マインドフローを使って、どうボードゲームを売ろうとしているか
ボードゲームの普及をマーケティング的に考えるという前回の話、結構興味を持って頂いてくれた方もいるようで。ありがとうございます。
マーケティングの話をすると良くあるのが「話は分かったけど、じゃ、具体的にどうするんだ?」ということ。
マーケティングの理論や大成功の事例はあっても、日常のビジネスや実地でどう生かすかは守秘義務とかなんとかもあってなかなか難しい。
そこで今回、ゲームをクラウドファウンディングにアップするにあたり、なにを考えて動いたかを前回の「マインドフロー」に沿ってまとめてみた。
ゲームを作ってみたい方には参考になるだろうし、そのほかのビジネスでも参考になる部分はある、はず。
まずは復習
「マインドフロー」は人の購買心理を段階に分けたもので、以下の7段階がある。
- 認知 → 知る
- 興味
- 行動 → 手に取る・使う
- 比較
- 購買 → ここで買う
- 利用
- 愛情
この7条件は「買う側」にとってのアクションなので、「売る側」がこの全てに関与できるわけではない。
しかし、営業活動はこのそれぞれのアクションに対して働きかけることになる。
今までに取った行動が、マインドフローのどれを意識した物かをまとめてみる。
なお、これらの行動はマインドフロー順なので、必ずしも時系列には沿っていない。(ただ、結果としてほぼ時系列に沿った物になる)
1.認知:知ってもらう
どんないいアイデアでも、商品でも、知って貰わなければ売れない。
日々何億円という巨額の宣伝費が飛び交っているのも、まずはこの認知を上げるからに他ならない。
ボードゲームの場合は、その存在自体がマイナーなため、この部分ですでに大きなハンデを負っている。
ボードゲームを普通に自作して売るオーソドックスな方法は以下になる。
しかし市場自体が小さい上に、ゲームマーケットで公開される新作は200点以上とも言われ、その中で実績も無い新作がどこまで認知され、売れるかは不透明だ。
ならば考えるべきは「人と違うやり方」、そして「新規顧客への市場拡大」だ。
クラウドファウンディングはその両方を満たす。
この時大事なのは、「違うやり方」が「違いすぎない」こと。
よく言われる言い方では「時代の半歩先を行く」ことだ。人と同じでは横並びだし、一歩先では誰も着いてこない。ほんの少し、人と違うことが大事。
時代の二歩ぐらい先を行ったAppleのNewtonは大コケした
その意味ではクラウドファウンディングは理想だ。アメリカでは既に成功事例が多く方法としては自然だし、日本でも「アルハラシステムズ」さんが成功されている。
アルハラシステムズさんの「オートリバース」
方法として確立しているのに成功事例が極端に少ない。これは面白いと考えた。クラウドファウンディング自体が日本ではマイナーだが、それは新しい物好きが集まっているとも言える。そういう人はボードゲームに興味を持って頂ける可能性も高い。当初目的である「ボードゲームの普及」ともマッチする。
CAMP-FIREのサイトPVは現在6000程度。(CAMP-FIRE提供のレポートによる)
ボードゲーム好きだけの数字ではないだろうから、新規ボードゲーム予備軍への宣伝効果はあったと自負している。
2.興味:魅力を伝える
いわゆる「宣伝」のもう一つ踏み込んだ部分。
知ってもらったら、次はその魅力を伝えなければいけない。
今回のゲームタイトルは「三千世界の烏を殺し、主と朝寝がしてみたい」。
長い。
一回プレイした人でも、「なんだっけ、あの、烏の・・・」という感じだ。
ゲームタイトルは覚えやすいように短く、これは常識。
一単語、または二単語。
日本語でも「成敗!」「斬」など、短く、良い名前のゲームはたくさんある。
しかし今回、だからこそ名前を長くした。
これで良い、悪いは分からないが、とりあえずインパクトはあったと思う。
こちらは新参者。覚えやすいよりも、「なにか引っかかる」ゲームにしなければいけない。ややこしい、長いタイトルが引っかかったなら、作者としては大成功だ。
ただ、長いタイトルに比べてゲーム内容は非常に単純だ。
ゲーム時間は10~15分。初めてでもそれほど戸惑わずにゲームできるし、「もう一戦!」と気軽に言える。(実際、二回・三回ゲームをやることが多い)
簡単さに拘ったのは、このゲームが「クラウドファウンディングで製品化を目指している」から。
