「日本ゲーム」が「アナログゲーム」の代名詞になる日
11月22日(日)に東京ビックサイトで「ゲームマーケット」が開催されます。
(なんども言ってますね。すいません)
その前後一週間、観光を兼ねて日本に来ている JonPower と夕食を取ったのですが、その彼の話のアツいこと!
Finished my day with a very nice dinner courtesy of @pen_n_dice and friends @NILGIRl and punny @peyangmini and one not on twitter.
— Jon Power (@jonpower) 2015, 11月 18
彼と私、そしてゲーム制作をする3人と共に食事をしましたが、後半は彼の独壇場。
そのアツい想いとトークは日本の方々にも伝えるべきと思いましたので、ここに翻訳の上まとめさせて頂きます。
(写真を取り忘れたので今回は文字オンリーです。読みにくくてすいません)
Jon Powerって誰?
まず「Jon Powerって誰?」という方が大半だと思いますので、紹介します。
Jon はイギリスのボードゲームファンですが、最近は日本のボードゲームを世界最大のボードゲームサイト、「BoardGameGeek」で紹介することに力を入れています。
BoardGameGeek | Gaming Unplugged Since 2000
日本語で登録可能なフォームを制作・登録作業をしているのも彼で、django
さん(@django88628676)、サイゴウさん(@saigo012)、ILLさん(@ILL_Dungeons)といった翻訳協力者の手を借りながら日本のゲームを登録し続けています。(私も一部翻訳協力させていただきました)
「英語ができないから・・・」というゲーム制作者も、ぜひ登録してください。
より日本人に便利になるよう、BGG側のルールも積極的に改定されているそうです。
日本のゲームがすごい
彼によると、日本のゲームの面白さは「オリエンタル(東洋的)であること」だそうです。
日本のゲームは個人制作が多くシンプル・小ぶりなゲームが多く、最近はそのシンプルさが「ミニマルゲーム」として海外で評価されていると聞きます。
しかし彼に言わせると、それよりも「本質的なところ」が日本のゲームが面白いところだ、と。
彼が例に挙げたのは「忍者対戦」でした。(雑誌の付録でしたっけ?サークル・出版元不明)※11/19 18:00 ご指摘頂き修正。下記サイトによると制作は「サークル"テーブルクロス"」だそうです。失礼いたしました。
Table Cross :※11/19 22:30 公式ブログが見つかりましたので追記します。
ゲームの特徴は「二つの陣営が『すれ違う』」点。
「忍者なんだから、忍んで相手の陣地に進むよね」というのは日本の感覚なら違和感はありませんが、「二つの陣営が戦うのに正面からぶつからない」という発想に彼は当時衝撃を受けたそうです。
つまり「東洋的」とは、別に忍者や侍が出てくることではないと。
(「Metal Gear Solid」が海外でヒットした理由もまさにここかもしれません)
日本から見ればアメリカのゲームは複雑で、ドイツのゲームはシステマティック。
こうしたゲームを見ると「凄いなぁ」と思いますが、逆に日本で生活した人の発想は、彼から見ればとても斬新に見えるということでした。
日本の個人制作ゲームをどう訳すか
「僕は1996年にカタンに衝撃を受けてボードゲームにどっぷりハマった」Jonはそう語っていました。
「アナログゲームは『ドイツゲーム』といわれるようになって、イタリアからも斬新なゲームが出るようになると『ユーロゲーム』といわれるようになった」
「ドイツで個人制作の作品が500部売れて当時ビックリしたが、その作者が商業で世界デビューするまで15年掛かった。500部売れた時の作品は、お金トークンをプレイヤーに切りとって準備させるようなものだった」
そうして日本の話。
日本の凄いところは個人制作ゲームの完成度の高さ、というのが彼の意見です。
