インドの弁当とインターネット
本日ネットで話題になっていた記事が凄い。
リンク → エラー率わずか0.00000625%、驚異のインド式昼食配達システム「ダッバーワーラー」
日本の「お弁当」という文化は世界的に見れば結構特殊で、
「温かいものしか食べない」という食文化は結構多い。
それは単純に、腐食への対応策という側面もある。
中国はじめ、多いのは「とにかく食堂を作る」という対策。
香港もそういう食文化のおかげで世界的にも高い外食産業が育ったが、逆に少し前までは、キッチンが無い家も多かったらしい。
Food Wagon [Namdaemun Market / Seoul] / d'n'c
さて、記事はインドのお話。
インドもお弁当文化(朝作って昼食べる)は無いが、しかし家庭で作った料理は食べたい。
そこで発達したのが「お弁当の配達」という文化。
その文化を100年以上にわたって支えているのが記事にある「ダッパーワーラー」というお弁当の配達業者。
システムが凄い
詳細は記事を読んで頂けば良いが、とにかくそのシステムの完成度と堅牢性が凄い。
「持ち主のところに届くまでに最低6回は中継される」のに、
「途中、誰がいくつどうやって運ぶのかはまったく決められていない」システムで、
「地震やタイフーン、武力衝突などがあった日でもダッバーワーラーの仕事はまったく止まることはない」上に、
「そのエラー率、実に1600万回に1度。百分率では0.00000625%。つまり2ヶ月に1回しか失敗しない」
どの数字を取っても、とんでもない。
Mumbai Dabbawala / A y A n
システムの収斂進化
生態系で同じ位置を占める生物は、その進化の途中経過が違っても同じ形態にたどり着く。
進化論ではこれを「収斂進化」と言う。
例えばサメとマグロとイルカ。
軟骨魚類・硬骨魚類・ほ乳類と進化の系統樹では全く違うのに、
長距離を高速で移動するという進化を続けた結果、どれも同じような流線型の体を手に入れた。
これが生物の進化で言う収斂進化。
この記事で面白かったのは、このダッパーワーラーのシステムが、インターネットのパケット通信に非常に似ていると言うこと。
どちらも発信者・受信者の直近の窓口は同じ(ネットならISPは同じ)で、その途中経過は何も指定されていない。
コンテンツ(弁当とパケット情報)はパッケージ化され、行き先だけが記載されてネットに放り出される。
Level 3 having issues today / jblyberg
つまり、インターネットのパケット通信と、弁当の配送システムに使われているこのシステムは、
「冗長性を持って1:1でコンテンツをやりとりする」というシステムを構築するには
とても優れていて、お互いがそれぞれの最適化を目指した結果、収斂進化したと考えられる。
とにかく運ぶ物
これはつまり、パケット化できるなら小包なども同じシステムが使えると言うことを示している。
インドでは弁当の配達というシステムでこのパケットが成立したが、
ある一定の大きさの荷物を安定して運搬するという意味では小包などにも転用できる可能性がある。
ネットのパケット通信は「データをコピーできる」という特性を利用して成立している。
これがパケット通信方式をリアルに持ってこられない理由だったが、弁当の配達では紛失できない荷物の搬送を成立させている。
ただし弁当ならではの制約条件も多く、特に搬送時間の制約条件は厳しい。
つまりパケットシステムを前提にして、運ぶ物の特性によるチューニングの余地があると言うこと。
インドのやり方は、冗長性を持った上に安価な配送も実現できているとのこと。
(もちろん地域の賃金が安いという前提はある)
日本なら上手く働いていない家庭の力(主婦やリタイヤ者)の力を安価に利用して、配送する物もあるのかもしれない。
日通や引越社のような大手引越会社に対しての赤帽、
ミドリ電化やジョーシン、ヤマダ電機にたいしてのアトム電気のように、
ヤマト・佐川の二大勢力に対しての主婦配達連合とか作り上げられたら、それはかなり面白い。
fuck the college is done / Bombardier