ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

ボードゲーム・3Dプリント作品・3DCG制作を行う「ペンとサイコロ」のブログです。公式サイトはこちら→http://penanddice.webcrow.jp/

規制緩和ってこういうことだったのか

台湾旅行で「誠品書店」に行きました。

www.eslite.com

名前の通り書店が始まりですが、今はデパート・セレクトショップと多方面に展開。
日本の百貨店やツタヤも視察に来るなど話題になっています。

 

「誠品書店」は店舗ごとに大きく造りが違うそうで、一店舗を見て「誠品書店はこんなもの!」とは言えないそうです。
私がお邪魔したのは信義店。今回はこの店舗についての感想とお考えください。

f:id:roy:20161230105556j:plain

台北市のど真ん中、振り返ると台北一○一の見える好立地です。

f:id:roy:20161230105603j:plain

「誠品書店」という名前ながら、一階で最初に出迎えるのはテナントの服屋。
地下一階から地上五階までのうち、書店は二階~三階だけでした。
書店部分にもボードゲームやCD、オモチャ、時計など「本でないもの」がたくさん。

f:id:roy:20161230110902j:plain

カフェの前にはコーヒーなど飲料の本がまとめられていたり、工夫が随所に見られました。

f:id:roy:20161230111720j:plain

日本で言えば本屋や百貨店と言うより、ロフトや東急ハンズが近い感じ?
元々が書店という意味ではビレッジヴァンガードに近い、というのが妻の意見でした。

本屋が元というだけで、売れるものをどん欲に考えて店舗を拡大するとこうなる実例と感じました。

 

台湾に見る、「再販制度のない社会」

そもそも台湾には再販制度が無いそうで、書籍は普通に値引き販売されていました。
また返本制度もないようで、町の書店では古い本が埃を被って安い価格で売られていました。
日本では書籍の再販制度がしっかりと守られていますが、台湾と比較する事で「再販制度のなかったパラレルワールド」を見ている感じにさせられます。
町の本屋は売れない在庫に苦労しながら細々と営業し、古い、安い雑誌を漁って買う人がいます。
再販制度が崩壊すれば書店はメジャー作品しか置かなくなる」と言われていますが、
特にそんな様子もなく、むしろターゲットを絞って「子供向け」「歴史物」「コミック」と尖る事で結果的に在庫リスクを減らそうとしている書店が見受けられたのは新鮮でした。


書籍とそれ以外の敷居が低いので、子供向けのオモチャを売るお店に本が置かれていたり、逆に本屋の子供向けゾーンでオモチャが売られていたりと自由度はむしろ高い感じでした。

 

誠品書店は台湾で大成功していますが、一つにはこうした「書籍を中心に据えたセレクトショップ」という業態が海外から参入してこないニッチマーケットであった事は大きいのではないでしょうか。
日本では再販制度に守られ、取り次ぎや返本といった独自の流通形態を持ってしまっているため海外進出には苦労があるでしょうし、書籍以外の商品を増やすのも大変です。
(商品数という意味では、ヴィレッジバンガードは凄いと思います)

 

規制緩和って、大事なんだな

規制があると、その内側にいる限りは規制に守られて安全ですが、規制のない外側に出るのはむしろ困難になります。
再販制度の歴史を見ても、CDの再販を撤廃しようとした理由の一つに「諸外国に比べ高額なCDの価格を、再販制度を撤廃する事で競争を促す」というものがありました。

再販売価格維持 - Wikipedia

廉価販売で業界が潰れては元も子もありませんが、誠品書店は日本では生まれなかったのでは、と思います。
規制緩和だけの話ではありませんが、やはり事業を生むには清濁併せて豊かな土壌がなのでしょう。

 

翻って、日本には「同人文化」と言っても良い、個人制作の豊かな土壌があります。

「個人で作っているものだから」と価格やクオリティを市販のものとは別のラインで考えてもらえる。
これに甘えてはいけませんが、この寛容な市場から声援や叱咤を受けることで、私も趣味でボードゲームを作り続ける事ができたのは間違いありません。
逆に台湾ではこうした文化がまだまだ弱く、例えばボードゲームはいきなり一般店舗に並び、海外の市販ゲームと同じラインで比較されるそうです。
これでは新規参入の数が少ないのも仕方ないかと思います。

 

印刷一つとってもそうです。
ボードゲームの市場の小さい日本では、木の駒やチップを手に入れるのは大変です。
このときばかりは市場が大きく、特殊なチップやサイコロも簡単に手に入るドイツ市場が羨ましいですが、オンデマンド・小規模オフセット印刷がこれほど安価に、自由に使えるのは日本の良いところです。
「日本のドージンゲーム」は世界のボードゲーム好きから注目されているそうですが、
彼らからしたら、ドイツの数十分の一の市場規模で、ドイツと同じ数の新作ゲームが作られているこの状況はクレイジーにしか見えないでしょう。

 

こうした個人制作ゲームは、ドイツの市販ゲームと比べれば面白さやイラスト、コンポーネントで劣るものも多いと思います。
しかし個人レベルだからこそ自由な発想で作られるゲームが海外からも注目されているのでしょう。

同人業界には昔から外部からの風当たりが強いのですが、この混沌とした界隈は、それにたいして個々人の好悪はあろうかと思いますが今後も守っていかなければならない文化でしょう。

Japan was No.1

"Japan as Number One: Lessons for America"という本が出たのが1979年。

ジャパン・アズ・ナンバーワン―アメリカへの教訓

私の世代からは信じられませんが、日本の製造業が世界で躍進し、銀行がアメリカの土地を買い漁った時代があったわけです。
これを実現した当時は、今の数々の規制は非常に有効に働いたのだと思います。

 

しかし日本の人口も減って国際競争力も落ちる中、もっと規制は取っ払えばいいと感じます。
それは別に法律の話だけじゃなく、みんなの意識のレベルからの話からです。
例えば副業禁止規定
これは法律上の問題ではなく、各企業の独自ルールです。(公的機関は別)
会社が終身雇用を保障してくれない現在、こんなルールがある意味が分かりません。
厳密に言えばアフィリエイトもフリマ出展も同人活動も副業になり得ます。
しかしそんな事を考えていては面倒なだけです。
こんな規制取っ払ってしまえばいい。

 

河野太郎衆議院議員がブログで発信され続けていますが、無駄の多い大学の研究費用に関してのルールは、その多くが各大学のローカルルールであることがわかってきているそうです。

www.taro.org


正しい事は大事ですが、あまりにガチガチに縛ったところで得をする人はいません。
日本の労働生産性が低いという話も、つまるところこんな話の積み上げかなとも思います。

恥ずかしながら、この年になって趣味でボードゲームを作り始めて、原価計算や在庫管理、販促などなど今までメーカー勤務でやっていた事が初めて実感できていて、それが本職にも役立っています。
失礼を承知で言わせて貰うと、こうした規制や効率化は、言ってみれば個々人に対しての「愚民化政策」なのだと実感しました。


人口が減り国力も弱くなると、国や規制に頼っていたところから崩れていきます。
となれば個々人の技術や能力を上げていかなければいけないし、そのためには規制を無くし、自由に動ける環境作りを早く始めないとまずいよなと思った次第です。

「みんなが副業を持たなきゃいけない!」なんてつもりは毛頭ありませんが、時短勤務も副業もフリーターも、少なくともその選択肢は自由に選べる社会であって欲しいものです。