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ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

ボードゲーム制作を行う「ペンとサイコロ」のブログです。公式サイトはこちら→http://penanddice.webcrow.jp/

クリエイターが多すぎる問題

ビジネス案 思ったこと

アニメの配信が遅れていることが「異常事態」として記事になっていましたが、「来るべき物が来た」というよりは「良くもまぁ、今まで保ったな」という感想です。

hbol.jp

深夜アニメの放送本数は2011年の66本から2012年は106本と急増し、2010年→2015年では3倍に増えているそう。

アニメ好きの人間なんて急に3倍も増えるわけがなく、当然一本当たりの収益も減る上に、制作の人数も急には増やせないので疲弊がより加速しているとのこと。

 

そもそも深夜アニメの収益構造が「作ったら利益」ではなく「放送後のDVDやブルーレイ(いわゆる『円盤』)が売れて利益」という仕組みが実質的に固定化してこの流れが急加速した感があります。

私は業界に詳しくありませんが、この仕組みがここまで拡大したのは、当初はよほど利益が出たのでしょう。

その「作れば売れる」という旨みを知った制作会社(あるいは金主となる会社)がアニメを頑張って作るようになると、一気に本数が増えるわけです。

しかし購買力には限界があるので、参入メーカが増えると収益は一気に低下します。

ではどうするか。

「もっと売れるように、特典をジャンジャン付けて、単価も上げよう」(原価率の低下、制作コストの増大)

「一本当たりの売上が減ったなら、もう一本作ってカバーしよう」

そこまで単純ではなくても、それに近い対策が打たれてきたのではないでしょうか。

 

「アニメーターの給料が低くて、専業では生活できない」

「アニメの制作本数が増えてアニメーターの数が足りない」

この話は矛盾しているように見えて、アニメ業界で同時に起こっています。

その根本の理由は、単純に「供給過剰」。

矛盾しているように見える労使の要求が並立している構造は、介護や福祉、教育など様々な現場で出ていますが、根っこには似たような要因を抱えていることも多くあります。

 

中国でも鉄鋼の生産が明らかな供給過剰で、国が「生産量を減らせ!」と何度指示してもなかなか原産が進みませんでした。

どのメーカーも、供給過剰で価格が下がって利益が出ないと分かっていても、減産すると短期的には自社が損になるからです。

日本のアニメも同じです。

中国の鉄鋼生産は、国が乗り出してメーカー統合の動きを始めました。

日本のアニメ業界では、なぜかそうした供給過剰の最中に新規スタジオが発足しています。これは明らかに供給過剰を促進します。

 

アニメの話で言えば、やるべき事は「生産本数を減らすこと」ですが、メーカーとしては売上を単純に減らすわけにはいきません。

しかし、アニメ会社なら使えるIP(知的財産)も持っているはずです。

(委託が主で独自IPを持っていない会社はここでかなりツラい)

過去の作品を掘り返し、他のルートで販売する、アニメ以外の展開を考えるなど手はあるハズですし、アニメ会社の知り合いはそうした方法を見つけつつあると言っていました。(守秘義務の関係でこれ以上は掘り下げません)

大事なのは、「売上を上げること」と「新作アニメを作ること」はイコールではないのでは?ということです。

 

コミケの隆盛を見ても分かるように、日本にはクリエイター気質の方が多いようです。

しかし今アニメ業界に必要なのは、素晴らしい絵を描く方でも、素晴らしいストーリーを描く方でも無く、「今あるアニメでもう一儲けできる人」「アニメを使って別のジャンルに殴り込みを掛けられる人」じゃないでしょうか。

どうも、日本ではお金の話が敬遠される方向にあるようですが、まずは業界が潤ってナンボですし、売上構造が「お布施」に近いごく少数の円盤購入という仕組みはとても健全だとは思えません。

 「寝てても儲かる」仕組みを考えて、作り上げられるか。ポイントはそこでしょう。そうして利益が出れば、私ならクリエイターの給料を倍にします。アニメーター不足なら、給料を上げればアニメーターが自社に集まってきて、周囲の中小企業を一気に潰せるからです(特に日本のアニメーターはフリーランスが多く、このやり方が効果的)。そうして供給過剰を排除できれば、旧来の円盤事業も利益を確保しやすくなる。「給料を上げないと可哀想」は戦略じゃないです。でも、「給料を上げれば自社に利益を楽に生む構造が作れる」ならこれは戦略です。戦略的な観点から、アニメーターの給料を上げるべき、と個人的には考えます。

ちなみにこれと同じような発送をしているのが「コストコ」。周囲の店舗より高い給料を提示する事で、有能な人材を軒並みかっさらう上、離職率も低いそうです。

 

 ゲームや音楽でも過去に盛り上がりがあり、それが引いていく中で会社の統合が推進されました。アニメもこれからそうした時代に入るのでしょう。

願わくばそれが追い詰められての逃げではなく、戦略を持ったものであってほしいですし、その中から新しいジャンルに飛び出す会社があって欲しいと思います。

例えばスクウェア(当時)とカプコンは映画に進出し、カプコンは大成功しています。

ニトロプラスは・・・これ話すだけで長くなるな。とにかく上手くやってます。

逆にハドソンテクモが無くなるなんて、以前は想像もしていませんでした。

アニメ会社は深夜アニメを作って円盤を売る、という固定観念から抜けて、何ができるか。そうした戦略的な観点をもった人材を、業界が重視してくれたらいいなと思います。大体そういう人は業界から嫌がられるでしょうけど。

 

とはいえ翻って自分の周囲を見れば、ボードゲーム制作の界隈も、個人的には供給過剰では?と感じています。

世界的にもボードゲームデザイナー専業でメシを食えている人はほとんど居ないと聞いていますが、個人で作れるので参入障壁が低いんでしょうね。

制作者がほぼ個人なので、合従連衡はまれです。市場がいまの20倍ぐらいにデカくなりゃいいんですが、(ドイツはそのぐらい)今から制作を始めたい!という方は少しそうした過剰状態についても考えておかれて良いかと思います。 

クラフト的に少数制作されている方は関係ありませんが、量産する場合は販売個数が減ると原価が急増します。供給過剰になると購入側が「多すぎて全部を見られない/遊べない」となる上に、その個々のゲームの単価も上がるわけです。

テレビゲームはプラットフォームの高度化で開発費が急増する事により、強制的にプレイヤーが振り落とされていきましたが、今年のドイツSpielでのトレンドが「デジタル機器を使ったボードゲーム」であったのは、そうした新技術の採用による「高度化によるプレイヤーの振り落とし」を狙っているのかもしれません。

そして日本では「おそ松さん ラブレター」「迷家 ボードゲーム」などアニメとの連携が複数発売されました。これも参入障壁としては非常に有効です。

ボードゲーム制作は個人制作と商業(企業)制作の差が少ないと言われますが、こうした形でその差別化が進んでいくのかもしれませんし、企業ならどこで差別化するかは考えていかなければいけません。「良いゲームだから売れるはず」はマーケティング的には悪手です。

個人で制作していくにしても、そろそろもう少し大局的に考えないといけない時期が近づいているのかな、と感じます。