拙作「BLOCK. BLOCK」はパクりなのか?
先日もお伝えした「ボードゲームセレクション」お疲れ様でした。
大賞・各店舗賞が発表され、拙作「BLOCK. BLOCK」は残念ながら受賞無しとなりました。
イベントも終わり、アンケートの集計結果を頂いたのですが、その結果は5段階評価に直すと平均4.1点。
自分で言うのもなんですが、高評価を頂いたと自負しています。
運営の各店舗の店長各位、そして遊んで頂いた皆様、本当にありがとうございました。
アンケートの内容は
- 面白い
- 高い
- これ、パクりじゃないの?
といったものだったのですが、「パクリ」と言われたのは「ブロックス3D」のことのようです。
別段反応しなくても良いのですが、制作者として「どう違うか」を分析することは、「何を考えて作っているか」の参考にもなるかと思うので、これについて書きます。
ブロックス3D(3D ブロックス)/ルミとは?
実は私はこのゲームを存じ上げなくて、「BLOCK. BLOCK」完成後の類似調査の中で見つけました。(ちなみに、すでに絶版だそう)
ルール説明はこちらに詳しいです。
オリジナルは木製で「ルミ」という名前。ブロックス3Dはリメイク版だそうです。
似ているところは二点
- ポリオミノのブロックを使用すること
- 上から見た面積が点数になること
ではどこが違うか?「ブロックス3D」のルールで拙作「BLOCK. BLOCK」と違う点を列挙します
- 使用ブロックの組み合わせ
- 盤面サイズ(5×5と8×8)
- 対応人数(ブロックス3Dは4人まで対応)
- ブロックを置く際に自色と接する必要がある
- 高さ制限がある
- 終了時に減点がある
こんなところでしょうか。
個人的に一番のポイントは「4」だと思います。
「ブロックス3D」では、自分のブロックは、面で接した「ひとかたまり」である必要があります。
このため、色々な方向からブロックを置ける(繋げる)場所を探し、他プレイヤーの色を「塞ぐ」のが基本戦略です。
最終ポイントは上から見た面積とはいえ、ゲーム時は各方向から見ることが基本です。
高さにも制限があるため、横方向へのブロックの繋がりが最も重要。このため、ゲームの盤面はぐるりと回せるように工夫がされており、色々な方向から見られるようになっています。
対して拙作の「BLOCK. BLOCK」は、どこにブロックを置いてもOKです。
この違い、言うのは簡単ですが、ゲームとしては非常に重要です。
ジレンマをどこに置くか
ゲーム作りで「二律背反」は重要です。(もちろんこれだけではなく、あくまで一要素です)
「ブロックを置いて、上から見た面積の多い方が勝ち」というルールを思いつくのは簡単ですが、それだけではゲームにはなりません。
それをいかに制限し、ジレンマを生み出すかがゲームデザインのキモとなります。
「ブロックス3D」は、「自分のブロックを繋げる」という「生存のための行動」と、「上から見た面積を広げる」という「加点のための行動」の二つを、「ブロックを置く」という一つのアクションで実現しています。
このため、アクション時にはどちらの行動を優先すべきかというジレンマが発生します。
この辺の戦略や実際のプレイ風景はこちらに詳しいです。
対して「BLOCK. BLOCK」では、「相手と同じ形状のブロックを連続して出せない」「相手のブロックと同じ形状を同じ向きで重ねられない」という「置き方」「出し方」に制限を加えています。
これだけだと自分の行動に制限が加わるだけに思えますが、自分の今回のアクションが、次の相手のアクションに影響を与えるということです。
このジレンマの作り方は、プレイヤーに「何を考えさせるか」に繋がります。
つまりプレイ感を作り上げるということなので、ここが違えば、同じコンポーネントを使っていても全く別物、ということです。
同じトランプを使っていても「七並べ」と「ポーカー」は違うゲームですよね?それと同じです。
ジレンマがプレイ感、プレイ風景を作る
「置かせ方がこれだけ違うだけで、基本はパクリじゃねぇの?」という声が出そうなので、もう一歩先の話をしてみます。
BLOCK. BLOCKでは、「ゲーム中に立ち上がる」ことを最初から狙っていました。
ゲームをしていて、考えて、集中して、思わず立ち上がってのぞき込む。
「上から見た面積が点数」「どこに置いても良い」というルールでできあがるのは、そうした「立ってのぞき込まないと分からない複雑な立体構造」です。
「立ってのぞき込まないと把握できないぐらいには複雑だけど、どこかにブロックは置ける」が、5×5マス、10個の駒という バランスでした。
このため、試作の段階からこうして「立ち上がった写真」ばかりを投稿しています。
これは、私が「どこで立ち上がっているか」を確認するために撮った写真だからです。
「ブロックス3D」は完全に逆で、こちらは「側面」を重視した設計です。
高さ制限があるため、上方面はある段階から気にしなくなり、またブロックが接している必要があるため構造の複雑さには限界があります。
このため、回転方向にぐるぐる回すことで全体を把握できる構造です。
確かにお互いに「ブロックを積み上げてパズル的な構造を作るゲーム」ではありますが、アプローチは全く逆だと言えます。
ところでゲームマーケットの参加作品を拝見していても、昔は「有名ゲームにルールを加えただけ」「有名ゲームのカードとルールを減らして、シンプルにしただけ」果ては「デザインを変えただけ」なんてのもありましたが、見る限りそうした物は減って、(100%ではないにせよ)オリジナルのルールがほとんどなのは喜ばしいことです。
海外の新作でも既存ルールを改変しただけでは?というものもあり、確かにゲームマーケットは「小規模ながらオリジナルルール作品が豊富に発売されている場」だなぁと感じます。
商売っ気が薄いと言えばそうかもしれませんが。
意外にね、気になるんです
ちなみに今回の件、言っている方は気軽に「パクリ」と口にされるんだと思いますが、必死に考えた人間からすると、そうした言葉でも結構傷つくんですよね。
だから見苦しいかも知れませんが、こちらも言うだけは言わせてもらいました。
「オリジナルルールを作るときは、こういう事を考えてるんだな~」という一つの参考にでもなれば幸いです。
もちろんこれを読んだ方が「いや、このぐらいの違いだったら『パクリ』って言われても仕方ないんじゃないの?」と思われたなら、もちろんそれも自由。
言論の自由ってのは、良きにつけ悪きにつけ、そうした発言や考えを許すことだと思いますので。
そんなこんなで明日、3月10日(日)はゲームマーケット大阪です。
BLOCK. BLOCKは会場で試遊可能ですので、どんなものか、ぜひ遊んで頂ければ幸いです。
(ちょっとお高いので「買って下さい」とは言いませんので)