ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

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フィリピンと日本と常識

仕事でフィリピンに行きました。
実は5歳までフィリピンに住んでいたので、自分にとっては日本と香港に続く「第三の故郷」だったりするんですが、来るのは帰国以来四半世紀以上ぶり。

 

住んでいた当時は電力が足りなくて輪番停電があったとか、国際電話を掛けるためには半日かかったとか色々と親から聞いていましたが、そういう事情はさすがにクリアされていました。
しかし時代に応じて通信事情や電力事情が回復しても、逆に言えばそれ以上の発展には失敗した国、というのが訪れた実感です。
首都マニラの中にもそこかしこにスラムがあり、街のあちこちには警官が立ち、銀行の入り口にはショットガンを構えた警備がいる、果てはショッピングモールやホテルに入る際に簡単な手荷物検査があるなど、全体的に治安の悪さを伺わせます。
(つい先月末にも大きなテロがあったため、国全体で警戒レベルを上げている最中だったという事情はあるそうですが)

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そんな国に住む彼らにとって日本は今でも「進んだ優れた国」という印象だそうで、空港からホテルに向かう際には、タクシーの運ちゃんが「お前日本人か。この道路も日本が作ってくれたんだ」と日本政府が共同プロジェクトとして作った道路を嬉しそうに指してくれました。
そういやマレーシアもそうでした。
クアラルンプールでも「この道路は『オオバヤシ(大林組)』が作ったんだ」と言われました。
日本に居るとなかなか実感がわきませんが、ODAやら円借款やらで海外のインフラの作るのは、地味なようで結構効くんですよね、本当に。
中国が「一路一帯」で必死にインフラ整備に走るのも、お金と共に「中国の地位を上げる」という意味があるのかと思います。

 

フィリピンではそんな優位性を保つ日本ですが、中国に行けば日本が負けている、あるいは下手に出ざるを得ない状況が多々あり、日本の国内にいても低成長やら少子化やらと後ろ向きな話が多く目に入ります。
言ってみればそうした「中国にもはや負けている」とか、「少子高齢化と低成長で若年世代は子育てできないほど困窮している」のが日本の現状なんでしょうが、「高度な技術を持っている憧れの国」が30年前、40年前に世界から見た日本の姿だったんでしょう。

 

なんでこんな当たり前の話をするかというと、「日本を見る目」って、例えば今の60代・70代と30代・40代、更に言えば10代・20代でそれぞれ全然違うと思うんですよね。
例えばK-POPを肯定的に捉えるか否定的に捉えるか、SONYを何の会社だと思うかなんかも、世代で差があるでしょうし、それは例えば「昔のK-POPの印象が強い世代」と、「先入観無く今のK-POPを受け取る世代」の差だという部分は少なからずあると思います。
日本をどう捉えるかもそう。
うちの父親は東・東南アジアの製造工場を駆け回ったバリバリのたたき上げですが、その父親も「今の中国製品の質は高くて、価格だけでなく質でも日本が勝てない物がある」という事実を受け入れるのにはかなり時間が掛かりました。
製造の現場で各国を訪問して、モノが分かっている人間でもそうです。
日本に住んでいて現地に訪問もしたことがない60代・70代の偉い人たちに「日本は衰退している」と言っても、高度成長期に刻み込まれた成功体験が変わるのは本当に難しいんだろうと実感します。

 

しかし、それはどんな世代でもそうです。
今のフィリピンはクーラーどころか扉もない乗り合いバスが走り回っていて、渋滞が酷く空港までの移動時間は「50分から2時間半」と恐ろしくざっくりした時間でしか予測できません。

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鉄道は3線だけで、計画はあっても「汚職とか私物化とかで失敗した(現地の営業)」とのこと。
新興国では所得の向上でバイクから自動車への転換が進む際に渋滞が慢性化し、鉄道インフラの整備でそれが解消する、という一連のサイクルがありますが、その転換に完全に失敗し、行き詰まった状態です。
こんな感じですが、10年後にはどうなっているか分かりません。
フィリピンでは「Smart」「Globe」の二大携帯電話会社が覇を争っており、「同じ会社同士なら通話無料」を謳っているため、携帯二台持ちが当たり前だそうです。
(だから連絡先を聞くと、電話番号を2つ言ってくる)
料金はWEB接続も込みで月額600ペソ(約1200円)。
なんでそんな価格で提供できるのかは分かりませんが、例えばこれは市内で見かけたアンテナ。

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廃ビルの構造を利用してそのままアンテナを取り付けています。
こんなの、日本だと安全面で絶対NGでしょう。
安全への意識が低く、人件費や土地のコストが安いと、アンテナの設置一つとってもこうして安く上がるのは確かなようです。
未だに道路事情は改善せず、鉄道敷設も失敗している国で携帯事情だけは世界レベルに改善する「テクニカルリープ」が、この国でも起きています。
この2台持ち事情がこの先この国でどう役立っていくかは全く分かりませんし、役に立たないまま終わるかもしれません。
それでも「あの国は遅れているから」がいつ、どこでひっくり返るか、またそのきっかけが何かは誰にも分かりません。


