ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

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医療と、人命と、利益

一般的に開発には金がかかるが、特に医薬品は桁が違う。
開発には短くても10年と言われるし、第一相から第三相までの試験を、下手すりゃ何万人単位でする必要がある。
だから医薬品会社は巨大化し、「ブロックバスター」といわれる巨大な市場に注力するようになる。
「ブロックバスター」とは心臓病やがんなど、巨大なマーケットの治療薬のこと。
巨大な市場とは、つまり患者が多くて治療費が高額な分野のこと。
敢えて失礼な言い方をすると、「金持ち客の多い市場」ということ。

medicine / taiyofj


ブロックバスター開発が主流になると置いて行かれるのはこんな市場

  • マイナーな疾患 (顧客が少なくペイできない)
  • 生命に関わらない病気 (高い治療費が出ない)
  • 発展途上国特有の疾患 (高い治療費が出ない)

これらの治療薬は昔から問題になっているが、製薬会社も営利企業なので手を出したくないのが本音。
というより、ブロックバスター開発で巨大化した企業はもはや、小口案件に実質手を出せない企業体制になっていると考えて良いと思う。

寿命の短い薬

例えば今月の日経サイエンスでは「耐薬性細菌」の話が取り上げられていた。
MRSAやVRAの話は知っていたが、それを上回る耐薬性細菌が発生しているらしい。
これはつまり、病院に入院することで死亡するリスクが高まるということ。

virus cells / Creativity103


抗生物質と細菌の戦いはいたちごっこで、ペニシリンの発見以来、耐薬性細菌と新しい抗生物質の開発競争が続いている。
新しい細菌が発見されたこと自体は時間の問題だったわけだが、問題は新しい抗生物質の開発計画が無いこと。
つまりこれから10年以上は、手持ちの抗生物質で何とか凌ぐしかない。
そして製薬会社の本音としては
「効果期間の短いと分かっている抗生物質への開発の意欲は小さい」


薬品は元々特許期間までで研究・開発費を回収する必要がある。
特許による保護期間を過ぎると、他社が同じ薬効成分の薬をどんどん出してくる。
(この特許切れによる他社品がジェネリック医薬品後発医薬品
これにより市場価格が急激に低下するので、それまでに開発費を回収できないとペイできなくなってしまう。
ただこの新しい抗生物質は、それより短い期間しか有効期間が無いと考えられている。
これが医薬品メーカの開発意欲を大きく削いでいる
気持ちは分かるけどなぁ。

Pills 3 / e-MagineArt.com

門外漢からの提案

ではその環境でこれから先、どうやって医薬品を開発したらいいか。
製薬には金がかかるが、それを営利企業ではなく公共事業にしてはどうか?
各国がお金(供託金)を出して薬品を開発し、ライセンス制で製造をメーカに委託する。
メーカは製造・販売で利益を出して、ライセンス料をこの開発団体が受け取り次の開発費の一部として充填する。
(もちろんペイできる金額にはならないので、不足分は供託金で賄う)

U.S. Army research unit marks four decades in Kenya, Africa - USAMRU-K / US Army Africa


これなら参加国の利益になるし、先進国は自国で疾患の少ない病気に対しては「国際貢献」という名目が成り立つ。
実際名目だけで無く、生活環境の改善は下手な資金援助より、発展途上国に対してよほど意味がある。
また、発展途上国向けの医薬品はライセンス料を削減することで、購入費を抑えることもできる。
(年収が少ないので医薬品や安く提供しなければ使えない。政府もお金が無いので購入して配分も難しい場合がある)


実際「誰が」開発するのかは、開発拠点の場所・人材含め議論は紛糾するとは思うけど、アイデアとしてはどうだろう。
ぱっと調べた感じでは時間と金のかかる「治験(新薬の臨床試験)」は国際協力が注目されているが、研究開発段階での協力はなさそう。
巨大企業ともバッティングしないし、人命の問題が目の前にある訳で、やりゃいいと思うんだけど。
何か問題があるのかな?
さすがに門外漢なんでこれ以上は突っ込めません。