→http://penanddice.webcrow.jp/

ナツノクモと婚活

ゲームなんて所詮作り物でしょ、と言う人は
「リアルな」ゲームではなく、MMORPGを一度ガッツリやってみたら良いと思うよ。
ゲームは作り物だけど、その中にはしっかりともう一つの「世界」があるんだから。


突然ですが篠房六郎というマンガ家の、ナツノクモという作品が好きです。
その前の「空談師」も好き。単行本の物ではなく、読み切りの方。
ナツノクモ 1 (IKKI COMICS)ナツノクモ 2 (IKKI COMICS)ナツノクモ 3 (IKKI COMICS)ナツノクモ 4 (IKKI COMICS)
ナツノクモ 5 (IKKI COMICS)ナツノクモ 6 (IKKI COMICS)ナツノクモ 7 (IKKI COMICS)ナツノクモ 8 (IKKI COMICS)

仮想現実で、大切な物

ナツノクモ・空談師はともにネットゲームのお話。
(「リネン」という会社の運営するとてもリアルな3DMMORPG、というところは共通)
世界観は共通だが、登場人物や描きたいポイントはそれぞれ全く異なる。
ただ、ネットゲームという「仮想現実」がどこまでその人にとって重要か、
が作品の中で重要なポイントとなっていることは共通している。


いくらリアルになっても、ゲームは所詮ゲーム。
その中で人を殺しても殺人罪になるわけじゃないし、殺されても死ぬわけじゃない。

Quake 4: Peekaboo / Psycho Al

自分のキャラクターがイヤになれば、一から別キャラクターとして、別の人格としてやり直すことも出来る。


では、その中で大切な物は何か。
普通はその「キャラクター(作品中では「外装」)」だ。
ネットゲームは、とにかくプレイ時間が長い。
プレイ時間に上限は無いので、数百時間とか一千時間以上接続しているキャラクターが普通にいる。
長い時間プレイするとその分強くなるので、プレイ時間の長いキャラクターは(通常)強い。
だから、長い時間をプレイした(育てた)キャラクターへの愛着はみんな強い。
ゲームでそれだけ強い人はゲーム中で尊敬されるが、
逆に言うとそれだけの時間をゲームに費やしていることになる。(通称「廃人」)
ではその「強さ」がゲームプレイヤーの一番大事な物か?
それは違うと思う。
他にもレアアイテムやスキルや・・・というのがあるだろうが、一番は「関係性」だと思う。
誇張や誤解を含んだ言い方を敢えてするが、「スゲー面倒くさいSNSがネットゲームなんじゃ無いかと思う。
(もちろん全てのゲームが、というわけではないが)

大切なのは「コミュニティ」

前置きが長くなったが、「ナツノクモ」の舞台はそうしたネットゲーム上のある村。
このコミュニティはその管理者が両親を殺した上、複数の関係者の死により
世間の非難を浴びることになる。
ネットの世界の通例で、そういったコミュニティには外部からの強力な攻撃を受ける。
ナツノクモでは、単純なゲーム上での攻防を描くほか、
精神病院(セラピー)の役目も果たしていた「動物園」の人間関係を丁寧に描こうとしている。


自分の生活を犠牲にしてまで、ネット上の村を守る人達の目的は何だろうか。
それは、自分の所属するコミュニティを大事に思っているかどうか、だと思う。
これは別にネットだからとか、ゲームだからだとかは関係ない。

ネットゲームの可能性

知り合いでもMMORPGで知り合って結婚しました」という人が何人かいる。

Cate Lisle & Electron Cleanslate Wedding / Sean Heavy

※写真はセカンドライフですが、セカンドライフやってた友人はいません。
ゲームの中でも、MMORPGはかなり面倒くさい部類に入る。
複数人のパーティで出かけるなら、あらかじめ待ち合わせしないと行けないし、
一度の遠征にも結構な時間がかかる。
メンバーの一人がトイレに行くなら小休止になるなど、なんだかんだで待ち時間も結構ある。
で、そういう時間の雑談が、出会いに繋がる。
この面倒くささが、ゲームを出会いの場にしているとは思う。