これは良く言われることですね。
「日本の"Dojin"(同人)ゲームは完成度が本当に高い。ドイツで15年掛かったことが、日本では3~4年でできると思う」
日本は少部数でも印刷してくれる「同人文化」があり、ボドゲ制作でもその文化の恩恵を受けているのは良く言われることです。
(この他作り方・出版形態の違いなどの話もあり、それはそれで面白かったんですが今回は割愛)
彼は「Dojin Games」と言っていましたが、日本の個人制作ゲームをどう伝えるかは難しいそうです。
"Amateur(アマチュア)"という言葉は「素人の」という意味で、完成度の低い印象を与えてしまうため、とのこと。
「これは日本の"Amateur"ゲームなんだ」
と紹介すると、その時点で相手は聞く気を失ってしまうと。
その意味で「Dojin」という耳慣れない、新しい言葉を使うのは「日本の作り方は世界と違う」と明確に分かるので良いようです。
日本語でも「同人ゲーム」という良言い方を嫌う方もいらっしゃいますが、「アナログゲーム」「ボードゲーム」などの呼称と同じく、制作者をどう呼ぶかも難しい問題ですね。
ただ、少なくとも英語では「Dojin Games」という呼称をブランド化する戦略はアリかなと思いました。
日本のゲーム制作者は、もっと世界に発信しろ!
そうしてJonが総括していたのは、「日本のゲーム制作者はもっと世界に発信して欲しい」ということでした。
上にも挙げたとおり、日本の「同人文化」はまだまだその存在を知られていません。
「日本には面白いゲームがあって、毎年400もの新作が出ている」
という日本独自の市場性を発信すればいいのに!と熱く語っていました。
彼が進めているのはそのためのBGG登録ですが、それで充分というわけでもありません。
「世界から見れば日本のボードゲームは『ヤポンブランド』ぐらい。もっと色々あることを発信して、裾野が広いことを知らせて欲しい」
これが彼の意見です。
そのため彼が挙げていたゲーム作りのポイントはこんなところ。
あくまで彼個人の意見ですが、参考にして頂ければ幸いです。
- ルールは英語をつければOK
- カードの言語依存を(できれば)なくす
- アイコンを多用し、サマリーシートで説明するなら翻訳も簡単
- 漢字は残せ!(格好良いから!)
また、英語ルールについてはプルーフチェック(英語のできる人によるチェック)を強く推奨していました。「正しい/正しくない」だけでなく、「自然な表現か」「理解しやすいか」は色んな人にルールを読んで貰った方が良いし、英語の話者にとって自然な表現は日本語と表記が違っても、取り入れた方が良いという意見でした。
この点については今回拙作「かいちん」のチェックをやって頂いて、確かに色々と感じました。英訳で敢えて表現を変えている部分もありますし、チェックの中で日本語の表現から修正した部分もあります。
ちなみに「かいちん」は「どの駒を動かしてもいいルールが独特で面白い」「正体を隠しながら攻撃できるのが楽しい」「頭を後ろからひっぱたいてやる感じ」「米国式の正面からの直接攻撃でもなく、ドイツ式の関節攻撃でもなく、直接攻撃だけど一ひねりあるのがいい」と高評価で嬉しかったです。唯一、カードの表記が「colour」と英語表記でなく「color」と米国英語表記だったのには散々文句を言われましたが。
このイギリス人め!
「日本のゲームはもっと海外に発信すればいい。海外でも充分に受け入れられる。そしてこれだけの裾野があれば『日本ゲーム』が『アナログゲーム』の代名詞になれる」
と力強く語っていました。
あまりの日本びいきに恐れ多いと感じる部分もありますが、きちんと作ったゲームを評価して頂いていることには、もっと自信を持っていいのかなと思いました。
それではゲームマーケットに参加されるゲーム制作者の皆様、ゲームマーケットにはゲームに興味のある海外の方も多数いらっしゃいます。
まずはそうした場で、共に日本のゲームを発信していきましょう!
(A40ブースでお待ちしています!)