例えば日本では消費税が全ての流通経路でかかるため、実際には8%の消費税が原材料メーカ、輸送会社、加工メーカ、販売店と何重にも課税されて最終製品に跳ね返ってきます。
しかし30%も40%も製品価格を上げられないため、これを各社が無理に吸収することで企業の労働環境がブラック化したのはある程度事実でしょう。
日本にいて消費税が当たり前だと思っていると、この苦労が当たり前に感じますが、そんな事はありません。
消費税や元号対応といった独自のITコストが掛かることもあり、日本で「普通にできるようにする」コストが高く、それが日本のデフレを引き起こしていると知らないと、「なんでこんなに苦労してるのに儲からないんだ!?」と石川啄木のような愚痴を吐くだけになってしまいます。
(もちろんそれぞれの国にはそれぞれの国に特有のコストがありますが、一例として)

 

海外に出ることだけが正義というつもりはありませんが、人間は自分の目に入る以上の情報をなかなか想像できません。
そのためには、いくつになっても積極的に情報を取りに行く、あるいは情報が入ってくるようにする事は重要です。
例えば趣味を持つこともそうでしょう。
趣味自体も良いですが、それを通して今までと違うカテゴリの人に会える事は大事です。
大事なのは新しい切り口での接点なので、いくら趣味があっても、それが「仕事仲間と毎週末にゴルフ」では広がりがあるとはとても言えませんが。
同じ業界の人で集まりがちなら仕事と違う切り口の、同世代の知り合いが多いなら世代を横断できる趣味なら世界が広がります。その意味で「釣りバカ日誌」のスーさんは、趣味の場では「いち釣り人」です。あれぞ新しい切り口の典型だし、年を取って、仕事では偉い立場なのにそれを忘れられるのはたいしたことだと思います。

釣りバカ日誌15 ハマちゃんに明日はない!?

 

新しい趣味を始めるのはハードルが高いですが、海外に出てしまえば強制的に違う切り口でいろいろな人と出会います。だから海外に行くのって、私なんかは実は情報のインプットを強制的に増やす簡単な方法だと思うだけです。
初めての国に行くと、どの国でも最初は「観察」です。
エスカレーターでは歩くのか、信号は守るのか、現金はどのお札が基準で、どのお札は受け取ってもらえない可能性があるか。

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「信号はきちんと守るのが当たり前」というのは「日本の常識」で、世界には「歩行者は守らない」「自動車も守らない」と国により色々な「常識」があります。
この常識を守らないと、特に治安の悪い国では「カモ」と判断される場合も多々ありますし、実際に特有の癖で国籍を判断するのも良くやられる手です。(良い、悪いじゃなくそういうこともあるよと言う事実)
私は危険な国や地域にはなるべく行かないようにしますし、結果としてスリや強盗にも今のところ遭遇したことはありません。
どの国の、どんな荒れた地域でもそこに生活している人はいるわけで、その「常識」を掴めば基本的にはそこの住民と同じ程度には安全を得られるワケです。
そのためには「観察」が物を言いますし、それが自分の知識と違っていても、いかに素早く順応するかが大事です。
だから私はあまり「常識」という事を気にしないのですが、ここなんかはうちの妻と大きくズレるところだったりします。

 

実際、常識の賞味期限ってせいぜい20年ぐらいだと思うんですよね。
例えばタバコなんて戦時中は配給対象になったぐらい「あって当然」「ないと困る」物で、高度成長期も仕事しながらタバコを吸うのは「常識」でした。

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それが席ではタバコを吸わないのが「常識」になり、喫煙後はエレベーターの使用を禁止する自治体が出るなど喫煙自体が「非常識」になりつつあります。
だから老害なんてせいぜい20年のズレ、30代でも老害に十分なりうるわけです。

 

「オレの中では常識」を振りかざさないようにするには、自分の常識を信じず、新しいチャンネルを探して情報を集めるか、普遍的な「数字」で話をするしかないと思います。
いずれにせよ勉強し続けるしかないよね、というのが結論なんですが、報道を見るだに政治家、それも大事な都政や国政に関わる人たちが数字で話をしないどころか、自分の中の古い常識(思い込み)で物事を進めたり、横車を入れたりする。

そもそもが誤報から始まり圧倒的な物量差を押し返せなかった捷一号作戦から何も進歩してねぇよなぁと、多数の民間人犠牲者を出した彼の地の(どこからか入り込んだ鳥が頭の上を旋回する)「世界一治安の悪い」マニラ空港の待合室で思った次第です。