ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

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バレエと歌舞伎の違い

日曜にNHKでバレエコンクールをやっていたので流していたら思わず見てしまった。
いや、バレエに興味は無いんだけどね。
それにしても国際コンクールとか言うともう難易度を上げるために
変態的な動作を取り入れざるを得ないから、むしろ面白いね。


ってか何が面白いって、ピッチピチの服とかパン一で若い男子がナルシストに踊る様を
が見てもう、大興奮ですよ。
あの動き、エガちゃん(江頭2:50さん)が出たら結構な得点なんじゃ無いかってのもあったんだけど。

あぁ、年齢的にムリか。

文化の輸出

それにしてもバレエってフランスで成立(発祥はイタリア)なんだけど、
 バレエコンクール → 養成所 → バレエ団
としっかりとした体系があり、世界中で観劇できる。
バレエはそんなもんだ、と思っているけどよく考えて欲しい。
日本で言うと成立年では歌舞伎と同じぐらい、の方が歴史は圧倒的に長い。
(能の起源は1300年頃、バレエや歌舞伎は1600年頃らしい)


特に歌舞伎が幕府から何度も中止例を出されたのに対し、
バレエは国王自らによりきちんと成立したという違いはあるけど、今となっては大きな問題じゃ無い。
一番の違いは能や歌舞伎は基本的世襲であり、コンクールや学校、海外からの留学制度は無い所。
歌舞伎の新人コンクールがあって、それを中国やアメリカで放送する事があり得るのか、ということ。
バレエは一例になるけど、やはり「文化の輸出」という観点で見るとヨーロッパ、とくにフランスの戦略は素晴らしい。
バレエを興行的には輸出しつつ、世界から人材を募集することによってバレエ教室という裾野を全世界に広げ、
バレエ文化に親しむ人口を増やすとともに「最高峰はヨーロッパ」という自身の地位を向上させる。
その仕組みが素晴らしい。


これは結果としてそうなったんじゃ無い。
おそらくバレエの学校を作るにしてもその入学基準は時代毎に何度も変更されたろうし、
自国の地位と文化の輸出のために戦略を都度組み替えてきた結果が今の結果だと思う。
バカボンでイヤミがおフランス帰りザンス」と言っていたが、この「お」フランス
という言葉に文化の輸出の成功例がはっきり見えていると思う。

文化の侵略

そして面白いのはコンクールの結果。
優勝(第一位)がブラジル人、そのあとには韓国・中国・アメリカ・日本の順。
中国や韓国は国策でバレエ振興をやっていて、こういったコンクールでの上位入賞を狙っているらしい。


もちろん留学先に北京の学校があるあたり、主催側に中国が金をつぎ込んで自国が入れるように色々やっているとは思う。
主催側にもそうやってヨーロッパに金が落ちるのなら良しという事だろう。
逆に韓国や中国は、最終的には「バレエをやるなら中国や韓国で」という「バレエ先進国化」を目指していると思う。
つまり「バレエ文化への侵略戦争」がこのコンクールの裏で動いている実態だと思う。


日本は過去に柔道でこれをやられた。
柔道はまごう事なき、日本のスポーツ。
元は武道(柔術だが、現在の柔道は格闘をベースにしたスポーツと考えて良い。
日本では精神鍛錬の意味合いも強く、勝敗を厳密にする定義は弱かったが、近年の柔道はスポーツ化が進み、日本人的な考え方では勝てなくなった。
この変化は明らかに国際柔道連盟の主要メンバーに日本人が居ないせい。
フランスを主とする海外の侵攻により、柔道のルールを変えられ、
「柔道に強くなるにはヨーロッパに遠征しなければいけない」という状態にさせられてしまった。
日本はこの手の国際政治力には本当に弱い。

静かな文化侵略戦争の現在

現在、先進国間で目に見える戦争はできないが、こういった目に見えない文化侵略戦争は色々と行われている。
ある程度メジャーな競技/文化ではその「先進国」になるべく戦いが行われている。
文化の中心になるとメリットがあるとそれだけ意識されているということ。
それは「国際的地位」という曖昧なものだけで無く、イベント(大会)や教室等の産業面でもはっきり見える。


日本はこの分野で殆ど勝てていない。
文化振興では第一線の競技者を育てるとともに、そのルール作りに関わる政治力が必要になる。
日本では政治力を発揮する人間を育てるのが苦手なだけで無く、政治力のある人を評価しない(むしろ叩く)傾向がある。
この傾向をまず直し、「日本の振興のために政治力を」と推進していかなければいけない。
例えば往年の一流アスリート(その分野で発言力を持つことが多い)を集めて政治的活動のセミナーを行うとか、
ジャンルを決めて選手の教育と文化振興プログラムを併せて行うプロジェクトを行うとか。


今それに力を注いでいるのが韓国
不自然きわまりないジャッジが話題になるが、それでももぎ取ったメダルを手に韓国がフィギュアスケート先進国」になっているのは確か。
国内競技としてはテコンドーを国際化することを進めている。


日本には歴史も文化もあるので、フランス並みにノウハウを手に入れられたなら、文化振興を戦略に持ち上げることも可能だと思う。
実際、柔道の失敗を契機にスポーツ界では文化振興の戦略を考える機運が出ている。
しかしそれを競技単体に終わらせず、国全体でノウハウを共有していけばより良い動きができるはず。
相撲は選手の国際化は進んだが、相撲界の体質が変わらなかったため、現在のような状態になった。
歌舞伎は閉じこもった世界だが、歴史の厚みはバレエに負けないので、上手く展開すれば可能性はある。
文化では将棋囲碁もある。
将棋は日本が強いが、漢字表記を直さないと海外進出は難しい。
囲碁は中国・韓国が圧倒的に強いらしく、まずは国内の文化振興をしなけりゃいけない。
百人一首は・・・まぁ、国際化は難しいかな。
とにかく、そうして「日本が総本山」をいくつ並べられるかが文化振興の「戦略指標」になっていくんじゃなかろうか。