ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

ボードゲーム・3Dプリント作品・3DCG制作を行う「ペンとサイコロ」のブログです。公式サイトはこちら→http://penanddice.webcrow.jp/

ボードゲーム制作者とプレイスペースの未来

狭いボードゲーム界隈ではいろいろな話が話題に上がります。
先日上がったのはこちら。

要はボードゲームがプレイスペースで遊ばれても、制作者にお金が入らない」という問題提起です。

 

実際「使用料」としてお金を取っていても、制作者にお金が入る物・入らない物は別れます。

制作者にお金が入るもの

  • カラオケ
  • レンタルのCD/DVD

制作者にお金が入らないもの

  • 漫画喫茶
  • 古本/中古ゲーム

並べてみると制作者サイドにお金が入らないものも普通にあります。どこまで創作性を認めるはありますが、それこそバッティングセンターの貸しバットやヘルメットの使用料はデザイナーには入らないわけで。
では、ボードゲームはどうなるか、あるいはどうなるべきか。
いち企画屋として、考えてみました。

※記事にプレイスペースや現状を批判する意図は一切ありません。プレイスペース・ボードゲームバー/レストランの皆様にはいつも感謝しております。ただの企画屋の思考実験です。

現状と前提条件

未来予測には前提条件が必要な場合があります。

今回は日本のボードゲーム産業とプレイ人口が今後順調に拡大すると仮定します。

 

まず現状。
ボードゲームの市場規模を集計している物を寡聞にして存じ上げませんが、市場規模はせいぜい20億弱ではないでしょうか。(今回は根拠の説明は省きます)
ドイツは700億でしたっけ?彼我の差は歴然です。
逆に言えば、日本の人口・市場規模から考えて拡大の余地は十分にあると言えます。
(日本:人口・1.27億人、GDP・4.6兆USD 、ドイツ:人口・8100万人、GPD・3.874兆USD)

 

日本にもボードゲームのプレイスペース(カフェ・バー・レストラン含む)が
増えていますが、チェーン展開しているものはごく少数で、ほとんどが個人経営・単店舗経営です。
企業規模が小さいとシステム構築を行うといった投資は難しく、結果仕組みはシンプルになります。
上の記事では「プレイ料金を制作者にも還元を」という主張でしたが、個人経営で

  • プレイ状況の管理システムの構築
  • 各制作者(あるいは会社)への支払い

を行うことは困難でしょう。

つまり、「現状では今の仕組みしかあり得ない」ということです。
私は別段これが悪いとは思いません。

未来予想1:きちんと支払われる未来

企業規模が大きくなると次第に多店舗化・チェーン化します。

経営効率が上がり、個人経営の店舗を価格や品揃えで凌駕できるからです。
そうして現実的に管理・支払いシステムが導入できるのと並行して、制作者側が「使用料」を求める動きが取れるようになるでしょう。

 

ではどうやって使用料金を求めるのか?
それには最低でも2つのハードルがあると思います。

  • 法的根拠
  • 管理団体

法的根拠

すでに購入済みのゲームを貸し出す仕組みに対して、使用料を請求できるのか?
この法的な根拠をはっきりさせる必要があります。
支払いを求められた会社側は当然反発しますから、この仕組みが浸透するまでには裁判を経る可能性は大です。
(中古販売やマジコン訴訟など、この手の裁判ネタは事欠きません)

管理団体

現実問題として、会社が各メーカや制作者に個別にお金を支払うのは困難です。
プレイ状況の明細を付けて、管理団体に一括して支払うのが現実的でしょう。
となると、プレイ料金の支払いを求める管理団体をボードゲームの販売会社・制作者の間で立ち上げる必要があります。

 

つまり必要なのは、ボードゲームの販売会社・制作者を代弁する団体、ということになります。
カラオケの使用料が今現在請求できているのは、ひとえにJASRACのおかげです。

一般社団法人日本音楽著作権協会 JASRAC

カラオケボックスも当初コンテナを改造した個人経営から始まった物を、JASRACが一軒一軒訪問して著作権使用料の契約を交わしたそうです。
これも、各ボックスが歌手一人一人に著作権料を支払うと考えれば、その非現実さが想像できると思います。

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逆に、その管理団体(あるいは支払いプラットフォーム)を運営することを考えても、現時点の日本のボードゲーム産業の規模ではこの仕組みが成り立たないでしょう。
元々のカセットテープやLP(当時)の収益があってこそのJASRACな訳で、そのバックグラウンドがない日本のボードゲームでは管理団体が運営できません。

 

未来予想2:やっぱり支払われない

デジタルのもので管理が容易ならまだしも、木と紙のゲームは管理するコストも掛かり、使用料を制作者に還元する仕組みの導入は大変です。

 

そこで発想を変えて、プレイスペースがお金を払いやすい仕組みを考えてみます。

上の「使用料」という考え方では、プレイスペースにとってその料金は追加コストでしかありません。
やはり規模が拡大するにつれて仕組みを変えるなら、プレイスペースにもメリットがあるべきです。

 

「買って終わり」にしない方法としては、例えば「リース・レンタル」があります。
例えば街のレストランにある「食品サンプル」。

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購入の物もありますが、多くは「リース」契約だそうです。
リースにすることで店舗は定期的なクリーニング等のメンテナンスを保証できますし、メーカは安定した収益を上げられます。

 

ボードゲームも商品としてはかなり消耗の激しい部類に入りますが、これはリース商材ととらえればむしろ有利です。

f:id:roy:20151114150505j:plain学童保育でボロボロになったゲーム

消耗・紛失した場合の保証をあらかじめ見込んでリース契約すれば、店舗としても管理が楽になりますし、破損した場合のロスコスト・補修コストを見込まなくて済みます。
これは特にチェーンの規模が大きくなり、補修スキルのない店員を雇う可能性を考えた際に有利になります。

 

チェーン化した店舗では低コストで店舗を拡大できますし、品揃えを簡単に充実させることができます。
リース会社は商品の管理と保守に特化できるので、補修や部品の補充を一括することでハイレベルな補修が可能になるでしょう。

この仕組み自体は制作者には還元するものではありませんが、販売会社・制作者が出資してこうしたリース会社を立ち上げれば良いと思います。

 

どっちの未来か、それとも他の未来か

ということで、ボードゲームの未来図としては「プレイ料金を管理団体が徴収」「プレイスペース用貸しボードゲーム業が発達」という二つの未来を提案してみました。

 

私としては無理にプレイ料金を徴収して還元する仕組みを作るより、貸しボードゲーム業が発達して気軽にプレイスペースを開業できる未来の方が好きですが、これを読まれた方はどう感じられるでしょうか。

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以上が私の私見です。
「そんなわけあるか!」「オレはこう考える」どんな意見でも結構ですので、コメントいただければ幸いです。