ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

ボードゲーム・3Dプリント作品・3DCG制作を行う「ペンとサイコロ」のブログです。公式サイトはこちら→http://penanddice.webcrow.jp/

デザインQRを作ってみよう

前回の「QRコードを作ってみよう」に思った以上の反響があり、
予想外だったのは「デザインQRを作ってみたい」という声を複数頂いたことでした。

QRをよく知る人間からすれば「簡単に作れる」と思っていましたが、確かにコードの知識が必要ですね。
ということで今回はQRコードのもう少し難しい部分に踏み込んだ上に、デザインQRを作るときの注意点をまとめてみます。

QRコードを作るときの注意点

まずベースとなるQRコードを作るときの注意点としては「文字数を減らすこと」があります。
QRコードのサイズは「バージョン」と呼ばれますが、データの文字数が多いほど
バージョンが大きく(要はコードのサイズが大きく)なります。

例えばこのアドレスをそのままコードにするとこうなります。
 データ:http://penanddice.webcrow.jp/docs/onmyousai_us.pdf
 バージョン:6 
 誤り訂正レベル:H(デザインQR作成は必ずこれに設定します)

f:id:roy:20161026220235j:plain

QRコード作成ソフト「MiBarcode」なら、誤り訂正設定はここになります。

f:id:roy:20161026222421p:plain

最近の作成ツールならこの設定はほぼ可能かと思います。

これを短縮アドレスにするとこう。
 データ:https://goo.gl/t4Mgy9
 バージョン:3
 誤り訂正レベル:H

f:id:roy:20161026220350j:plain

そしてこれらのコードを同じサイズで印刷するとこうなります。

f:id:roy:20161026220235j:plainf:id:roy:20161026220350j:plain

QRコードの読みにくさの基準は、一つ一つのマス目の大きさです。
(セルサイズ、と言います)
左のコードはコードが大きいので、小さく印刷するとセルサイズがぎゅっと小さく圧縮されます。
これでは読み取りが難しいので、右のように文字数を減らして
セルサイズを大きくする事で、読み取りが簡単になります。

QRコードの潰していいところ、悪いところ

 QRの「目玉」は潰してはダメ、と前回書きましたが、もう少し詳しく言うと

他にも潰さない方が良いところがあります。

目玉(ファインダパターン)

正しくは「ファインダパターン」と呼ばれるこの目玉部分はQRコードの特徴ですが、
正確には黒の周囲の白枠までが検出に必要です。
前回も書いたとおり、この白枠を潰さないように注意してください。

f:id:roy:20161026221247j:plain

点線(タイミングパターン)と小さい目玉(アライメントパターン)

余り知られていませんが、目玉を繋ぐこの部分と、右下の四角も重要です。
この部分はカメラで斜めに写った場合の歪み補正等に使われるため、
ここが潰れると検出能力が下がります。

f:id:roy:20161026221517j:plain

デザインできる領域

結果として、QRコードのデータはこの領域にあることが分かります。
この部分は一部が欠損しても補完できるので、それを利用してデザインを入れられる、というわけです。
つまりはコードからすれば「ワザと汚している」という訳ですね。

f:id:roy:20161026221908j:plain

コードに優しいデザイン

デザインはできるだけ小さく、と言ってもデザイン部分を少しでも大きくしたいでしょうが、お願いしたいのは、「薄い色合いでデザインしたからコードに被ってもOK」ではない、ということ。
コード部分ははっきりした白黒で残し、デザイン部分はデザイン部分ではっきり分けてください。
細かい模様や、どっちつかずの濃さのデータはソフトが混乱し、読み取り能力が激減します。
デザインはできるだけはっきりしたもので、コードと区別するようにしてください。

f:id:roy:20161021214434p:plainf:id:roy:20161021210753p:plainデータとデザイン領域ははっきり分けましょう

「読めるようにデザインする事」と「結果的に読めた」は違う

このように原理を知っていると、世の中のデザインQRがコードの真ん中にちょこっと収まったように
デザインされている理由が分かるかと思います。

 

最近は読み取りソフトの能力も上がっているので、多少の欠損は読み取るでしょうが、
それは「運良く」読み取れただけで、例えばチラシに印刷しても、受け取った人が読み取れないかもしれません。
コードを「作る」側は、「市場にある最も低性能な読み取り装置で読み取れる必要がある」と前職で言われました。
自分で様々な読み取り試験を行うのは難しいので、できるだけ仕様に従って制作される事をお勧めします。

 

そもそもデザインQRは、QRコードの仕組みからは、邪道です。
何せ、「いざというとき、多少コードが読めなくても推測できる」という非常手段のための機能を積極的に使って、
「多少コードが読めなくても、このぐらい読めるだろう」とコードに「汚れ」を入れるわけですから。
そんな仕組みを知った上で、「デザインQRやってみたい」と思った方が作れたら楽しいなと思った次第です。

 

個人でも作れるのがQRの魅力ですが、同人誌界隈やゲームマーケットでデザインQRが百花繚乱ともなれば
それはそれで楽しい未来です。
作ってみたいという方、ぜひ挑戦してみてください。