ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

ボードゲーム制作を行う「ペンとサイコロ」のブログです。公式サイトはこちら→http://penanddice.webcrow.jp/

ボードゲームの作り方を教えてと言われても

先日「ボードゲームを作ってみるワークショップ」に参加して面白かったんですが、「ボードゲームの作り方講座」もあると聞いて、そうしたニーズも広がっているんだなぁと感じます。

 私も「どうやって作っているんですか?」と聞かれることはありますが、それがルール作りの話なのか、入稿・印刷絡みの話なのか、販売面での話なのか、対象が分からないのでどう答えて良いか分からないことも。

 

例えば私が新作のゲームを作るといった場合、発売までの流れを分解するとこんな感じです。

  • ルール作り
  • テーマ決定 → タイトル決定
  • コンポーネントの選定・決定
  • コンポーネントの発注先の選定・決定
  • イラスト/グラフィックの発注
  • 翻訳依頼
  • JANコードの決定
  • データ入稿
  • 即売会のカタログ原稿作成
  • コンポーネントの丁合(箱詰め)
  • シュリンク包装
  • 委託先への事前連絡と数量確認
  • 商材写真作成
  • WEBページ作成
  • 各サイト登録(ゲムマ公式、ボドゲーマなど)
  • JANコード登録
  • 事前出荷(可能なら)
  • 即売会人員確保
  • 即売会移動/宿泊手段確保
  • 即売会の釣銭/什器準備

多少前後したり、行ったり戻ったりもありますが、大まかにはこの流れ。
「発売日」という日付から逆算しやすいので、大体どれかの展示会をターゲットに日程を組みます。この辺は同じ方法の方が多いのではないでしょうか。
進行上どうしても厳しくなりがちなのは翻訳あたり。
いつもご迷惑おかけします・・・

 

「ペンとサイコロ」は私一人なので、やるのは全部一人。
イラストや翻訳など、自分でできない部分は外注しています。(最初はイラストもフリー素材などを駆使して自分でやっていました)

また一人でやる以上、マンパワーにも限界があります。この点も、自分のリソースとコストの兼ね合いで、そもそもどこまで作るか、どこまで外注するかを決めています。

例えばリソースの問題で諦めがちなのは展示会でのチラシ。

一度作れば流用できると思いきや、展示会の名前やブース番号などの追加情報、また展示会によって微妙に販売するゲームの内容が違うなど、地味に手間がかかります。
一人なので進捗管理も特にツール等は使っていません。全部感覚ですが、意外と何とかなってます。

 

同人誌やクラフトなど、ほとんどは他の制作物と同じ内容ですが、ボードゲーム「ならでは」というと「ルール作り」「コンポーネント」周りでしょうか。
ボードゲームのルールを考える方法は今までにも書いたことがありますし、他の方も色々な記事を書かれているのでそちらをご参照ください。

ルール作りについては、例えば過去に書いたこちら等。

roy.hatenablog.com

 

コンポーネントの選定について

ボードゲームコンポーネント(部品)を大別するなら「箱・カード・その他」でしょうか。(普通印刷で対応可能なルールブックは除く)

■箱

大別すると 袋・貼り箱・キャラメル箱・その他(スリーブ箱など)
以前はビニール袋にゲームの中身を入れて売る「袋販売」が多かったそうですが、今では少数派です。
箱にも色々な種類がありますが、遊ぶ度に開け閉めして強度が必要なことから、貼り箱が多いです。
この貼り箱、作れる会社は多く、結構少数でも作ってくれます。
これは貼り箱が和菓子の入れ物などでも使われているからだそうで、特殊な加工にこだわらなければ、おそらく地元にも対応可能な会社があると思います。
私がよくお願いしているのは「大成紙業工業所」様。
特殊加工はできませんが、安価かつ指定サイズの箱で作ってもらえます。

「どこに頼めばいいかわからない」という場合はご相談ください。少数の仕事でも大歓迎と仰っていたのでご紹介させていただきます。(特に宣伝費用はもらっていませんが、「『ペンとサイコロ』の製造元と聞いて」といってもらえば話が早いかもしれません)

www.taiseishigyo.jp

 

