おもちゃ屋さんとボードゲームの相性
何件か子供向けのおもちゃ屋さんにお邪魔して、ボードゲーム(アナログゲーム・ドイツゲーム)のお話を伺いました。
同じボードゲームでも、大人向けとはちょっと環境が違うようです。
まず未就学児を対象にしたゲームは、「家庭」と「施設」が大きなターゲットだそう。
家庭向けはご両親、おじいちゃんおばあちゃんが子供・孫のために買うもの。
施設とは幼稚園・保育園など。
家庭向け
親がボードゲームに詳しい家はレアなので、店頭での説明やテストプレイが重要だそうです。
自分がボードゲーム好きなので気にしていませんでしたが、良く考えりゃそうですね。
私が作っているゲームのうち、対象年齢の高いものは「ゲーム好きの大人」の大人を
対象にしていますし、他の多くの制作者も同じだと思います。
それに対して子供向けのゲームは全ての子供を対象にするので、お金を出す親や祖父母のゲームに対する理解や知識が浅い。ここが一番違うポイントです。
他の子に説明して巻き込んで遊ぶ、うちの娘は例外
施設向け
施設向けは保育士さんなど相手がプロなので、体験会や説明会なども開催されているとのこと。
また保育士さん同士の口コミなども強く、そうして徐々に普及している段階、というお話でした。
娘の通う保育園や学童保育では同じゲームも見かけましたが、口コミで広がるので特定のゲームが広がり、「定番化」するようです。
保育士さんが施設間で転勤されることもあるので、そうして情報が拡散していくのかもしれません。
「仕事に使える道具」としての視点は大人向けのボードゲームとは違いますね。
売り方の違い
ボードゲームの市場はまだまだ小さいので、顧客の中心はいわゆるマニア層で知識の豊富な方が多く、知識豊富な店長によって回っているお店も多いと思います。
しかしこれが「おもちゃ屋」となるとターゲットが子供とその親・祖父母と一気に変わり、接客方法も大きく変わってきます。
当たり前のことに感じますが、ここで言われたのは
「ボードゲームを売ろうと思うと、店員に商品知識を一から付けさせるのが大変」
ということ。
顧客が広がるということは、店長だけでの接客では回らなくなります。
全店員に接客のための製品知識を付けさせる、あるいは説明不要なようポップやサマリーでの紹介が必須となります。
奈良の「よしだ TOY'S」さん店内。POPがたくさん
ちなみにドイツの小売店。説明もへったくれもなし
ここでゲームに求められるのは「わかりやすさ・伝わりやすさ」
(もちろんゲームとして面白いことは必須ですが)
つまりいくら面白いゲームがあっても、説明する人がいなければその面白さが伝えられ ない、という状況に陥ります。
もちろん伝えることが大事なのは大人向けも同じですが、顧客の知識も理解も低いおもちゃでは、その重要度がより高いということです。
個人制作のゲームは、おもちゃ屋で扱えますか?
日本では私含め、数多くの個人制作(同人)のボードゲームが制作されています。
子供向けのお店でもそうしたゲームはご存じでしたが、取り扱いはごく少数でした。
ドイツのゲームの方が受けがいいとかではなく、接点がないそうです。
「そうしたゲームがあることは知っていますが、難しい説明をされても、それを売る力がお店にありません」
というのは正直なご意見だと思います。
口頭だけでなく、その場でゲームに詳しくない方に説明して、プレイして買ってもらう技術。
おもちゃ屋さんでボードゲームを売るにはそうしたスキルが必要ですし、ボードゲーム専門店に比べて扱う商品も多岐にわたります。
そう考えると、ボードゲームを扱われている時点でかなり先進的なんですね。
子供向ゲームを作りませんか?
今回、お伺いしたお店のひとつ、「キッズいわき ぱふ」様で拙作「コロポックル 見~つけた!」を販売いただけることになりました。
お店の方お二人と実際にプレイして紹介をさせて頂き、一つを試遊用として置くことも決定しました。
京都の宇治、平等院から歩いてすぐという好立地ですので、京都に観光に行かれた際はお立ち寄りください。
お店は年齢別に一階と二階に別れていて、三階では毎週イベントを開催されています。
とはいえ子供向けに作った「コロポックル 見~つけた!」も、「ぱふ」様のラインナップからすると難しい部類に入るそうです。
「こうした日本で作られたゲームを紹介頂くのは大歓迎です。ただ、子供向けにはもっと単純なルールでもいいんです」
とも仰っていました。
私も以前、対象年齢について書いたことがありますが、作る側は「なるべく凝った物を」と考えてしまいます。
しかし実際に子供向けで定番の
「(レインボースネーク)」
などはものすごくシンプルで、こうしたゲームは大人には単純すぎて物足りなく感じます。
つまり現状は、「ゲームマーケットに出す、個人制作ゲーム」と「おもちゃ屋さん」は近いようでほぼ断絶している、ということです。
最近はレーザーカッターや3Dプリンタなどを使ってゲームを作る方もいらっしゃいます。
子供向けゲームのばあい、ゲーム性よりテーマの選択やデザイン、感触などが重要となることも多く、「ゲームデザイン」に「クラフト」の要素が加わると言えます。
個人制作で部数が少ないと、こうしたクラフト系の作品は更に難易度が上がるとは思いますが、受け皿となる市場はありますので、挑戦される方がいらっしゃればいいなと思います。
そういえば我が家では「おてつだいクエスト」がまだ稼働中。
「おてつだいクエスト」(少し前の写真です。現在レベル3)
これなんかも「子供向けゲーム」ですが、親にゲームの素養がないと継続して遊ぶのは結構厳しいとは感じます。
「ぱふ」様で子供が気に入って買ったこのゲームも、単純にサイコロを振るだけ。
ゲーム性らしきものは全くありません。
でも、子供はそれでもいいんですよね。
「ダイスを振る」「くじを引く」というのは根源的な「遊び」で、それを繰り返すだけでも楽しいんです。
「すごいゲーム」「豪華なゲーム」「難しいゲーム」以外にも、色々な方向性で作る方が増えて、ボドゲの裾野が更に広がれば面白いなと思います。
とはいえ私はまた小難しいゲームを作ろうとしていますが・・・