ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

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台湾ボードゲーム事情とゲームマーケットの未来

ゲムマ大阪の前に、台湾のボードゲームパブリッシャー、EmperorS4のディレクター、Mr. Linと会食しました。

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(写真は以前のゲームマーケットの物。写真中央がLin)

会食の前には東急ハンズDDT本店に立ち寄り、日本のボードゲームの販売状況を軽く紹介し、その後夕食。
何か良い物でも・・・と思ったんですが、
「大阪なら串カツかお好み焼きが食いたいな。たこ焼きは晩飯には軽いし」
というリクエストでお好み焼きに。
それにしても大阪に観光に来る人って二言目には「串カツ」が出ますよね。
大阪でもそこまでメジャーな食事じゃない気がするんですが。
あとみんな下手な大阪府民より観光地に詳しい。

 

それはそれとして。

 

台湾ゲーム(制作)事情

話はやはり台湾のゲーム事情になるのですが、
日本と台湾の「制作側」の一番の違いは、ゲームマーケットのような即売会の有り無しのようです。
台湾では即売会は無く、ゲームデザイナーは自分のアイデアをパブリッシャに売り込むしかないとのこと。
当然そのハードルは高く、台湾ではゲームデザイナーの数は少ないとのこと。

 

「日本は市場としてだけじゃなく、パブリッシャーとしてはデザイナーを捜すのにも良い。なにせ、既にルールどころかコンポーネントまで完成して、(台湾で)出版されていないゲームがこれだけあるんだから」(Mr. Lin)
最近台湾のパブリッシャが多数参加されているのはこういう事情もあるそうです。

 

元々台湾は距離的にも近く移動や輸送費が安く、近年は親日国でもあり、日本のゲームは注目されています。
台湾って、日本語の話せる人が結構多いんですよね。
だから日本語のルールも自分で訳してしまうようです。

 

プレイヤー人口が爆発的に増えているのは以前の台湾旅行記でも書いたとおり。
プレイスペースは台北市だけでも100件を超えているそうで、
「セクシーアイドルが店長のお店」なんて売り出しのプレイスペースがあるなど、販促には知恵を絞っています。
その中でも「日本の個人制作ゲームに詳しいレビュアーのお店」が先日お伺いした中の一店だったそう。
そういえば訪問時に「陰陽賽というゲームを作った作者です」と言ったら
「遊んだことがあります!面白かった!」と凄く感激されたんですが、まさに彼がその有名レビュアー本人だったそうです。

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日本は豊かな同人文化に助けられ、メモ帳や冊子などの少部数印刷では世界トップクラスの品質とメニューがあります。
それに対して台湾は箱や厚紙の特殊印刷が得意。
この理由はよく知りませんが、日本から見れば見栄っ張りの中華圏向けのお菓子などの包材印刷があったからでしょうか。
日本から依頼した場合、1000部ぐらいになると中国・台湾に依頼する方が安くなる例が多いようです。

台湾ボードゲーム展示会

そんなMr. Linに紹介されたイベントが、来月5月に実施される台湾で「初めて」のボードゲームのコンベンション。

moonlightboardgamefestival.tw


出展は当然主に台湾の会社ですが、日本からは
すごろくや、リトルフューチャー、ギフトテンインダストリー、しらたまゲームズ、こげこげ堂(敬称略)の名前がありました。
台湾で出展するんですか?スゲー。
「『ペンとサイコロ』も出展しないか?」
と誘われましたが、とりあえず予定が合わないのでパス。
確かにルールは中国語対応しているから売れるっちゃ売れるんだけど、中国語が出来ないのに出展って出来るんだろうか。みんな凄いなぁ。

 

今回のコンベンションが成功するかは分かりません。
場所も高雄ということで、高雄・台南の南部エリアの人口は台北を中心とした北部のおおよそ1/3。

色々厳しいとは思いますが、ボードゲームに特化したコンベンションを台湾で立ち上げたことは一つのトピックです。

 

このコンベンションが成功し、地理的に近い香港・中国・台湾のメーカが一堂に会するようになったら・・・
おそらく同時期に開催されるゲームマーケット春は、多くの海外関係者にスキップされるでしょう。
なぜなら、「東京は秋に行けばいいや」となるから。
国内でもこんな意見がありました。

 

Mr. Linも、
「なんで春の東京はこんな時期にあるんだ?無くていいんじゃないか?」
と言っていました。
彼もパブリッシャの仕事として出展する以上、ゲムマがあれば「出なければいけない」立場ですから、大変なようです。

 

twitterでも書きましたが、展示会を複数回開催すると来場者が増えるかというとそんなことはありません。
むしろ企業向けの展示会では「何年に一度」という開催にしている物もあります。
回数を減らすことで、「それならアレだけは行っておこう」と、より広い範囲からの集客が見込めますし、
出展側も一つに集中することで人も金も掛けやすくなります。
例えば私の知る限り、欧米からの来場者で複数のゲムマに参加された人はいないと思います。
参加はせいぜい年に一回。それだけ分散してしまっているわけです。
(たとえば今年で言えば、BGGのMr. Jon Powerは大阪に参加、Mr. Eric Martinは春に参加)
もちろん近い地域の人を対象にする展示会・即売会なら小規模にたくさん実施する方が良いでしょう。
どちらが正解というわけではなく、展示会の規模と開催場所、回数は、展示会を「どうしたいか」という
集客コンセプトと密接に関わる物だからです。

 

ゲームマーケットは現時点で日本最大のボードゲーム関連の展示会で、
それを目指して海外から人もやってきますし、海外からゲストに呼ばれています。
つまり「日本最大のイベントとして世界に目を向ける」なら、
ゲームマーケット」は春(大阪)、秋(東京)の年二回開催あたりが現実的なラインかと思うんですがどうでしょうね。
春の東京は、地域イベントやフリーマーケットが出てきて補えば良いと思うんですが。

 

ちなみに回数を増やした例では半導体業界の展示会「SEMICON」等があります。

SEMICON Japan |

SEMICONは世界各国で、確か当時で年8回?開催。今はどうなんだろう。
(米2回、ロシア、日本、韓国、台湾、中国、欧州)
それぞれ開催場所が違うので、一つの場所では年一回の開催ですが、来場者はそれぞれの地域で参加するので分散します。
半導体業界は景気の変動が激しいので、それだけ人が押し寄せる年もあれば、人が減る時期もあるわけですが、
減った時期は「歩いているのは出展者だけ」という状態になりかねません。
業界で「同窓会」と言われる状況ですね。

 

今のところゲームマーケットはもの凄く順調に人も会場も増えていますから
主催側としてはこのまま伸びるところまで伸ばしたいと思います。
「今後はこういう成長戦略で行く」と明示することで離れる人も居るでしょうから、
調子が良いときにリスクを取りたくないというのは誰もが思うことです。
とはいえどこかのタイミングでそうした決断は必要になるわけで、
企画屋としてはどうしても気になってしまいます。