■カード

個人制作でゲームを作るにあたり、選択肢が狭いのはむしろカードです。
サイズの標準規格があるから印刷所も多いかと思いきや、一枚の紙では透けるため、複数の紙を重ね合わせる特殊な製法がカード印刷では必要です。このため、決まった印刷所でしか対応できません。
有名どころの印刷所さんが、ゲームマーケットに向けてどこもパンク状態になるのはそうした選択肢の少なさの証ですね。

有名な印刷所さんを下記に列挙します。私はカードゲームをあまり作っていないので、カード印刷には詳しくありません。もっと経験のある方なら他にも色々ご存じかもしれません。中国・台湾系の印刷所も多数ありますが、聞いた範囲では最小印刷部数が500部以上でしたので割愛します。(下記、敬称略。リンクは自分で探してください)
萬印堂、タチキタプリント、POPLS、盤上遊戯製作所(BGM)、フジ印刷・・・

(今確認したらアドプリントさんで「トレーディングカード」ってありますね。これ、以前からありましたっけ?)
「日本の同人ゲームはカードばっかりで残念。もっとバリエーションがあればいいのに」と海外からのゲムマ来場者が言っていましたが、みんなもっと挑戦しても良いのではないでしょうか。
ちなみに私は、ここ三作はカードもサイコロも使っていません。
(「卓上ヘボコン 対戦キット」「妄想トランプ」「BLOCK. BLOCK」)
それでも個人でゲームは作れます。

 

箱とカード以外のコンポーネント

カードと箱の他には何があるか?
これは本当にゲームにより様々です。
コイン(紙製・木製・金属製)、サイコロ、駒・・・

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 「100均に行ってゲームのコンポーネントを探す」という方は多く、実際に100均で販売されているものを使ったゲームを作られる方がいらっしゃいます。
私も過去に使用したことがあります。

 

100均の良いところは安いだけでなく、そのクオリティです。
100均で買ったと言わずに袋から出した物だけ見せれば、立派な部品に見えるものもたくさんあります。
「これは何かのコンポーネントに使えるかも」と買い込んだ100均部材ボックスは、ある程度制作経験のある制作者はみんな持っていると思います。

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製造数が数十~数百個なら、そのまま使っても問題ありません。
問題になるのは「入手性」です。
100均にはいつ行っても色々な商品が売られていますが、実はその内容はものすごい速さで入れ替わっています。
「そこに無ければ、無いですね」
と言われるどころか、本部に問い合わせても廃番というのも良くある話です。
「今回作ったら、再販しない」と言い切れるならまだしも、「こんな良いものが、こんな安く!」と感じたものほど、それが廃番になると代替が効きません。
使われる際は、このリスクをよく肝に銘じておいてください。
また、100均ショップは大体どこも100個単位で取り寄せ可能ですが、アソート品の場合特定色の指定はできません。大量使用時はこれも要注意です。

 

コンポーネントを探す

100均以外で面白いコンポーネントを探すなら、自分の足で稼ぐしかありません。
例えば「卓上ヘボコン 対戦キット」では、金属の「ナット」を部品として使いました。

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金属部品を自作すれば非常に高価になりますが、汎用品として大量生産されているナットは、高品質なのに安価に手に入ります。
「量産品で安定して手に入るけど、ボードゲームで使われるところ見たことないな」
というのがコンポーネントを探す際のポイントです。

 

ナットを使うアイデアは、「ヘボコン」というテーマと、自分が大学時代にロボコンをやっていてナットが安く、入手性が良いという知識があったからです。
人それぞれバックグラウンドは違うので、自分の得意領域の知識を使って新しいコンポーネントを見つけてください。

 

