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ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

ボードゲーム制作を行う「ペンとサイコロ」のブログです。公式サイトはこちら→http://penanddice.webcrow.jp/

レポート:ゲーム製作ワークショップに参加しました(二回目)

ボードゲーム

奈良障害者芸術祭に向けてゲームを作るワークショップが奈良の新大宮で開催されました。

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ワークショップとしては今回で第五回の開催。
平日開催時は参加できないので、私の参加は二回目です。

「色々なゲームで楽しもう」という段階を超えて、今はゲームの提案から仕様の詰めに進んでいます。
ワークショップの主催は奈良県で、障害のある方の自立支援を奈良で行われている「たんぽぽの家」「ぷろぼの」両団体の職員や、自立支援を受けている方、県職員の方も参加されていました。

メンバーから様々なゲームのアイデアが出る中で、「ではどれを展示に向けて準備するか?」
を決める際のキーワードは「ユニバーサルデザイン」でした。
障害のある方でも楽しめるように、がワークショップでのキーワードですが、やはり自立支援をされているだけあって、様々な障害の知識や、実地での理解が非常に参考になります。
そうした視点や知識と、その知見をゲームに落とし込む様子を紹介します。

知的障害発達障害

知的障害発達障害を抱えられている方は、元々ゲームができない、ということはあまりありません。

ただ、ゲームの内容によっては苦手なものがあります。

例えば発達障害の方の中には「勝ちに拘りすぎてイライラしてしまう」
「相手の意図が読めないので交渉や読み合いのバランスを崩す」といった問題の起きやすい方がいらっしゃいます。
こうした問題は、遊ぶゲームの内容によって加減ができます。
例えば勝ち負けに拘りすぎるなら、協力ゲームにするのも良いですし、ガチガチの対戦ゲームは当然OKです。
自分に合わないゲームを「ノットフォーミー」という言い方がありますが、どのゲームも遊べなければいけない、ということは無いんです。
好きなゲームを選ぶように、その方にあったゲームを選ぶ。それだけで良いのだと思います。

 

だから遊ぶ際必要なのはゲームの上手な選定。
今あるゲームでも問題なく楽しむ事ができるので、そうした方向けのゲーム作りは候補から外れました。

身体障害者

体のどの部分が悪いかによるのでこれも一概に言えませんが、障害のために遊べないゲームも存在します。

今回のイベントで完成に向けて進めようと決まったのは
「ユニバーサルめんこ」

なんでメンコ?と思ったら、
「障害によっては腕を振り上げる動作ができないので、メンコができない方がいる」
とのこと。
そうした発信は、実際に身近で触れあっているからこそだと思います。

もちろんゲームとして作るからには「障害のある方専用」としては面白くありません。
障害があってもなくても、みんなで楽しめるからこその「ユニバーサル」です。
私たち親子もパイロット版を遊びましたが、なるほどこれなら老若男女問わず遊べます。
既に写真で90%ネタバレしている感がありますが、ぜひ実際に会場でお楽しみください。

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視覚障害

今までもゲーム作りの上で色盲の方でも遊べる事には気を遣っていましたが、
完全に目が見えない、全盲の方の遊べるゲームは作った事がありませんでした。
全盲では当然カードは読めません。
サイコロを振っても、その目を確認できません。
普通は他の方に読み上げて貰うそうですが、それではその人に情報が漏れてしまうので、純粋な意味でゲームが楽しめなくなってしまいます。

 

全盲用に点字トランプはあるのですが、全盲では「捨て札」が見えません。

点字トランプ 3組セット

点字トランプ 3組セット

 

ババ抜き、7並べぐらいならこうしたカードで問題なく遊べるそうですが、それ以上となると色々と制限が出てしまい、なかなか同じ感覚では遊べないとの事。

それでも楽しめるゲームはないか?


