ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

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自作ゲームの黒歴史:第二章

「正義対悪」という構図に失敗し、個人プレイのゲームに挑戦したのが第二弾。

最初のゲームは他の人のやりたいことを盛り込もうとしたために失敗した、という言い訳が、むしろ第二弾を作るモチベーションになった。何がきっかけになるか、分からないもんだ。

第二弾:カードゲーム「ミスリルダンジョン」

全景はこんな感じ。

 

f:id:roy:20140721091246p:plain自作ゲーム「ミスリルダンジョン」

ダンジョンに潜ってミスリルを集める、というゲーム。

このゲームはうちの娘(6歳)の評価が高い。市販のゲームに慣れた娘が気に入っているので、それだけの完成度になっているのかなと自画自賛している。

 

良かったところ

単純な方に

ゲームは当初のラフではボードゲームだった。

ボードにチップを置いてダンジョンを作ろうとしたが、ランダムすぎては面白くない。ランダムさを抑えるには個々のチップの効果を弱くして、ゲームを長くすることになるが、それでは冗長になる。

考えた結果、「チップではなくカードにする」という結論になった。

チップは「位置」と「イベント(アクション)」という二つの情報がある。チップ、つまり通路を辿ってダンジョンを歩き、一歩ごとにチップに書かれたイベントが発生するというものだ。しかしカードなら位置情報が無いので、効果だけを取り出せる。

「迷ったら単純な方に」「不要な項目(パラメータ)は減らす」

これがアナログゲームの原則と言われるが、「目的地まで動かなくてもいいんじゃないか?」と判断できたのはこのゲームの一番の転換点だった。

深みを持たせる

しかしダラダラとカードを出し続けるだけでは盛り上がりが出にくい。

そこで一部のカードは、「階層(フロア)」によって効果が異なるようにした。

ダンジョンだから、階段で階層を移動する。深い階層では宝箱のお金は増えるが、敵も強くなる。一部のカードの効果を変えるだけでゲームの質が変わってくる。階層を進む・戻るという考え方は当初のボードゲームの要素を一部引きずっている。

階層はカードを重ねて表現する。このシンプルな仕掛けはうまく行った。

f:id:roy:20140707083505j:plain左が階層カード。右のカードは階層で効果が異なる

 

 悪かったところ

ミスリルダンジョン」ではお金を使い、名前の通り「ミスリル」を集める事を最終目標とする。この名前にインパクトが無かったのが一番の反省点。

とりあえずゲームとして面白いことを優先にしたため、キャッチーさが後になった。自分一人ならともかく、販売するにしても友人相手に提案するにしても、「お、やってみようか?」と興味を引いて貰う必要がある。

やってみれば面白いのに、やるまでは興味を持って貰えない。アイキャッチの重要性を感じた作品でもある。

 反省点:プレイヤーの選択肢

このゲームは試作段階で一度Kiwiゲームズでテストプレイをしていただいている。

KIWIGAMES | キィウィゲームズ

(大阪日本橋ボードゲーム店。店内に大きな試遊スペースがある)

その時に言われたことで調整を掛けたことがいくつかあるが、その中に「プレイヤーに選択肢を増やして欲しい」というのがあった。

当初このゲームのプレイヤーは「ダンジョンカードを引く」「手持ちのアクションカードを使う」という二種類の選択肢しかなかった。(ダンジョンカードは良い効果も悪い効果もある)

この場合、手持ちで良いカードがなければダンジョンカードを引くしかない。「これだと運の要素が大きすぎる」という意見があり、「手持ちのお金でアクションカードを一枚買う」というアクションを追加した。

これでプレイヤーの選択肢は増え、「自分で何かを選択した」という感覚が大きくなる。

ゲームは楽しむための物だから、プレイヤーがどう感じたかは最も重要。

同じ「ダンジョンカードを引く」でも、「他に選択肢が無く引いた」と「手持ちのコインでカードを買うか考えた末に引いた」では、同じアクションでも感覚が全然違う。プレイヤーに「選んでいる感覚」「遊んでいる感覚」 を感じさせる仕掛けの配置の仕方も、このゲームで学んだ。

選択肢の適正値

選択肢は多ければ良いわけじゃない。多すぎると「何をやっていいか分からない」。

例えば心理学の有名な実験で「ジャムの実験」というものがある。非常に簡単に、乱暴にまとめると「選択肢は多い方が満足感が増えるが、選択肢がある量を超えると、満足感は減少する」というもの。詳細は例えばこちら。

ECサイトで顧客に提示する「選択肢の数」と「コンバージョン」の関係 |海外ECサイト事例に学ぶ、売上アップのノウハウ|ネットコンシェルジェ

要は、少ない選択肢から選ぶと、「仕方なくこれを選んだ」という不満が残る。だから、選択肢が多い方が満足感が上がる。しかし、選択肢が多すぎると「もっといい選択肢があったんじゃ無いか」という後悔が残る、このため、選択肢は少なすぎても多すぎても満足感は減る、というもの。

実験では「どの数字が適切か」は示されていない。また、その満足感は国民性などにも左右されるとされている。

 ではゲームの選択肢の適正値は?

これはゲームの「重さ」に直結すると思う。

いわゆる「重い」ゲームとはハードユーザー向け、長時間のゲームのこと。この場合ルールは複雑で、選択肢も多いのが一般的。これに対し「軽い」ゲームは時間も短く、ルールも単純というのは以前にも話したとおり。例えば「ミスリルダンジョン」のような15分程度の「軽め」の物の場合、適切な選択肢は3~6あたり、というのが個人的な感覚。

選択肢とルールが直結している分かりやすいゲームは、例えば「ニムト!」だろう。最初に10枚のカードが配られ、それを順に出していく、つまり選択肢は10→9→8と順に減っていく。

とはいえ、場の状況から、実際のゲームで出せるカードは6枚程度。そこから更に悩むのはせいぜい2~3枚。この辺が短めのゲームの選択肢として適切な落としどころだろう。

メビウス ニムト

メビウス ニムト

 

ミスリルダンジョン」の場合、選択肢を増やすことでその適正値に落ち着かせることができた。

「負ければ運のせい、勝てば自分の実力」

こう感じるのが良いゲーム、と言われる。

ミスリルダンジョンも、カードの引きでどうしようも無いときはあるが、勝つときは適切なカードの使い方、お金の使い方で「実力で勝った」と感じることができる。その意味でも、ゲームとしては良くできたと思う。

時間も掛からないので、我が家に遊びに来た方はちょっと見て頂ければ幸いです。