クラウドファウンディングにはボードゲームに馴染みのない方もいる。むしろ今回の重要なターゲットだ。そんな方でも、簡単に、すぐにゲームができて、時間が掛からない。そんなゲームであることを目指した。
実際、ボードゲームが普及していくには「人狼」の様ながっつり時間と頭を使うゲームではなく、こういう気軽なゲームが必要だと考えている。人狼は良いゲームだが、いかんせんプレイヤーの腕の強弱がはっきり出すぎる。(その意味では過去に流行したモノポリーもカタンもそうか。日本人はそういうのが好きなのかもしれない)それでは新規参入組は逃げてしまう。ハードなゲームの下に、ライトなゲームがあって、それで誰でも遊べる環境を作る。それが本当にボードゲームの普及した姿じゃないかと思う。そしてこのゲームは、そのライトな位置にハマるピースでありたい。
また今回、プロジェクト開始から矢継ぎ早にゲームの詳細を伝える情報を発信した。
- ルールブック: ルールブックの原稿をアップしました - CAMPFIRE
- 解説イラスト: ゲーム内容をイラストで説明する資料を作りました - CAMPFIRE
- プレイ動画 : プレイ動画・解説動画をアップしました! - CAMPFIRE
要望の多かったプレイ動画の再生数はトータルで400程度。
再生数はもっと伸びて欲しいところだが・・・ただ動画を見て買うと言って頂いた方もいらっしゃるので、大変だったが、やって良かった。プレイ時間10~15分のゲームなので、動画も当然短い。これも宣伝には適している。
3.行動:遊ぶ
クラウドファウンディングで一番辛いのはここ。
「一回やってみたい」という意見が非常に多いが、その場を用意できない。
何せゲームは手作りの試作品が二つきり。貸し出せば終わってしまう。
しかし今回、最低限のプレイ環境を用意頂けることになった。
祇園ですよ、ギオン。(カタカナで書くとジオンっぽいな)
それだけでも驚きなのに、なんとそこの店長のご厚意で、このゲームを置いて頂けるとのこと!
なんと有り難い。
お店はこんな感じ。
一歩出ればこんな風景の広がる、まさにザ・祇園。
とはいえいくら店長が気さくでも、祇園のバーにちょいと出かけるのは難しいだろうとは思う。教科書通りなら、テスト品はどこかのボードゲームショップに頼み込んで置かせて頂くのが正しいのだろう。
でも、「遊郭で朝まで遊女と過ごすゲームを、祇園のバーでプレイする」なんてシチュエーションが楽しすぎる!
そのイメージだけで決めてしまった。
こんなわがままにお付き合い頂いた店長には本当に感謝!
ご興味をお持ち頂いたら是非一度リンク先からお店を覗いてみてください。
4.比較
物を買うには通常必ず競合品が存在する。
しかし今回はこれについては考慮していない。
嗜好品、一品物では競合品の観念が薄いからだ。実際に出資頂いた方は他の何かと比較して「こっち!」と決められたのだろうか。それはむしろヒアリングしてみたい。
5.購入
ここまでやれば、あとは購入を待つ。
やれることをやれば、顧客(今回は「出資者」)が購入してくれるのを待つのはどんな職種でも同じだろう。
営業は購入を決めることはできない。ただその確率を上げるだけだ。
ゲームで言えば十面ダイスを六面ダイスにする、あるいはダイスの数を増やして当たり目を出やすくする。それが営業活動だ。
こんな事を考えて動いているんだよ、という話。
少しは参考になる方がいるだろうか。
お願い
最後にこのゲームを遊んで頂いた方、出資(≒先行予約)を検討されているに少しだけお願いをさせて頂きます。
- 遊んで頂いた方
どんな感想でも結構ですので、「こんなゲームだった」「こう感じた」という感想を頂ければ幸いです。「どんなゲームか知りたい」「面白いか知りたい」という感想を頂いていますが、作者本人の言葉では「面白いですよ」以上のことは言えません。プレイヤーとしての感想を発信ください。twitterハッシュタグ → #三千世界の烏を殺し、主と朝寝がしてみたい
- 出資を検討頂いている方
検討いただきありがとうございます。出資(≒先行予約)いただけるのであれば、早めに登録頂けると助かります。クラウドファウンディングという特性上、盛り上がっている(出資者の多い)プロジェクトには、より人が集まる傾向があります。少しでも早めにご登録頂くことが、他の出資検討者への呼び水となります。ご協力頂けましたら幸いです。
お願いをする立場で色々言って申し訳ありませんが、残念ながらプロジェクトの進捗もなかなかに厳しい状態です。プロジェクトに失敗すると製品化自体が消えてしまいますので、何卒ご協力の程、よろしくお願い申し上げます。