ナツノクモで好きな表現は、「現実」という文字に「リアル」「オフ」の二つのふりがなを使い分けていること。
「リアル」と読む場合は、その反対語は「仮想(バーチャル)」になる。
この場合、ゲームの世界は「現実ではない」という意味で、批判的な意味合いを持つ。
「オフ(オフライン)」と読む場合は、反対語は「オン(オンライン)」になる。
この場合、ゲームと現実はあくまで一つの事象「表裏」であって、優劣はない。
数十・数百時間をネット上で共に過ごした上で会うので、
見た目のギャップはあれど、普通に話ができるのは当然とも言える。

婚活するならゲーム上で

我らが奈良県は、県を挙げて若者の婚活支援を行っているらしい。
まぁ、結構なことで。
・リンク → 奈良県こども・子育て応援県民会議 なら出会いセンター(なら結婚応援団)
(ちなみに2012年2月27日現在の「結婚した」カップルは198組となかなか成功しているらしい)
別にパーティをするのは構わないんだが、やっぱり趣味が合えば話は早いので、
色々な趣味をやりやすい環境作りをやれば良いと思うんだが、どうだろうか。
上ではMMORPGを挙げたが、「一定時間拘束される」「強制力がある」
というのが出会いにはむしろ向いていると思う。
複数回のパーティを主催しても、なかなか継続して会うきっかけになりにくいんじゃないだろうか。


定期的に、集まって趣味で遊ぶ場を設ける方が良い気もするがどうだろう。
言うなれば「大人の部活動」だ。
スポーツでも良いし、ゲームでも良いが、男女で平等に戦えるということならゲームの方が良いだろうか。
ゲームは将棋でも、モノポリーでも良いが、多少でもキャッチーで話題性のある方が良いだろう。
最近だと、カードバトルが人気らしい。
今更ながら、という気もするが。
遊戯王は世界最大の販売枚数を誇る巨大なゲームだが、その歴史もあり初心者にはやはりハードルが高い。
この業界は詳しくないので聞いてみると、ブシロード社の「Vanguard(ヴァンガード)」が人気とのこと。

秋葉原野村ビル 壁面広告 カードファイト!! ヴァンガード / fukapon

・リンク → 株式会社ブシロード
売り上げ推移はこんな感じ。

平成20年7月期売上 3億62百万円
平成21年7月期売上 25億40百万円
平成22年7月期売上 32億71百万円
平成23年7月期売上 64億91百万円

伸びが凄いな!
何?基本はカードだけ?利益率何割だよ、ここ。
いや、それはそれとして、とにかくこれだけ伸びているのなら、ユーザーが拡大しているのは間違いない。
大会では「女性専用対戦台」も用意されていて、結構な数の女性プレーヤーがいることが分かる。
ということで「県主催・定期婚活ヴァンガード大会」とかいいんじゃないだろうか。
対戦ゲームなら、対戦相手を求めて人が集まりやすいだろうし。
いや、本気の対戦で雑談するのかは知らないけどさ、こういう趣味が合う人を集めるのって良いと思うんだけど。


あ、元々は何の話だったっけ。
そうそう。ナツノクモ最後は打ち切られたのか、ちょっとグダグダな終わり方なのがもったいないけど
「趣味のコミュニティにどっぷり浸かる」という生き方もアリかもな、と思わせてくれる作品です。
ちなみに「ゲームの世界を現実のように感じてしまう」ではないです。
それはマトリックスであり、インサイダーケンの世界。
マトリックス 特別版 [DVD]
(「インサイダーケン」はネタが古すぎてAmazonにサンプル画像がないとか!残念)
MMORPG、結構やったなぁ、という方は、是非。