遊園地考2:成功例分析・ナンジャタウン
遊園地と言えば、「絶叫系」と言われるコースターや、凝りに凝ったお化け屋敷、
動物園で言えばパンダやコアラなど、とにかく目立つ「花火」が必要、というのが常識。
City Jet / OliverN5
しかしそんな事ができるのは大規模な遊園地・動物園のみ。実際に中小の園はばったばったと潰れている。
そんな時代に、大手以外はどうすれば良いのか。
その一つの解決策は「ナンジャタウン」だと思う。
ナンジャタウンとは
ナンジャタウンは池袋、サンシャイン60内にある、ナムコが運営するテーマパーク。
テーマパークとしては珍しく、屋外ではなく屋内の2フロアを使った設備になっている。
・リンク → 公式サイト
※今日の記事の画像は一部公式サイトから転載しています
屋内型テーマパークというと、大阪フェスティバルゲートが・・・と思った人、
Osaka Festival Gate - almost abandoned amusement park / Crystalline Radical
あれは大阪にとって苦い思い出なので忘れてあげてください
開業は1996年、資料によるとなんと売上高はテーマパークとしては日本で第5位!(2010年)
・リンク → 特別企画: 遊園地・テーマパーク経営企業 128 社の実態調 - 帝国データバンク
データの年次と集計元がずれるが、集客数では190万人で27位。
(こちらはハイウェイオアシスや動物園・公園も含むのでランキングの順位だけでは比較できないので要注意)
・リンク → 図録▽遊園地・テーマパーク・ランキング
床面積は1万平方m=10ha程度らしい。ディズニーは別格なので、No.2のUSJと比較すると、
USJは面積5.4万平方m(パーク部分は3.9万平方m)で、集客800万人程度。
面積効率で考えれば、USJのナンジャタウンはほとんど変わらないと言える。
USJは日本でNo.2、世界でもNo.9の来場者数を誇る巨大遊園地。
遊園地のような設備産業では、通常は規模を拡大するほど集客エリアが広がり効率が上がる。
実際、近畿圏では中小の遊園地は廃園に追い込まれ、USJへの一極集中も進んでいる。
(それでも儲かってねぇじゃねぇかと言うツッコミは今日は置いておく)
関東圏はもとの人口が圧倒的に大きいとは言え、規模に劣るナンジャタウンがUSJ同等の効率を実現しているのは素晴らしい。
「強みは弱み、弱みは強み」
「強みは弱み、弱みは強み」は佐藤義典というコンサルタントの言葉。
※マーケティングに興味があるなら、この人の本は本当にお勧めです。
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「強み」は硬直化するので、競合にその「裏」を突かれると辛い。
「米国・豪州産ビーフ100%」を安価に実現することを強みにしたマクドナルドは、
「本当においしい肉は合挽。国産牛・豚の合挽肉で本当においしいハンバーグ」という戦略をモスに取られて対応できなかった。
「弱み」も、それを生かした戦略をとると競合が真似できない差別化になる。
要は、「強み」「弱み」は表裏だよ、という言葉。
この言葉は好きで、結構戦略分析の本質を突いていると思う。
「暗い・狭い・騒がしい」を生かす
ナンジャタウンは、全体的に薄暗いし、通路は狭いし、騒がしい。
ナンジャタウンは屋内型で、テーマパークとしては狭い。
商業施設なら、屋内を「いかに広く見せるか」工夫するが、ナンジャタウンは狭く、しかも通路が入り組んでいる。
狭いところで音を出すとどうしても籠もるが、それもにぎやかさの演出にする。
結果、実際よりの広さよりも、施設の大きさをかなり広く感じる。
実際の施設は狭いので、休憩スペースを細かく設ける必要性は低い。
物販も各所に散りばめるのではなく、「食のテーマパーク」として一カ所にまとめることで効率を上げる。
テーマパークが広いと細かく物販スペースが必要だが、狭いからこそ物販スペースへの移動が簡単という逆転の発想。
狭さを生かした演出を徹底することで、結果として効率が上がったという印象。
「大人を本気にさせる」仕組み
教科書的な「効率」の話だけでなく、ナンジャタウンは大人が行っても普通に面白い。
ナンジャタウンの特徴は「驚異のリピータ率」と言われる。
(「リピーター率が高い」という記事は多いが実数は見つからず)
あの小さなスペースの中にこれでもかと詰め込んだネタの数々が、リピーターを生んでいるのは間違いない。
スタッフが本気
まずスタッフの教育が行き届いていて、練度が高い。
これはディズニーランドにも通じるが、アトラクションの参加人数が一人だろうが、変わらないテンションで
「うわ〜、XXXが襲ってきた〜!!」
といえるテンション。基本だけどこれは大切。
アトラクションも決して子供騙しではない・・・
というか大人が本気になっても普通にクリアできない難易度。
ターゲットを子供に限らず、カップルからお父さんまで幅広く対象にしているのが偉い。
今話題の「謎解き型」アドベンチャーも、ここでは以前から行われていた人気のアトラクション。
一つの建物が、複数のアトラクションや謎解きの施設として利用されるので、とにかく人の移動が忙しいのもこの施設の特徴。
例えばこの写真。
イヤホンで次のイベントが指示されるので、その指示に従って施設内を走り回る。
この場所は、このアトラクションの参加者には「爆弾の解除イベント」の場所だが、他の人にとってはタダの「通路」。
こうやって、一つの場所にいくつもの意味を持たせることで、施設の広さを何倍にも活用している。
そして、圧倒的なイベント量。
こちらも全く子供向けではなく、モンハンからソニック、戦国BASARAや銀魂、コスプレなど、
※ちなみに今のトップページより。どうも「腐」向けが・・・ゲフンゲフン
幅は広いが一つ一つは狭い「マニア」を狙っている。
対象がマニア層なので、イベントの内容も中途半端なものでは受け入れられない。
人気のイベントは複数回行っているあたり、きちんとマニア層にも納得してもらえるレベルのものを作り続けられているということが偉い。
数が本気
そしてこういったイベント、アトラクションの数がとにかく多い。
例えば「隠された謎が100個」とか、「人気の餃子が100種類」とか、
どう考えても一日で消化できない分量のネタを仕入れてくる。
この辺も、「前回はあれに行ったから今回はコレ」というリピーターに繋がる策になっている。
とにかく、「金がないなら頭を使え」を地でいっている印象をびしびし受けるのがナンジャタウン。
もちろん、池袋という立地や、数多くのライセンス商品とタイアップして集客を稼いでいるのは事実だが、
それをこの完成度で成功させるには丁寧な作り込みをやっていることが、行ってみるとよく分かる。
この真似ではなく、良いところを抽出してほかの中小の遊園地の復興策にできないか?
それを展開してみる。
この前の記事はこちら
・リンク → 遊園地考1:生駒山上遊園地分析
続きはこちら
・リンク → 遊園地考3:生駒山上遊園地改善案