同じ発想で作られたゲームに、ギフトテンインダストリ様の「アラビアの壺」があります。

同じ大きさの壺を振って、その中身でビンゴをする、というもの。
あちらは「聴覚」を使ったゲームですが、今回は「触覚」に拘ってみました。

 

全盲の方は視覚情報が無いため、他の感覚が発達すると言われます。
聴覚が発達して反射音などを敏感に感じ取る話は伺っていましたが、今回お話を伺うと、聴覚だけでなく触覚も非常に発達するとの事でした。
視覚障害者にとって、触る事でものすごくたくさんの情報を手に入れられるんです。」

また、目が見えない人の中にはオセロをできる方もいれば、将棋を楽しむ方もいらっしゃるという話ですが、そうした方は当然頭に盤を丸々イメージできるわけですし、盤をサッとなぞるだけで、盤面を把握することが得意な人もいるそうです。
麻雀放浪記でも盲目の打ち手が牌をサッとなぞって盲牌する描写がありました)

 

この「触って把握できる」という点を生かしたゲームを考えました。
香芝市の「Good Job!センター」という施設には、就労支援に使用されているレーザ加工機や3Dプリンタもあるとのことで、そうした機器を駆使して駒や盤面を作成するそうです。

どんなものになるか、楽しみです。

 

余談にはなりますが、そうした優れた感覚があっても、点字を読むには訓練が必要だそうです。
先天的に視覚障害がある方は子供の頃からそうした訓練を積むわけで、後天的に視覚障害になった方は、いくら訓練しても点字を読むスピードには差が出ると伺った事があります。
ただ、この日に伺ったお話では、最近では点字が読める方自体が減りつつあるということでした。
その理由の一つが、パソコンや携帯電話などのモバイル機器です。
視覚障害者が使うのは「読み上げ機能」。
文字情報なら読み上げ機能が使えるので、点字を読まなくても良くなっているそう。
点字を読めない不便が減る事で、訓練の必要な点字を読める方が減っていると。
「最近は紙幣の区別を触ってできない人も増えつつある」
なるほど。
こうした実感は、実際にお話を伺わないとなかなか分からないところですね。
Siri、OK Googleといった音声入力も発達しているので、今後はより点字を読めない方が増えていくのかもしれません。
点字トランプはカードに盛り上がりがあって重ねにくく、カードを切るのも大変で評判が悪いそうですが、
コストも手間もかかる点字付きカードを作るより、読み上げ用のQRコードを付ければ
視覚障害者対応のカードゲームが安く、簡単にできるかもしれません。
これは私にとっては新しい発見でした。
(「おてつだいクエスト」ではカードにデコシールをぺたぺた貼るのが楽しいのですが、あれもデコレーションのついたカードを重ねるのが大変だったので、苦労はよく分かります)

 

「奈良障害者芸術祭 HAPPY SPOT NARA」は来年2月!

「奈良障害者芸術祭 HAPPY SPOT NARA」の開催は来年2月、
2月4日(土)~2月12日(日)の9日間。

奈良障害者芸術祭 HAPPY SPOT NARA(Facebook)

それに向けてゲームの制作は引き続き進行中です。

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今回考えたゲームは個人的にはなかなか気に入っているので、可能であればゲムマ神戸で少数でも販売できれば面白いな、と思っています。
視覚障害者向けだと、印刷でなく全て立体で作る必要があるので、どうしてもコストと手間が掛かるのが大変ですね。
「障害があってもなくても、同じように楽しめる」
「ていうか下手したら障害者の方が強いんじゃね?」
というバランスのゲームができたら面白いな、と思っています。
今後のワークショップ予定は

  • 1月11日(水)17:00~19:00
  • 1月22日(日)13:00~16:00

奈良障害者芸術祭は奈良駅周辺の各施設で行われます。
鹿や大仏、五重塔を見に来るついでにでも、ぜひお立ち寄りください。
ゲームの展示は奈良県文化会館にて。

近鉄奈良駅から徒歩5分ほどの好立地です。