例えば食品サンプルは、20年前は飲食店でしか使われないものでした。大阪の飲食店向けのプロ用機材を扱う「道具屋筋」で食品サンプルを見ていたら、「個人向けの店じゃないからジロジロ見るな」とまで言われました。
(私は道具屋筋がプロ向けで「素人お断り」だった当時から、道具屋筋を観光ルートとして友人を連れて行っていました)
それが今では食品サンプルがキーホルダーにもなり、同じお店が観光客向けの食品サンプル専門店になっています。
新しい用途を発見して、市場を作ればこうして「キーホルダー」として専用品も作ってもらうことができます。
何かの部品が、将来的には「ボードゲームの標準コンポーネント」になれば面白いですね。

 

コンポーネントを作る

どうせ無いなら作るのも一つです。
「卓上ヘボコン 対戦キット」では3Dプリンタを使いましたし、「BLOCK. BLOCK」では木製ブロックを購入してそれを自分で接着・塗装しています。

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これが一つ作るのに一週間以上かかるようなものだと量産は難しく、どちらかというと「クラフト(工芸)」の領域に入ってしまうので、作業方法・工法含めて量産性を考えながら決定する必要があります。
ちなみにBLOCK. BLOCKの製造数は当初一日0.5個程度、今は多少改善して、それでも1.5個程度なので全く褒められたものではありません。

 

こちらは鋳造や木工など、元々何かを作ることが趣味の方がボードゲームを作り始められた場合に限るように思います。
あまり私のやり方を真似されないように・・・

 

コンポーネントを作ってもらう

ただ、実際に作ってみることで勘所を知ることは重要だと思います。
「三千世界の烏を殺し、主と朝寝がしてみたい」初版では、木製ボードを自作していました。(量産のためにベルトサンダーも購入)

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二版では授産所に製作を外注しましたが、その際に自分で作った方法を伝えることで量産できました。
三版以降は箱を梱包含む全てを「フジ印刷」様に外注。
この際も打ち合わせでコストと製法の落しどころを探る中で、どの工程を省けるかという話では自分で作った経験が生きました。

 あ、「BLOCK. BLOCK」の製作、やって頂ける業者の方がいらっしゃったら連絡ください。
(コスト的に厳しいと思いますが・・・)

 

分からなければ、聞いてみる

多くの製作者がそうでしょうが、私の場合ルール作りと並行して原価計算を行います。
その中でコストに合わせたコンポーネントを並行して探します。

 大事なのは必要と思えば問い合わせること。
「BLOCK. BLOCK」は何度も試作を作りましたが、やはりこのゲームを一番楽しく感じるのは25㎜角のブロックで、重量を考えるとプラや金属ではなく木製が一番という結論になった後は全国の木工制作会社に問い合わせました。

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 並行して色々な方に遊んでいただき、面白いと感じていただいた方から木工に詳しい方をご紹介いただき、製法や発注方法について提案を頂きました。
そうしてできたのが昨年の初版「BLOCK. BLOCK」(定価1万円)。
リリース後もコストダウン方法を検討し、最終的には定価を5,980円に改定して「北海道ボドゲ博」にて発売できました。

 

何が言いたいかっていうと、「いろんな人の話聞くといいよ」ってことです。
先に挙げたワークショップ「ボードゲームギルド」では、ワークショップの後は制作者同士で結構ずーっとダラダラと話していました。
テストプレイやワークショップももちろん大事ですが、こうした情報交換も役に立つ・・・ことがあります。(そうでない話ももちろん多いですが、それはそれで面白いのでOK)

 

自分一人でできること、調べきれることには限界がありますし、他の人の失敗事例は役に立ちます。
「ゲームを作るのにどうやればいいか分からない」という方は、講演会や交流会など、情報を取れる機会があれば参加されるのも良いかと思います。
地方の方で近くに話を聞ける人が居ない(知らない)場合は、(私で良ければ)私に質問してもらっても結構です。
この記事に質問投げてもらえば、私が答えられることなら別のブログ記事として回答させてもらいます。聞きたい内容を具体的に言っても会えるとありがたいです。

 

私の回答でご満足いただけるかはわかりませんが。