ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

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エコシステムと清濁

中国の山寨海賊版)の現状を見るだに、
デジタルガジェットの物作りで日本はもう太刀打ちできないなと痛感します。

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「コピーの安物なんて」という話で終わらず現場の話を伺うと、凄いのはそのカテゴリでのエコシステムが完全に成立している事。
「安物のスマホ」が売っているのは当然として、実際にはスマホだけでなく「タッチパネル」「筐体」「通信モジュール」「基板」などが単品として商品となっていて、それを自由に組合わせてガジェットを作れる環境ができているわけです。
目立つのは確かにパクリ商品という、清濁で言えば「濁」な部分でしょうが、「オリジナルな商品を作りたい」と思った時に、それを一つからでも作れてしまう「清」な環境でもあることを忘れてはいけません。

 

100円均一ショップやオモチャの市場もあり、こちらも当然パクリ商品が目に入るとは言え、そちらでもさらにその部品となる「タイヤ」「円盤」なども商品として売られているのでしょう。

驚愕!中国のコピー商品市場 <前編> | 明和電機社長ブログ

「中国は人件費が安い」というのは今は昔。
単純な人件費なら東南アジアやアフリカの方が安いのに、こうした安価なものの購入先が未だに中国なのは、こうした「足腰の強さ」があるかと思います。
他では売れないような部品単体を大量に作っても売れる市場が地元にあれば、それを作る業者もできて、しかも顧客が買いに来てくれる。
この「環境」はなかなか真似できません。

 

日本の戦後だってバラック闇市から始まったわけで、その時には文字通り「なんでも」商売になったわけです。
例えば浅田次郎の小説では、闇市でおばさんがパンを売っていて、それを要らないと断るとその場で半分にちぎって安くして売るという話がありました。
この世界の片隅に」では、アメリカ軍の残飯を鍋にぶち込んだ「残飯鍋」が出てきました。

この世界の片隅に

この世界の片隅に

 

 買う人が居るならなんでも商売になる土壌があれば、当然それを仕入れるための「問屋」「卸」も発達し、市場が発生します。
そうしてその地域でエコシステムが成立し、それが競争を経て特定のジャンルでより特化することで、今度は他の地域からも人を呼び込みます。そうしてその仕組みがより洗練されていくわけです。

 

日本でそのエコシステムが成立し、世界に対しても強い競争力を持つのは「同人誌」でしょう。これだけ高品質の印刷を、低価格に、短納期で、しかもごく少部数でも対応できるのは世界でも日本だけではないでしょうが。
しかも様々な紙や特殊印刷に対応する会社もあります。
それを支えるのは、文字通り清濁併せ持った同人誌の数々。
18禁の二次創作カテゴリが取り上げられることが多いですが、もちろんそれは全体の一部。
コミケに限らず日本全国、あらゆる場所・時期に開催される即売会や通販がその裾野を作り上げている事に反対する人はいないでしょう。

 

私が住んでいた当時の香港といえば、パクリのファミコンソフトやCD/DVDの一大製造・販売拠点でした。
香港をはじめとする東南アジア圏では、ライセンスの高いDVDではなく、「VCD」と言われるビデオの見られるCDの市場が大きく、そしてその多くは海賊版でした。

ビデオCD - Wikipedia

香港当局はじめ各国で対策を行った事、市場がより高精細なDVDやネット配信にシフトした事でこうした市場は消えていきましたが、あの当時はあのジャンルで明らかに製造から流通までの流れができあがっていました。
ちなみに土地のない、ビルばかりの香港で製造?と思いますが、香港の工場はビルの「中」にありました。製造規模の小さいCDと相性が良かった事もあるでしょうが、ビルの中なのでどこで製造しているか分かりにくい事も海賊版を促進した一因だったと思われます。
そこから一大産業化し、メジャーなソフトメーカーなりが出てこなかったのは、「清濁」の「清」の部分があまりにも小さかったからでしょう。
あるいは皆無だったのかも。

 

今の時代、そうした「オープンイノベーション」の拠点はいわゆる「ファブ施設」だと思います。
こちらによればその数は全国120カ所(2016年度末時点)。

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世界に1,000カ所という数字からすれば決して小さいシェアではありませんが、CADの知識が必要などそれなりにハードルはあると感じます。

 

こうした流れがもっと進み、もっと「くだらねぇ」ものが、知識のない人でも「それなりに」作れるようになった時、初めて日本のものづくりやITが復権する可能性があると言えるんじゃないかと思います。
設計できなくても、「iPh○neっぽいケース」と「なんかビリビリする仕掛け」を組合わせてジョークグッズを作る。最初はそんなのでも「作った」実感があればいいんじゃないかと。

 

言い換えると、CADの知識が無くても、アイデアだけで「てらおか現象」さんと同じ物が作れる国、それが「ものづくり大国」じゃねぇかと思うわけです。

てらおか現象

 

私は以前、ボードゲーム用の木工部品の国内生産について書きましたが、これもそうした「裾野」を広げる要件の一つと思った部分でもあります。

roy.hatenablog.com

私は当然ボードゲームの畑から話を考えますが、それぞれが趣味や仕事の領域で、こうした草の根の活動や発信を続けて行ければ良いなと思います。

先の「ファブ施設」を紹介するサイトも、運営はメイテック(MEITEC)社。受託と派遣という本業と被らなくはありませんが、やはりメインはCSRでしょう。

良いサイトなので、こちらも今後ひいきにさせて貰い、応援したいところです。