ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

ボードゲーム・3Dプリント作品・3DCG制作を行う「ペンとサイコロ」のブログです。公式サイトはこちら→http://penanddice.webcrow.jp/

繁栄と共にある滅亡か、清貧か

「私たちの本音は何なのでしょうか?現在の裕福な国々の発展と消費モデルを真似することでしょうか?
ドイツ人が一世帯で持つ車と同じ数の車をインド人が持てばこの惑星はどうなるのでしょうか。」

ネット上で話題になっている動画がある。
・リンク →リオ会議でもっとも衝撃的なスピーチ:ムヒカ大統領のスピーチ (日本語版)
(まだ見たことの無い方は、このブログを読むよりも、リンク先を見て下さい)
メーカーにいて、利益を取らなければいけない人間にとっては何とも耳の痛い話。
特に自分の嫌いな「陳腐化戦略」を強く批判しているとも言える。


「そうだよねぇ」で済ませず、こういった意見に対してメーカーとしては何ができるのか。
ムヒカ大統領の仰る意見と我らメーカーの落としどころは何か。
文章を読んでから考えていたのだが、一つのアイデアを出してみた。

メーカーは新商品を出さなければ生きていけない

まずムヒカ大統領の意見を今のメーカーが受け入れることは出来ないという前提から始めなければいけない。
「メーカーは10万時間持つ電球を作れるのに、1000時間しか持たない電球しか売ってはいけない社会にいるのです」

The incandescent light bulb / Anton Fomkin

10万時間、という言い方が正しいか分からないが、
理想の商品が実現したらその会社は存続できない、という商品はある。
メーカーは儲けを出さなければいけないから、というと簡単だが、もう少しかみ砕いて説明する。
電球メーカーは、10万時間経って電球が壊れたときのために、電球を作らなければいけない。
電球を作るためには、工場と、それを作る(あるいは維持する)人が必要。
これを維持するには、電球を作って、それを売り続けなければいけない。

Factory Image : Consolidated/Convair Aircraft Co. / San Diego Air & Space Museum Archives

ところが、10万時間切れない電球を安く作れて、それがあっという間にみんなが買ってしまったらどうだろう。
電球はもうみんな持っている。
次に買うのは10万時間経った後。(連続稼働で約10年。一日8時間点灯なら約30年)
この工場は、それまで生産する物がない。
そうなると、次の需要が出てくるまで、工場はその間金を生まない。
しかし工場を維持しなければいけないのならその分維持費用もかかる。
会社が大きければ働いている人の配置換えが可能だが、専業だったら従業員を解雇しなければいけない。
こんな会社は現実的には存続できないので、この商品は作れないか、作ってもその事業はさっさと撤退せざるを得なくなる。
そうして、10万時間持つ電球は作る事が出来ず、1000時間しか持たない電球を売ることになる、ということ。


そう、今の時代は、大量消費を前提に生産することが最も効率よくなっている。
これは事実。

石器時代に戻らない生き残り方

そんな時代に、何かしら貢献できる技術は無いか。
メーカーというのは新しい物を考えて、作って、喜んで貰うことが仕事だ。
石器時代に戻れとは言っていません。(中略)発展は幸福を阻害するものであってはいけないのです。
 発展は人類に幸福をもたらすものでなくてはなりません。
 愛情や人間関係、子どもを育てること、友達を持つこと、そして必要最低限のものを持つこと。これらをもたらすべきなのです。」
メーカーとしての幸福を実現し、ムヒカ大統領の言葉を実現できるものは何か。
それは例えば、家電のモジュール化ではないだろうか。

答えはPlayStation3

前々から言っているが、PS3(PlayStation3)は名機だと思う。

PlayStation3の素晴らしいところは、それがゲーム機では無いことだと思っている。
PlayStation3初代(我が家にある物)の発売は2006年
もう6年も経つのにまだまだ現役で、最先端のリビングコンピューター。
家電製品で6年経っても最先端機器、って実はかなり凄い。
たとえばiPhone(初代)の発売は2007年
後継機種が出ると発売を終了するので、最も短い初代の発売時期はたったの半年
iPhone → iPhone3 → iPhone3G → iPhone3GS → iPhone4 → iPhone4S

