ボドゲの英訳の方法と実践結果
自作ゲーム「三千世界の烏を殺し、主と朝寝がしてみたい」のルールブック英訳が完了しました。
下記よりダウンロード頂けます。
今後の制作ゲームについても、できる限り英訳ルールを用意しようと考えています。
ゲームの英訳を作ること
ルールブックの英訳だけで済むのは、実はこのゲーム、最初から全てのカードに英訳が書いてあるからです。
カードの一部。(左は旧デザイン)
思いっきり和風な雰囲気のゲームですが、だからこそ欧米の方にはウケるだろうと英語で遊べるように作っていました。
日本のボドゲ人口は少数ですが、世界を見渡せば沢山のプレイヤーがいます。
ドイツ・フランス・アメリカと本当であればそれぞれの言語に対応するのが最良でしょうが、少なくとも英語に対応しておけばこれら欧米各国なら容易に訳せるでしょう。
巨大ボドゲサイト「BoardGameGeek」も英語。
ボドゲ作者として、売上ももちろん欲しい所ですが、なにより「沢山の人に遊んで貰いたい」が一番の動機であり、活力であるのを否定する方は居ないと思います。
ならば、少しでもその裾野を広げられるアイデアは積極的に取り込んでいこうと考えました。
翻訳の方法と費用
今回はカードの英訳、ルールブックでそれぞれ別の流れで翻訳しています。
「自分は英語なんかできないし」
という方も参考になれば幸いです。
ちなみに私の英語力はTOEIC等で測定したことはありませんが、欧米人と仕事の話ができる程度です。(専門用語の方が、日常会話より簡単です。経験上)
全部自分で訳す
英語力が高い方なら、当然自分でやればいいでしょう。
しかしこんな人がごく少数です。
なんとなく英語のできそうなイメージ画像。なんだこれ。
My What a Happy New Year! / CarbonNYC [in SF!]
lang-8を使って、無料で翻訳する
翻訳サイトではありませんが、「lang-8」というSNSをうまく使うと無料で翻訳ができます。
Multi-lingual language learning and language exchange | Lang-8: For learning foreign languages
日本人が行くときちんと日本語表示。
各国語の勉強サイト兼SNSですが、面白いのは「相互に翻訳する」というシステム。
例えば日本人で英語を勉強したいなら、逆に英語ネイティブで日本語を勉強したい人を探します。
「自分が訳を直してあげる代わりに、翻訳を直して貰う」
という双方のWin-Winがこのサイトの仕組みです。
ただし、翻訳サイトではないので、「これ、英語に訳して」と丸投げはできません。(できないことは無いと思いますが、相当失礼)
あくまで双方の勉強が目的なので、「頑張って訳してみたけど、これでいいかな」という「校正」をやって貰える程度と考えてください。
また、なんども言うようにそもそも翻訳サイトではなく言語学習をベースにした相互交流が目的です。
私は以前、ここでできた知り合いが日本に観光に来た際に案内をしてあげました。
そういう繋がりがあるから、「ちょっとこの翻訳直して貰えるかな」ということができました。
あくまで「英語学習をしたいけど、人に出せるレベルではない」という時に使うものです。いきなり「ルールブック翻訳して」と言っても誰もチェックしてくれない可能性がある事は認識しておいてください。
ただし無料。
「近所に住んでいるネイティブにお願いする」ができない場合に、こんな手段もあると思って頂ければと思います。
プロに頼む
間違いないのは当然プロに頼むことです。
「三千世界の烏を殺し、主と朝寝がしてみたい」では、ルールブックの翻訳はプロの翻訳家「サイゴー」様にお願いしました。
Saigo Takamori walks his dog / Joe Jones
理由は二点。
日本語でもそうですが、ゲームのルールにはいろいろ決まった言い回しがあります。
例えば、「即座に」と「ターン終了後」では動きが異なる、という時に「その行動のあと」と書かれた場合、正確な意味を判断できない場合があります。
またニュアンスも大事です。
例えば 今回のゲームでは「礫(つぶて)」というカードがあります。これを「gravel」と訳してもらったのですが、これでは「砂利」になるので、本当は「stones」の方が良いと。
砂利、投げても烏は死なないよね。「小さな石」という意味では合ってるけどさ。
そういう背景も考えて、意味的に正しいだけでなくニュアンスまで伝えてくれる。
それが翻訳者が翻訳者たる所以だと思います。
今回、「オサブラゲームズblog & ぼ~っとゲームラジオ【おっさんのブランチ】」でサイゴー様のお話を伺い、すぐに翻訳をお願いさせて頂きました。
おさブラのゲーム「上座~KAMIZA~」デザインも凄い
おっさんのブランチ 第10回:上座〜KAMIZA〜の英語ルール誕生の影に西郷どんアリ!: オサブラゲームズblog & ぼ〜っとゲームラジオ【おっさんのブランチ】
プロなので当然有料ですが、やっぱり品質は桁違いです。
ご興味をお持ちの方は上記サイトのアドレスからお問い合わせを受付されるそうです。
英語で世界は広がるか?
ボドゲと言えばドイツ。日本ではまだまだマイナー。
市場性としてはそんな状態ではありますが、日本の同人ボドゲが注目されているのも事実だそうです。
今回嬉しかったのは、ゲームマーケットで英語でルール説明し、ゲームができたこと。これには英語の説明の他に、カードの英文説明が役立ちました。
そして昨日、名刺を渡したアメリカ人から「BoardGameGeekで紹介したいから詳細の資料は無いか?」と連絡を受けました。
自分では英文で紹介できなくても、英語のルールブックがあれば勝手に喋ってくれます。
数は少なくとも、こうして英訳は役に立っています。
ボドゲ作者の皆様、面倒なのは事実ですが、英訳されると良いと思いますよ。