ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

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一物百価。同じ物を高く売って欲しいという要望

行列に並ぶのはストレスなので、お店は行列ができないようお客様を捌くべき、のはず。

ところが「捌ききれないほどお客様が来る人気店」がニュースになることで、「行列ができることが良い」みたいになっている気がします。

Queueing for iPhone 5s: 11:57 AM / Dick Thomas Johnson

行列ができて売り切れて、買えなくて悲しむ人が出るなら、価格を上げて「それでも買う」という人と、お店で作れる数がイコールとなるよう調整すればいい。それが本来の資本主義の姿ではないでしょうか。

 

「オレはこの安い価格で作って喜んで貰う」という姿勢は素晴らしいと思うし、
「手作りで丁寧に作るから、これ以上の数が作れない」という姿も格好いい。

作り手のそうした想いを否定するつもりはありません。

しかしその結果「欲しければ3時間前から並ばないと買えない」というのはどうでしょうか。
そうしたお店はお店もこぢんまりとして設備も古く、大して儲かっていないように見える場合も多くあります。
「人気店」なのに「儲からない」。
「安価」なのに「数量限定」ということは売上に上限があるということ。
これでは人気でも儲からないのは当たり前です。

こうした悪い循環で「人気があるのに儲かっていない」お店や会社は実際あるんじゃないでしょうか。

人気があるのに安い。

買うためには並ばなければいけないけれど、それも大変。

そうしたときに「転売屋」や「ダフ屋」の出番になります。

チケット、限定商品、人気商品を買い漁って、高値で転売する。

そうした行為が違法であったり禁止されていたり、そうでなくとも嫌われることも多いですが、それが事業として成り立つ意味は考えても良いかと思います。

一物百価の設備産業

顧客数の上限が決まっている事業に「設備産業」があります。
ホテル・飛行機・リゾート施設(遊園地など)・映画館などがその典型ですね。

PhoTones Works #3474 / TAKUMA KIMURA

これらに共通するのは、「同じ商品なのに価格が違う」こと。

ホテルは繁忙期に高くなるのは当たり前ですし、飛行機も正規価格と格安航空券では何倍もの差があります。

どちらも価格が違っても「泊まる」「移動する」という基本機能は同じです。

映画館の場合は正規の料金を基本として、「レディースデイ」など閑散期での割引が主になります。最近は「貸し切りサービス」「ウエディングプラン」など新しいサービスも始まっていますが、今回は割愛。

設備産業では提供できる施設の量が決まっているので、

  • 人気が殺到すると → 処理できなくなる
  • 人気がなくても  → コストは掛かる

というジレンマがあります。
理想としては「常時100%埋まっている」状態にしたいのですが、人気だけでなく、平日や休日、天候や景気といった変動要因があるので完全な平準化はできません。

そこで、

  • 人気があるなら → 値段を上げて客数を減らす
  • 人気がなければ → 値段を下げて客数を増やす

という対応で、できる限り100%に近い稼働率を実現します。
価格を上げれば利益も増えるので、こうした調整で利益も最大化できます。

 

時間をお金で買う仕組み

常に100%を超える稼働率を要求されるのが娯楽施設のアトラクションです。
人気のアトラクションは「何十分待ち」と並ばされるのが常ですが、この時間は顧客だけでなく、施設としてもお金にならない困った状態です。

哈利波特的魔法世界 / Richard, enjoy my life!

最近は「ファストパス」のような「見えない行列」を作る手法もありますが、USJユニバーサルスタジオジャパン)では、「エクスプレス・パス」として人気アトラクションを優先的に乗れるチケットを販売しています。

ファストパスが「見えない行列」である、という事についてはこちらで説明します。

このチケットがあれば待ち時間の短縮が保証されます。

この発想、私は賛成です。

「金があれば優先されるのはずるい」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、私のように妻の体調が悪く並ぶことができない、でも娘にはアトラクションを楽しませてやりたいという時には「金を払ってでも乗せて欲しい」という選択肢が用意されているのは助かります。
(子連れや障害者には各種の優先搭乗も用意されていますが、ここでは置いておきます)

実際には、中国からの観光客で「今日一日しか遊べない」という方には優先搭乗はお金を払う価値が充分にあると思います。

だってもう一日滞在を延ばすには、それ以上のお金が掛かりますから。

逆に大阪在住で年間パスを持っている方は、「今日はこれに乗れれば良いからゆっくり並ぶか」という選択肢があるわけです。

 

「いくらお金を払えるか」「いくら待てるか」の価値基準は人によって違いますから、こうした仕組みはむしろ「顧客視点」だと思います。

また、この「時間をお金で買う」仕組みは「電車における特急料金」と同じですし、スマホゲームにおける「ガチャ」への課金も基本的には同じです。

Gashapon / Dick Thomas Johnson

「時間を買う」感覚はもっと広がっても良いのではないでしょうか。

 

儲かる製造者

そう考えると「いつも行列のできる人気店」では、例えば「通常価格で行列に並ぶ人」と、「優先価格で並ばずに買う(食べる)人」という2方式の提案が考えられます。
もちろん商品単価自体を上げるのもアリだと思います。

日本では顧客志向が強すぎてか、いい物を作っているのに利益を出せていない例を見かけます。
その結果として「行列」という、非効率で誰も得をしないシステムが当たり前になっているのなら、その分価格を上げて客数を減らす選択肢もあると思います。
そうして客単価が上がれば利益も上がるし、顧客の満足度も上がります。

作る人にしっかりと利益の落ちる仕組みになれば、もっと景気も良くなります。
特に人気店が価格を上げて儲かってくれれば、「儲かるからその業界への人気が上がる」「高くて買えないと考えた人が同業他社に流れる」など裾野への波及効果もあるでしょう。
こうした裾野からの景気改善が、広がればいいなと思います。

 

この値段がいくらかという価格設定は難しいところですが、ホテルや飛行機を見るとそうした仕組みはやはり欧米企業が強いようです。

こういう面倒くさいところにいかに手間をかけて利益を出すかが重要、ということですね。

ディズニーランドやUSJならいざ知らず、街の人気店がこうした細かなか価格設定をフレキシブルに行うのは難しいかもしれません。

ならば、「値付けコンサルタント」や「価格決定ソフト/システム」の需要があるかもしれません。

どなたかやってみませんか?