ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

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[ヘボコン HEBOCON:2]「ヘボい」ロボコン

ロボコンをやっていた当時、レベルが低い事は当然「恥」でした。
レベルが低くてNHKの大会には出られませんでしたし、大学ミニロボコンをそれほど積極的に宣伝しなかったのも、自分たちのレベルの低さを認識して積極的でなかった部分はあるかと思います。

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でも、「レベルが高くなければロボコンしちゃいけない」となると、その参入障壁はどんどん上がってしまいます。

 

もちろん、頂上決戦としては、レベルが上がっていく事は良い事です。
ロボット相撲では掃除機顔負けの「吸引力」競争が進みましたし、水道橋重工の「クラタス」を見てロボットを作りたいと思った人はいると思います。

suidobashijuko.jp


でも、その裾野も広げたい。

LEGOは「マインドストーム」というキットで「簡単にロボットを作れる」と喧伝しています。

レゴ (LEGO) マインドストーム EV3 31313

ホーム - レゴ®マインドストーム LEGO.com

 

つい先週発表がありましたが、SONYも同じ領域に参入するそうです。
こっちは正直、事業としてはうまくいかないんじゃないかなぁ、と思っていますが、色々選択肢が増えるのはとりあえず良い事です。

www.gizmodo.jp

 
こうした裾野を広げる活動は、素直に素晴らしいと思います。
私が子供の頃にこれがあれば、延々色々と組み立てていたでしょう。
それこそ私の5歳当時は、英語もロクに分からないのに、MSX2でBASICのプログラムをいじっていたわけですから。

 

こんな「裾野」のアプローチを、斬新な手法で行われているのが「ヘボコン」だと思います。

portal.nifty.com

ヘボコンの「ヘボ」は「ヘボい」の意味で、要は「ヘボいロボットによるロボコン」です。
サイトでも「技術のない人へのロボコン」とされています。
通常であれば「ヘボい」は悪い事で、そんなロボットに対する感想は嘲笑になりかねません。
ところがこの大会では、「ヘボいことこそが名誉」とされます。
何せ、高い技術を披露すると「ハイテクペナルティ」という重大な失点を付けられるほどです。
この大会では「ヘボい」は賛辞であり、試合の勝敗よりもヘボいことを誇ろう、とされています。

 

いいなぁ。

 

デイリーポータルZは日本では有力なネットメディアですが、そのコンセプトは世界に広がり、日本のみならずアメリカ・欧州・アジアと各国で地元の方がヘボコンを開催、昨年には「世界大会」を日本で開催するまでになりました。

例えばアメリカ、バレンシアのヘボコンの発起人はDavid氏。
誰かといえばなんと小型コントローラ Arduno創始者の一人、David Cuartiellesです。

www.arduino.cc

EasyWordMall UNO R3開発ボード USBケーブル付属 Arduinoと互換


まさにロボコンの裾野を広げた当事者が、ヘボコンを支援しているわけです。
レポートでは世界大会の際に日本に招待されたことが書かれていますが、
「ヘボコンでArduino使うのはどう?」
という質問に対して
「そんな頭使ったことしちゃダメだ」
と返した話が書かれています。
また、世界大会でArdunoを景品とするArduino賞の事も詳しく書かれていますが、
こちらについてはぜひ元のレポートをご覧ください。
なんか、泣けます。

portal.nifty.com

 

どちらを向いても笑いが支配する中で、ほろりと泣ける話がある。
ものづくりって、本来そういうもんじゃないのかなという根っこの所を振り返らせてくれるのがヘボコンの好きなところです。

 

最近、塩野七生さんの「ローマ人の物語」を順に読んでいるのですが、ローマ人は戦争で負けた将軍を処罰しなかったそうです。

ローマは一日にして成らず──ローマ人の物語[電子版]I

能力不足ならともかく、戦略・戦術の失敗であれば、むしろ「良い経験を積んだ」ということでそれ以降も積極的に将軍職をまかせたとのこと。
ものを作るのだって同じです。
日本のものづくりやITを担う人材を、という提言があったそうですが

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170529/k10010999501000.html

いくら仕組みを作ったところで、それに魅力がなければ人は動きません。
プラスの魅力が給与などの待遇改善だとすれば、いざ失敗しても怒られない、立ち直れるというマイナス面に対する魅力というのもあるのでは?と思います。
失敗=身の破滅、となれば守りに入るのは当たり前です。
東芝のWD買収とか、シャープの堺工場とか、まぁあのクラスの経営判断なら処罰は必須でしょうが、例えば小型ロケットの打ち上げ失敗なんかは「良いデータが取れた」ぐらいの感覚で良いんじゃないかと思うわけですよ。

sorae.jp

ものづくりでもデザインでも、失敗した経験が多い人が絶対に強いです。
私も前職の企画の先輩からこう言われました。
「成功した商品は勉強にならない。
 必至に売ろうとして、それでも売れなかった、失敗した商品が一番勉強になる。」
これは今でも大事にしています。

 

ヘボコンに出場するロボットたちは結構な確率で失敗します。
それも単に技術力が低いだけに留まらず、

「既製品に余計な手を加えたせいでまともな動作ができなくなる」

というヘボさを発揮してくれます。
普通、ジャイアントキリング(弱者が強者を倒す)の王道展開は「弱者が意外に高機能/高性能だった」ですが、ヘボコンの場合は「強そうなものが思った以上にヘボくて、結果として良い試合になる」というヘボっぷりなので目が離せません。
それなら既製品そのままの方がいいのか?
そんなことはありません。
機器性能としてはそうかもしれませんが、そうした「余計な一手間」を褒めることこそがヘボコンの本質だと思います。
大体がプロの設計したきちんとしたものが既製品なんです。ヘボい素人がちょっと手を加えたところで良くなるはずがありません。
でも、「なにかやろうとした」という意欲と作業と経験こそを褒めてやりたい。それがヘボコンの精神だと思います。

 

ヘボコンでヘボさを提供し続けるも良し、そこから「ちゃんとした」ロボットを作りたいと巣立って行くも良し。
そんな「巣箱」としてのヘボコンのコンセプトと、それを実行し続ける運営の皆様を尊敬します。

 

・・・あ、ボードゲームの話してませんね。

とりあえずヘボコンについて熱く語ってしまったので続きはまた別のエントリで。

ちなみにFacebookにもヘボコンのページがあります。こちらは誰でも投稿出来るので、ヘボコンの大会情報の他、「いい作品を作ったり見つけたりしたら教えてください」だそうです。

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