ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

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「天才画家ボン」と「イロトカタチ」という2タイトルについて

ゲームマーケット大阪で見かけたゲームでこんなゲームがありました。

 

ロクジゾーさんの「天才画家ボン」

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「イロトカタチ」

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※「イロトカタチ」はゲームマーケット大阪時点では販売なしの試遊のみ

 

いずれも「単色のカードでお題のイラストを作り、当てて貰う」というもの。

これだけ聞くと同じゲームに見えますが、実際のプレイ感や面白さを作ろうとしている点は異なりました。

 

ゲームの違いは?

いずれもお題を単色カードから作るゲームですが、

  • 「天才画家ボン」は「全てのカード」を使って作る
  • 「イロトカタチ」は「ランダムな10枚」から作る

という点が一番の違いです。

また「天才画家ボン」では、「天才画家」たるプレイヤーが絵を描き上げます。つまり求められるのは「完成形」で、答えが出なければお題を変えて同じプレイヤーが絵を描き続けます。

それに対し、「イロトカタチ」は「上手くいかない」点をあらかじめゲームシステムに組み込んでいます。回答者は上手くいかずに次の人に回していくことが前提です。つまりプレイヤーは「ままならなさ」を遊ぶことをより強く求めるゲーム性です。

 

同じようなコンポーネントを使い、ちょっとしたルールの違いに見えますが、この違いはゲームで「何を楽しんで貰うか」のコンセプトがそもそも異なります。

「天才画家ボン」では色を当てるまでじっくりあそぶ「コミュニケーション」。

「イロトカタチ」は「誰が当てるか」という「ゲーム性」。

こう並べれば、二つのゲームが全く違うコンセプトからスタートして、同じようなコンポーネント(部品)に収斂したことはイメージ頂けるかと思います。

 

不要なパクリ疑惑の怖さ

今回、なぜこの二つを取り上げたかというと、ゲームマーケット大阪の感想で複数の方から、この二つのゲームが似ているという声を聞いたためです。

以前にも書きましたがゲームのルールには著作権が無いため、他の人がルールを剽窃した(パクった)ところでそれを法的には咎められません。このため、制作者やプレイヤーの「良識」が大事になってきます。

しかし、裏を返せば、「たまたま似たようなゲームが出来た」という場合にも、それが「パクリだ!」と認定されてしまえば、悪評が立ってしまうことになります。

こうなってしまうと、当事者となるゲーム制作者には何のメリットもありません。(「パクった」と言われた人にも、「パクられた」と言われた人にも)

 

今回、この二つのゲームがパッと見に見ていることは間違いないと思います。

しかしながら、こうしてじっくりと比べてみれば、ゲームのコンセプトからして違うところから組み立てられていることが分かります。

念のため双方の制作者同士にコンタクトを取り、直接やりとりをして頂き、「全く違う物だよね」と確認しました。

■「天才画家ボン」デザイナー ナラセン様

イロトカタチさんとお話させて頂きました。「単色カードを組み合わせてお題をつくり当ててもらうアイデアを同時期に考えた」「そのアイデアを使ったゲームのまとめ方・遊ばせ方は大きく違った」の2点を双方確認いたしました。どちらも子供からお年寄りまで遊べる間口の広いゲームでありつつも、面白さのポイントが異なっておりますので、「イロトカタチ」「天才画家ボン」のどちらも楽しんで頂けますと幸いです。

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■「イロトカタチ」デザイナー 渋谷様

ロクジゾーさんとお話しさせていただきました。
2つのゲームは「色のついたカードでお題を表現する」というアイデアの発端は似ていますが、お互いが練り上げた結果、全く違う遊び味のゲームに仕上がっていると認識しました。
「天才画家ボン」と「イロトカタチ」、どちらも分かりやすく、一緒に遊んだ人達が笑顔になれるようなゲームだと思います。両方の違いを楽しんでいただければ幸いです。

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ということで、双方のゲームを確認された格好になります。

同じコンセプトのコンポーネントを使ったゲームで、これだけ違うテイストのゲームになるというゲーム感を、ぜひ比較して遊んで貰えれば面白いかと思います。

 

「似てる、似てない」の話の怖さ

どうも最近「似てる、似てない」の話をすることが多いんですが・・・

(別にそういう話が好きというわけでは全く無いです)

拙作「BLOCK. BLOCK」にしろ、今回取り上げさせて頂いた「天才画家ボン」「イロトカタチ」にせよ、ゲームを作ったことのある人なら、ルールを見た時点で、そうでなくとも遊んでみれば「こりゃ違うゲームだろ」とすぐに分かる話だと思います。

それに対して「あれは似ている」という話を何で言われるのか・・・

と考えたんですが、「コンポーネント(部品)が特殊だから」ではないかなと。

例えば「数字と数種類のスートが書かれたカードを決まった規則で出して行き、最初に手札を使い切った人が勝利」というゲームシステムに対して、それが「大富豪のパクリだろ」という人は少ないと思います。それ言ったらトリックテイキングは全滅でしょうし。

ところがこれが「テトリミノのブロック」や「単色のカード」だと、「それ他でも見た気がする」と言われてしまうわけです。ブロックやカードの種類も数も違うのに。

要はこれらのジャンルが未成熟だからなのかな、と。

「ブロックゲーム」や「カラーカードゲーム」が一大ジャンルとなって、この名前で呼ばれるようになれば、誰もこうしたゲームが「似ている」「パクりでは?」なんて言わないでしょう。

そうなるまでは、面倒でもこうして当事者が発信し続けるしかないのかなー、と思う次第です。

 

なかなかキレイに線が引けずに難しいところですが、「こうすれば簡単に判断できる」といったご意見などありましたら、ぜひご意見ください。