Original iPhone + iPhone 3G + iPhone 4 / Yutaka Tsutano

6世代も代替わりしている。
基本的にはOSが共通なので互換性があることになっているが、実際にはメモリや耐久性の問題で、
今では3GSでもギリギリ動作するかどうか、という感じでは無いだろうか。
ではこの二機種の6年間はどうだったか。
この間SONYのゲーム事業は赤字にあえいでいた。
一方次々と新商品を出し、前機種を陳腐化するAppleは大躍進。
まさにムヒカ大統領の言う資本主義の象徴と言える。


で、このPlayStation3のなにが面白いかというと、その拡張性
例えば我が家では、当初PlayStation3はリビングのネット端末であり、写真閲覧端末であり、ゲーム機だった。
現在PlayStation3は主にテレビ用チューナーとして機能している。
写真のように、PlayStation3を中心に、HDDとtorne(地デジチューナー)がぶらさがっている。

カメラを付ければテレビ電話として使える。
個人的にはSDKを公開してくれているんなら、堂々とKinectだって繋ぎゃいいと思っている。
Xbox 360 Kinect センサー


たとえばレコーダーが古くなって買い換えるのなら、当然レコーダーを買い換える。
当たり前のように感じるが、レコーダーの容量が足りないのなら、ハードディスクだけ買い足せば良い。
VHSが古くなったら、ドライバ部分だけブルーレイにしたら良い。
レコーダーを買い換えたら5万も10万もする物でも、機能別に分ければ一つ1万円とかで更新できないだろうか。
実際にtorneは1万円弱。
torne (トルネ) (CECH-ZD1J)
HDDが必要なら買えば良い。
家電も、そうして機能別に細切れにすれば、消費者も買いやすいし、メーカーも新商品を出し続けられる。
これが一つの解決策になっていないだろうか。

SONY Station」を作ったらいいんじゃないかな

PlayStation3はゲーム機として元々設計されているが、当時としては非常に高性能なハードを積んでいた。
こうした高い性能のハードを積むことで、6年経った今でも問題なく使えている。
こんなオーバースペック気味の機器を中心に、家電を統合してしまう。
そんなターミナル機器を作ったら良いんじゃないだろうか。


PlayStationはゲーム機の名称なので、SONYのターミナル機器としてSONY Station」とかどうだろう。

Sony Logo / Jami3.org

繋がるのはSONYだけで無くて良い。
また、形は据え置き式じゃ無くても良い。
今どきならXperia Tabletをベースにするのが良いのかもしれない。
ソニー タブレット WiFi Sシリーズ メモリ32GB SGPT112JP/S
※画像は先代の「Sony tablet
PlayStation3には「今後10年使えるプラットフォーム」という話があり、実際にあと4年使えてもおかしくない。
SONYは周知の通りの惨状で、今後部署横断的に5つほどのプロジェクトを取り上げて注力開発するらしい。
現在の会社の強みからして、デバイス(CCD)・携帯電話はまず落とせないところだろう。
あと三つ、タブレット(既存)・電子書籍(アメリカで健闘)・HMD(今後に期待)・テレビ(もう辞めたい)・ゲーム
など既存の分野からアイデアを出すのか、全く新しい分野から考えるのか。
ただ、できることなら単に商品の枠に留まらず、生活スタイル・消費スタイルまで突っ込んだ新提案であれば
良いと思うし、それが儲からないとしても「大量消費」というスタイルから背を向ける物であれば面白いと思う。

儲からないとダメなんだろうか?

儲けが一番なんだろうか?
もちろん営利企業である限り儲けは必須だが、現在のアメリカ式の大量消費スタイルは最新機種の開発で
チキンレースをやっているように見えて仕方ない。

Chicken guy / Fuzzy Gerdes

それよりは独自のスタイルを貫き、他社が真似しようのない、独自のプラットフォームを10年間続ける方が
大きくは無くても、安定した収益を得られると思うんだが、どうだろうか。
実際、torneは発売以来好調だが、家電業界では珍しく同等の追従商品が出てこない。
これもPlayStation3というプラットフォームが上手く生きた好例と言える。
SONY復活に、そして日本企業が提唱する「持続可能」提案として、こんなのはどうかと思うのです。